しゅう as 猫田しゅうぞう
2022-05-29 22:53:51
5230文字
Public アナオビ
 

降伏/ジェダイ/恨み言/皮膚の内側/期待

オビドラマの次の話を見る前にいきおいのまま出力しておく幻覚置き場 6/20更新


火に炙られる肉体の痛みより、向けられた言葉のほうがよほど堪えた。
炎の向こうにいるはずのベイダーはもうオビ=ワンには見えない。見えるのは燃える地面と炎だけだ。
今度はお前が苦しむ番だと呪ったベイダーにはもう、先ほど罪もない市民を殺し、聖堂で子供達を殺したほどの残酷さは感じられなかった。ただ、ムスタファで憎いと吐き捨てた瞬間と地続きの幼さがあった。まるで聞き分けのない子どもの頃のような。母を喪ってからは緩やかに鳴りを潜めていった彼の幼さが今更感じられて、オビ=ワンから抵抗の意志を奪う。だが痛みに身体がもがき、喉が呻く。
自分の喉が焼けていない事が自覚できると、まるで足りないとわかってしまった。こんな火はあの溶岩の惑星とはまるで違う。土手に落ちたお前が味わった痛みなどまるで遠いものだろう。
オビ=ワンはそう思うのに、フォースの見えざる手はもう感じられない。だが、満足して立ち去ったのではないこともわかった。今では目に見えずともわかる。炎の向こうで動かずにこちらを見ているベイダーがもう手を緩めていることが。
それこそ、覚悟がないのはお互い様ではないか。
それにあの時、助けてとお前が言ったなら、見捨てたりしなかった。できるわけなかった。だがそうしなかったのはお前じゃないか。私を選ばなかったのはお前じゃないか。
今更な恨み言が思考を占めていくのに、オビ=ワンは勝手に呻く唇の端で微かに笑みを浮かべた。アナキン、と口に出せたならきっと今は柔らかな音になるだろう。
だが口に出せたところで届くとはとても思えない。燃え盛る火の向こうに聞こえるだろう苦悶の声ばかりが喉からは溢れている。お前のようには叫べもしない。