いを
2026-05-30 17:33:45
1780文字
Public 刀神
 

潮月抄・第二幕

「海月譚」
青嵐


三、海月の夢

 私の時間はほかの人間とおなじように、またはこの潮の流れとおなじように流れている。時を早めることも、遅くすることもできない。私が人間だからだ。私以外の人間も、人間だ。そして、刀神も刀神にしかなれない。けれども元は人間であった刀神もいる。ひとの心とカミの心は同時に保てるものなのだろうか。
 海月から、ようやく視線を外す。この巨大な装置と、巨大な鉄筋コンクリートの匚。その中に無数の命がある。どの命も時間の流れとともに生きている。
 留まっているものはいない。刀神も、永遠ではないから。擦り切れるまで使われ続ければ、いずれ折れる。彼らの命は私たちのようにやわらかい臓器がすべてではなく、鋼そのものだ。それでもきっと、その中にやわらかなこころがあるものもいるのだろう。
 おなじものがあるとしても、私たちは彼らのようには留まれない。同じ場所へは行けない。