錘(つむ)
2026-06-22 22:54:03
9241文字
Public
 

Riddle me ree. -on the wall-

先天的女体化、暴力表現、死にネタ、産卵、近親あるのでGつけていますが描写自体はぬるいと思います
大丈夫そうでしたらよろしくお願いします

男として育てられたジョン♀とその理由を知るリチャード 前編 後編はジョン♀視点



 出迎えからして奇妙だった。
 誰も彼もが気まずそうに、目をそらしたり他の者を前に立たせたり。かと思えば、ならば勝手に進もうとすると足止めに塞がって、まずは疲れを癒やせだの、食事をだの、湯浴みをだの。不要なことばかり勧めてくる。
 こちらの望みは何度繰り返して要求しても、是非すら答えない。
 馬を飛ばして来たのは、ジョンに会いたいからだ。
 ジョンの都合が悪いなら理由を言えばいい。まずは顔を見るだけでいい。ただ伝えたいだけだ、おまえは何も悪くないのだと。
 苛立ちはするが、自分もややいつも通りではない。なんだか耳が少しぼわぼわと遠い。だがこの程度は、疲労でどこか不調になるなどよくあることだ。
 聞き取りにくい声がなにか言っている。
 魔女がどうだと。
 邪悪なちからを使おうとしたから、いや使った、だから仕方がなかった、下半身が蛇だ、そう蛇女エキドナだった、見たものがいる、食い殺された、
 らちがあかない。
「それで。ジョンにどこにいるんだ?」
 答えないので肩をすくめ、城内のそれらしい場所に踏み込んでいく。ぞろぞろとついてきて邪魔だ。部屋にも、客間にも、牢にもいない。首をかしげていると、一人が観念したかのように袖を引いた。
 城の外、城門のうちの広場に導かれた。火事でも起きたのか、すべてが焼け焦げている。
 ジョンがこんな場所にいるはずがないし、やはり居ない。
 先ほどの男は這いつくばって何かを訴えていて、一緒になって這いつくばる者、それをやめさせようとする者、かき消そうと大声を出す者、泣き出す者神に祈る者、ああ、もう、邪魔だな。
 頬の痒みのような不快を感じたときには身体が動いていて、首がいくつか跳ね飛んだ。状況を把握して動き出す前に、もう一度剣を翻す。
 その場の全員が、死への恐怖でそれぞれ動き出した。悲鳴や罵声や命乞い、先ほどの訳のわからなさよりはこちらの方が明快だ。戦場と違って、だいたいは鎧を着ていないのでどこを狙ってもよく切りやすい。衛兵などは鎧を着ていて面倒だが、武器がついているので新しい武器の仕入れ先としての利点が大きい。
 馬は限られているから、厩舎で張っていれば駆け込んでくるから追い回さないで済んで楽だ。それでも他を見捨てて馬に乗れた幸運な数人は褒美に背中を弓の的にしてやった。
 城内も隠れられる場所はそう多くない上に、そこに詰まっているのだから手間が省ける。
 城門から逃げた中には、俺よりも脚が速い人間はいなかった。
 日は中天より傾いて、午後の日差しに変わってる。
 なんだかいっぱい殺してしまった。返り血で、髪が重い。城門を潜って引き返し、広間へ歩く。青空の下で、みんな死んでいるか死につつあり、とても静かだ。戦場だってもう少し生きている。そうだな、戦場の方が命が生きていて楽しかった。今日のは楽だがたのしくはない。
 良心を失うというのはなるほどこんな感じか。
 自分の内なる独白に、心が冷えた。ひゅっと喉が細くなる。聞こえなかったはずの、誤魔化しや言い訳が蘇って最悪の形を結ぶ。
 どうして、
 煤けて真っ黒な広場に膝をつき、もう祈りにもならず、ただ項垂れ、嘆きが溢れるに任せる。地を殴打しても痛みが鈍い。
 どれほどそうしていたかはわからない。
 呼ばれた気がして、顔を上げる。真っ黒の視界の中で、何か眩しい、光の塊を見た。