望月 鏡翠
2023-07-02 11:31:41
17630文字
Public リアタイ
 

灰は灰に

ウルフレグニ/グレイハウンドの過去 1/#DRE_C_享楽主義



●葬儀風景
 この国の人間にしては珍しく、モリアーティ氏は火葬で葬られた。合理的で効率的な彼らしい選択である。公衆衛生上遺体は燃やした方がいい。そして死人に金を掛けても意味がない。葬式すらも不要であるという態度だったが、死んだあとのことを取り仕切るのは家族である。
 火葬にという希望は聞けても、あとは捨ておけという部分に関しては、聞き入れられなかった。
 家族には親戚や世間からの目がある。
 閑静な住宅街で、モリアーティの死はそれなりに目を引くニュースで、犯人は顔見知りらしいというタブロイドの記事も相まって、妻や子には形だけでも彼の死を悼んでいるというセレモニーが必要だった。
 遺産のほとんどは強盗に持ち去られ、ろくなものは何も残っていない。
 生前の稼ぎや交友関係に見合うだけの葬式は、金が掛かった。だから家族の恨みが犯人と思しき、グレイ・ファルビィに向くのは当然のことだった。
 一刻も早く捕まって断罪されてくれと言う願いも虚しく、犯人はまだ捕まっていない。