しゅう as 猫田しゅうぞう
2022-05-29 22:53:51
5230文字
Public アナオビ
 

降伏/ジェダイ/恨み言/皮膚の内側/期待

オビドラマの次の話を見る前にいきおいのまま出力しておく幻覚置き場 6/20更新


夢に観ていた男がそこにいた。
口先ばかりは憎たらしく、しかし狼狽え、傷ついたその顔ときたら!
いつかよりは短い、けれど整えられないまま伸びたぱさぱさの髪には苦労が滲んで感じられた。それにくたびれた雰囲気の彼が身につけている粗末な服装はジェダイ装束ではなかったが、それでも彼は、オビ=ワンは、かつての面影をありありと残していた。十年前の手配写真ですぐにそれとわかるだろう。歳月は感じられたが、それでも想像より年老いてはいなかった。目の前に星すら散ったと錯覚するほどそのことに驚いた。変わっていない!直感的にもそう感じる。それはフォースの囁きというにはあまりにも鮮烈な瞬間だった。そうして身体の芯が熱くなるような感覚はずいぶんと味わっていなかった。装甲服と神経の接続をショートさせるのではないかと頭をよぎるほどの昂り。興奮。
屈辱とも怒りとも違う。怒りなら、馴染みのあるものだ。ダース・ベイダーを動かす原動力といっていい。フォースへの感覚を研ぎ澄ませる砥石のように、あるいは炉を燃やす薪のように無くてはならないもの。
「オビ=ワン」
本人を目の前に「ケノービ」などと呼ぶ気にはなれなかった。ずっと呼びたかった名前だ。だが呼吸器ごしの歪な呼吸音の間にこぼれたその声は自分にしたって耳馴染みのないものだった。
姿にも、声にも、それこそ我が身の存在すべてに目の前の男が傷ついているのがわかる。伝わってくる。それで心臓が弾む。それはもはやいつぶりだかわからないことだった。
痛みを与えたかった。苦しめてやりたい。それはまぎれもない願いだった。
それなのにセーバーの触れ合いに、返される鈍い太刀筋に、彼がフォースとの繋がりを断ってきたことがわかる。ジェダイのくせに。四肢を切り落としたかつての弟子を殺さず、ジェダイであることを選んだくせに、それを捨てたのか。あんたは。
斬り合うごとに、対峙してこみ上げた喜びが冷えていく。
いまや火に包まれるオビ=ワンはまるで無力だ。このままひと思いに殺すことだってできるだろう。無力なただの老人のように。
フォースを支配する指先を、その意識を緩める。ベイダーは手を下げる。燃える炎を眺める。
すぐにでも消えてしまいそうな火だ。ムスタファーの土手で互いに感じたほどの熱さはきっとないだろう。それこそベイダーの皮膚を、髪を、すべてを焼いたほどの高温にはなりえない。きっとオビ=ワンもわかっているだろう。
しかし幸いなことに、オビ=ワンには仲間がいる。きっと誰かがくる。助けに来る。
追いついてきた部下が炎に右往左往するのを尻目に、ベイダーは終わるなと願う。早く助けが来るようにとけっして口には出せない願いが叶うことを今か今かと期待する。彼の苦しみを長引かせてくれるだろうその誰かの到着を。