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ナガレ
2020-11-21 21:46:08
12245文字
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揺れるゆりかご(ぶぜまつ) ※ソルサクパロ
ソウル・サクリファイスというゲームのストーリーの一つ「魔法使いの試験篇」を下敷きに、捏造や脚色しまくって書きたいところだけ書いたパロディ。わかりにくかったらすみません。話の都合上、殺し合って死に別れます。元ネタのゲームも死に別れてからが本編なので、ご理解ください。
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大聖堂の壁が風で崩れた。壁が崩れてできた穴から、中庭の木々と光る繭が揺れているのが見える。感傷に浸っている時間は終わりだ。ついに別れの時が訪れたのだ。
「
……
せめて苦しまないように、ひと思いに殺してあげるから」
泣き笑いのような表情を浮かべ、ゆらりと松井が立ち上がった。松井が終わらせる事を選択したと悟った豊前も立ち上がり、松井に剣を向けた。敵対しても二人の思いは同じだ。殺さなくていけないのなら、ひと思いにこの手で。
突風が中庭の木々を揺らす音、それが合図だった。
「っ!」
豊前の剣が飛んできた投擲を弾き飛ばした。選択した松井に躊躇の色は見えない。今までずっと魔物に向けていた彼の殺意が、今は豊前に向けられている。もし自分が松井ならどうする?考えろ。
――
まずは動きを封じるために脚を狙うだろう。豊前の読みは当たっていた。
「避けないで。君を苦しませたくないんだ」
苦しませたくないと言う松井の顔は、殺意と悲痛に彩られていた。松井に切っ先を向けねばならないと分かっていたのに、いざとなるとこんなにも苦しいものだとは思わなかった。きっと松井もそうなのだろう。踏み込んだ先には後悔しか待っていない。それも最初から分かっていた。
「君と出会わなければよかった!他人のままでいたかった
……
!」
投擲の合間に松井が叫ぶ。それはまるで咆吼魔法のようだった。応戦しながら、豊前は自分もだと言いたかった。松井にこの試験の相棒として出会いたくなかった。これが別の人間なら、こんなにも苦しいと思う事もなかっただろう。戻れるものなら出会う前に戻りたい。だが、そんな事は不可能だ。
そんなやり場のない思いを断ち切るかのように、豊前の太刀筋が松井を刎ねた。仰け反りながら、どさりと地面に落ちる松井の体。とどめを刺すなら今だ。松井も死を受け入れている。
「松井
……
」
左手を出したのは完全に無意識だった。出してから豊前は自分の行動に気がついた。左手は救済の手。松井の体が青く白い光に包まれ、血の気を失っていた顔に赤みが差す。ゆっくりと目を開けた松井と目が合い、ほんの数秒だけ、視線が交わった。
「どうして助けた!辛くなるだけじゃないか
……
」
松井から発せられる悲しみ。どちらかが死ぬまで終わらないのに、助けられては辛くなるだけだ。瞬時に距離を取った松井の魔法が再び豊前に襲いかかる。投擲魔法の供物は壊れてしまったのか、松井から放たれたのは血魔法だった。
どうして助けたのと問われても、そんなの豊前の方こそ聞きたかった。豊前も頭では分かっているのだ。生き残るのはどちらか片方だと。しかし体が先に動いていた。松井を喪いたくないという深層心理が働いたのだろうか。
「だって僕は君を殺せない」
そう言う松井は泣いていた。松井は豊前が生き残ることで背負ってしまう物の重さを知っている。生きてほしい、でも背負わせたくない。相反する感情が交錯し、松井には選べなかった。それでも選ばなくてはいけないという不条理に苦しんで泣いていた。
豊前はやっと気づいた。この試験は予行演習なのだと。かつて人であった魔物を殺し、時には仲間も手に掛ける。それでも魔法使いを目指すのか、不条理を背負っていけるのか。今、その覚悟を問われている。
「
……
豊前、もう終わりにしよう」
もうこれ以上苦しみたくないと、松井の最大出力の呪血が豊前に向かって放たれる。だが、その斬撃が届くよりも早く、豊前の刃が真っ直ぐに松井の胸を貫いた。
――
後悔も苦しみも、すべて自分が持っていく。これが豊前の選択であり、覚悟だった
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