錘(つむ)
2026-06-13 22:14:00
11117文字
Public
 

STRENGTH

人外✕転生 パロだよ ぬるいですが性描写があります



 暗闇の中で、リチャードは半身を起こして傍らに眠るジョンを見下ろした。疲れ果てているのだろう、起きる気配はない。また、しばらく目覚めないかもしれない。眉間の刻まれた皺に触れ、本人がそこにいるのに憧憬に満ちた眼差しを向けた。

「ああ、ほんとうに。かなわないな……

 兄上、か。

 そう呼ばれた時に、本当に驚いた。子供の頃のことは思い出しても、流石にその前の生は覚えていないようだったが、それでも同じ魂なのだと深く実感した。けして離したくないと強く思った。

 己は確かに戦場の傷が元で死んだはずだが、それからだいぶたった世で人ならざるものとして舞い戻った経緯は正直よく覚えていない。それでも、もう一度、弟に会いたかった。だから、長く待った。家族の数、関係性、年齢、条件が重なった場所には同じ霊が宿りやすいと、そんな頼りない与太話にも縋って。結果、少しだけ干渉したが、それが影響したかどうかはわからない。ジョンと再び出会うことが出来た。干渉自体に少々力を使いすぎたため、共に居続けることは難しく、幼い頃のジョンに約束の形で紐づけをした。

『困った時に、ジョンが俺を呼んでくれたら、いつでも駆けつけるからな。頼ってくれよ』

 ジョンが頷いたので、リチャードは安心してしばしの眠りについた。そして、結局死の淵に至るまで助けを求めてくれなかったことに、リチャードは想定以上に傷ついていた。抱え込んだ仕事と荒れた生活、なにより確実に蝕み続ける毒で衰弱しきったジョンの身体は、回復し目覚めるのに半年も掛かった。ジョンに向けたくない感情が、なによりも怒りだった。自分の怒りは壊すばかりだから。

 だが、そんなものは、ジョンには見抜かれていた。撥ねつけるでも屈するでもなく。

 感謝を込めて、その額に口付けを落とす。目覚める気配はなく、静かな呼吸音が繰り返される。

 リチャードは再び傍らに滑り込むと、腕を回して、この世で最も得難いものをその胸に納めた。

 これからは、ずっと一緒だ。