しゅう as 猫田しゅうぞう
2022-05-29 22:53:51
5230文字
Public アナオビ
 

降伏/ジェダイ/恨み言/皮膚の内側/期待

オビドラマの次の話を見る前にいきおいのまま出力しておく幻覚置き場 6/20更新


「だって彼、あんなにくたびれたおじいさんなんですもの!」
自室に戻るなり言い切った娘の言葉に妻ブレアの顔が引きつり、ベイルはとうとう堪えきれずにむせた。
本人に自覚はないことだろうが、この十年の間で彼女が身につけたことのあるどの肌着の一枚より安いに違いないレイアは、たしかに今なら農家の娘と言って通らなくもないかもしれない。なにしろ上質な服を覆い隠す緑のケープは見るからに安物であるうえに、オルデラン風に編み込んでいる髪の毛はいくらかほつれて乱れている。それに常日頃の聡明さを欠いて、いまや熱を帯びた頬は赤く膨れてさえ見えた。だが何よりも、座っていられないとばかりに立ち上がってぐるぐると同じ場所を歩き回りながら、身振り手振りを交えながら初めて出会った本物のジェダイについて両親に語る姿ときたら、年相応の幼さを彼女に与えていた。次期女王とは思えない落ち着きのなさはいつものお転婆ともまた少し違っており、ベイルの胸の内には“いつもより手が付けられない”という感想さえ浮かぶほどだ。
羽織っているフードつきの緑のケープも、フィンガーレスの皮手袋もオビ=ワンが買い与えたのだという。きっと普段着とはいえ上質な布地の服を着た子供は目立つからだろうが、オビ=ワンがうんざりした顔でこれを羽織らせたのがベイルには目に浮かぶようだった。ケープは明らかに娘の趣味ではないし、わざわざ革手袋なんて自主的には買い与えないだろうことも想像がついたからだ。そういう無駄に気を配れる男ではない。勝手に手に取り身につけるレイアにため息でもつきながら「あれも頼む」とクレジットを支払っただろう姿が想像さえできる。
そもそもレイアは十歳とは信じがたいほど弁が立つ子供だ。さぞオビ=ワンも手を焼いたことだろう。彼女は今、それこそ自分の無知の責を問うべく両親を責めているので、その気まずさもよくわかる。オビ=ワンに何歳か聞かれたとも言うのだから、十中八九この調子で彼をやりこめさえしたに違いない。彼女の未来を思えば安心だが、痛いところをつくのに長けた娘はまだ政治的手腕を知らず、ただ無遠慮なところがある。
だが、だからこそよく胸に響きもする。
たしかに、レイアにはジェダイのことは多くは語らずに済ませてきた。古い友であるどころか、知り合いだったとさえ彼女には知らせていなかった。
そのような状況でオビ=ワンが娘の信用を勝ち取るのに苦労したことはタトゥイーンに戻っていった本人の背中からも薄々想像できていたが、いまやレイア本人の説明でより明確に理解できた。
たしかに、ジェダイの騎士のことは教えた。それこそ一般的に知られる姿――それ以上は隠してさえきた。滅んだのだと皆が信じるように彼女も信じればいいと思っていたぐらいだ。
それは彼女のためでもあったが、オビ=ワンが名を捨てながらもルークを側で見守る一方で、託してそれきりのレイアを忘れているのではないかと疑っていた影響がないとも言いきれなかった。
もちろん、彼女の出自はあまりにも大きな秘密だ。繋がりは薄ければ薄い方がいい。救出の依頼をしようと夫婦で話し合い、通信回線をつなげる時には無事に繋がるのかさえ不安があったぐらいだった。繋がりが薄いままであるように気を配ってきた。
だが今回の誘拐事件でその疑念ははっきりと不満として現れた。胸のうちにわだかまっていた疑念は十年ぶりに顔を合わせた友の胸を切り裂く言葉になってしまったし、こうしてレイアがいかにオビ=ワンを不審に思ったかの話を聞くと胸がすくようだとも自覚できてしまったほどだ。
だが笑っている間に娘がオビ=ワンを信用できなかった理由を十個は並べそうなので、ベイルは額を抱えるようにしてどうにか手のひらのなかに忍び笑いを飲み込み、ヒートアップしていく娘をなんとか宥めた。
それからジェダイ・キラーに狙われたからには自分にも知る権利があるはずだという彼女の主張を受け入れて、オビ=ワンという古い友人について語って聞かせる約束をした。