錘(つむ)
2026-06-13 22:14:00
11117文字
Public
 

STRENGTH

人外✕転生 パロだよ ぬるいですが性描写があります



 宿に戻り、双方のベッドを椅子代わりに向かい合う。人ならざるものは、あっさりと白状した。

「吸血鬼。だったと」

「まあ、そんなようなものだ。やっぱりわかってしまったかー。早かったな!」

 だから恥ずかしそうにするなと。ジョンは咳払いをした。

「二回も噛まれたので」

「もっと噛んでるぞ」

 知らない情報に目を剥くと、リチャードは目をそらして首をすくめた。釈明はしないらしい。

 陽の光なども特に苦手ではないようだし、どのようなモノか説明を求めると、渋ることなく話し始めた。

「血から直接栄養を取ってるわけじゃないんだ。噛むと、まあなんかこう、生きてる力みたいなのが噴出すると思ってくれ。それを摂ってる。噛むのが必須というわけでもなくて、刃物で刺してもいい。流血が必須というわけじゃない。素手の殴る蹴るでは難しいだろうが、鈍器くらい打撃を与えられるなら外に血が流れなくてもいいんだけどな。噛むのが一番楽なんだ。吸収するのに無駄がない。叫ばれたり、暴れられたりするのが困るだろ? そういうのが抑えられる。傷口も治せるし。やろうと思えば記憶も紛れさせられる、軽くだけどな」

 人間にしか見えない外見で、人ではないものの倫理観を見せる。

「それで。私に食事の価値があるとは思えないのだが」

「俺ができることは、同族を増やす以外に、もう一つあるんだ。特定の人間に、ずっと噛ませてもらうためにだな、力を分け与えて生きていてもらう」

……それに、私を?」

「お前は死に瀕していた。そうでなかったとしても、長年の毒に蝕まれていた。他に方法はなかった」

 本末転倒な使い方だ。

「さきほどは。私で補給できないから、わざと絡まれて血をすすってきたと?」

「それは。うーん。そうなるか」

 あっさりと肯定されて、それが何よりも、心を抉った。まだこんな感情が波打つ事があるのかと自分でも驚いた。

「今すぐそれを解除してくれ。私は同意していない、それこそ餌だ。御免被る」

「断る。それだけは、できない」

 真っ直ぐな、射抜くような、不条理も辞さない、威迫の目だ。だからこそ膝を折るわけにいかなかった。

……ならば私は帰る。世話になりました」

「どこへ?」

「家へ戻る」

 ジョンが立ち上がると、リチャードは表情を変えず身構えるように腰を浮かした。

「あの家にか? あの、お前に毒を盛り続けていた連中がはびこっていた場所に?」

「他にどこが?」

 もう、前当主は死んだものとしてうまく回り始めているはずだ。本当は、戻れるはずもなかった。虚勢だった。それでも、この場にいたくない一心で、リチャードに背を向ける。

「駄目だ。お前はここにいるんだ」

……!」

 扉を目指していた足がもつれ、無様に床に崩れた。両足は石と化したかのように重く、早くここから出たいという意志に反して、動こうとしなかった。リチャードはジョンを見据えたまま、ゆっくりと近づいてきた。

 見上げる視線と、見下ろす視線がぶつかる。リチャードは身をかがめて膝を折り、同じ高さまで顔を下ろし、声も出ないジョンの乱れた髪を耳にかけながら言い聞かせるように口を開いた。

「傷を癒すために、病んだ部分を治すために、力を使ったと言っただろう? その部分が多ければ多いほど、お前の身体は俺の征服を受ける」

 首筋の血管を指の腹で軽く叩かれた後、夜着の前を解かれていく。かなりの狼藉であるが、ジョンは声どころか指先も凍りついたように動かず、成すがままにされていた。服は無情に剥ぎ取られ、痩せ衰えた身体を晒される屈辱と、認めたくない感覚に巡る血の温度が上がった。

「お前は全身ボロボロだったんだぞ、ジョン? 勝手は謝る。だけどな、お前がこんなにも自分を顧みなかったから、こんな俺の手に落ちてしまったんだぞ。もっと早く呼んでくれたら。でも、それも、お前の選択だもんな」

 優雅なほどしなやかにのしかかられながら、喉笛を噛み切って終わらせてくれたほうがマシだと思った。それでも無防備な背が床にあたった程度の痛みで、情けなくも声を上げてしまう。

「痛ッ」

「痛いよな、背骨。こんなに痩せていたら、痛いはずだ」

 馬鹿にするでもなく、楽器でも奏でるような手つきで背骨を撫でられる。肋の浮き出た部分を吸われ、軽く歯を立てられて、ジョンは呻いた。唇が離れ、片手を膝の裏に回された。床から軽々と持ち上げられて、ベッドに投げ上げられる。次いで、乗り上げたリチャードの重みでベッドが大きく軋んだ。

「どういう状況かよく思い知ってくれ」