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保科
2026-05-21 18:58:45
13650文字
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超かぐや姫!
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ふぁにーゔぁんぷ!
かぐいろ Twitterに投げてた『月の姫は真祖では?』という連想ゲームの吸血鬼かぐやと彩葉の本編IFです 出会い〜ヤチヨカップ中位までの散文のまとめになります
表題は借りましたが特に型月要素なし、DECO*27のヴァンパイアがイメソンです
6/5とか 6/9とか なんか追記してる
ーーーーーー
かぐやのクラスはバーサーカー!……え?ムーンキャンサー?
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あふたーあふたー
「月人には本来、エネルギーに類するものは殆ど不要なんだ。そうだねぇ、植物の光合成に近いかも」
正面のヤチヨは、リラックスした様子で、コップの縁を撫でながら呟く。髪を下ろして、黒Tシャツを纏った彼女は知る限り最もラフな姿で、けれど、紡がれる言葉は雑談とするには少々重い。
「でも、特殊な状況
――
環境に最適化した肉体が付与された際は、その環境下の食料が必要になるの。『もと光る竹』が自家発電するエネルギーだけだと賄えないから。おおむね、肉体の食性に沿ったものがエネルギー源になるんだけど。それで
――
」
「『かぐや』は、雑食で。ウミウシだった過去や、今のヤチヨは、同様のエネルギーはいらなかった、と」
「そう!そーゆーことなのです。ウミウシ程度のサイズなら、『もと光る竹』から遠隔共有されるエネルギーで事足りるので
……
って、彩葉にはもう、分かってたかな?」
「
……
まあね。なんとなくは」
彼女と対になるようなパジャマの裾を払いながら、ツクヨミにも関わらず現実と変わらないアバターの私は、曖昧に頷く。
あの日拾ったかぐや姫。彼女が有していた吸血衝動と、それに伴う吸血行為が、彼女の過去の言動から、食事の代用としてあるものだとは知っていた。
けれど先日垣間見た8000年には、私が散々出くわした情景は存在しなかった。AIライバー『月見ヤチヨ』にも、そんなおかしな設定はない
――
なら、言葉通り。ヤチヨは8000年以上、吸血とは無縁なのだろう。
あれは、月人が肉体を得たときだけ、エネルギーを補うために発生する生理現象、ということだ。
「そうなのです。
――
つまりかぐや姫は、御伽噺にないアイデンティティを、とうの昔に失っているのでした
――
めでたし!」
最後、ヤチヨはそう明るく締めくくった。私はふうん、と、どこか気のない相槌を返す。
なんてことない、答え合わせの雑談だった。
昔を模したボロアパート。手元のコップに注がれたコーラが、蛍光灯の明かりで鈍く照らされる。
それを一息で煽る
――
味がしない。炭酸の刺激もない。そりゃそうだ。五感のうち、その多くが未実装のツクヨミに感覚を創ることは私の掲げる目標の一片であり、驚きはない。ないから。
「
――
ないから。やっぱり、不思議なんだよ」
「
……
?」
私の呟きに、ヤチヨは首を傾げる。とんとん、と、応えるように私は己の首元を叩いた。ぱちぱち、と、ヤチヨは瞬く。
――
本当に、気づいてないのかな。苦笑しつつ、立ち上がる。
手元から上げられた視線が、彼女の隣へと向かう私を追う
――
私の顔ではない所を、見たまま。
「ね、ヤチヨ」
「うん
……
?」
「目、合わないね。なんで?」
「え?
―――
っ」
それは、今日、この部屋を訪ねてからずっと。
――
さらに言えば、この前も、その前も。度々、そんな瞬間があることを知っていた。
照れくさいとか、恥ずかしいとか、青臭い理由じゃないのは、今。口にした瞬間の彼女の反応で明らかだった。青ざめた顔で、ヤチヨは口元を覆う。
ずり、と、遠ざかるためか床を後ずさる彼女に、私は覆いかぶさるように体を乗せて、問いかける。
「
……
ねえ。
おなかすいた
?」
エネルギーが要らない。食事は不要。そう嘯く口で、でも、その物欲しそうな瞳がずっと私を
――
いや、私の頸動脈を見ていることに、気づいていた。
ここが味覚も触覚もない空間だなんて、互いに分かりきっている筈だ。だから、ヤチヨは泣きそうな声で頭を振っている。
「
――
ちが、ちがうの、だから、だって、
……
そんなわけ」
「そう。そうだね。この『体』はコーラと同じ、貴女が創造した世界のまやかしだよ。もし、ヤチヨが私の血を吸ったって、それは、貴女を生かすことには繋がらない。
――
うん、ナンセンスだよね」
「
……
彩葉、意地悪な時の、声
……
」
視線を落とした呟きは、スルーする
――
正直自覚はあるので、気にせず彼女を呼ぶ。
「かぐや」
「
―――
」
生かすことにはならずとも。でも、真似事だとしても、『活かす』ことには、繋がるかもしれない。その八千年を癒すことに。下がりきったヤチヨの背中が、襖について行場を失う。
ねえ、気付いているのかな。覗き込んで合わさった目が爛々と紅く光っていること。地球に再び辿り着いた貴女の内側の衝動は、けして、薄まっただけで
――
消えたわけじゃないこと。
あんたが言ったんだ、私だけがいいんだと。なら、そうもなるだろう
――
酒寄彩葉が居ない世界なら、そんな衝動は生まれ得ない。
だから、いつも通りに。『許可を持つ彼女に告げる言葉』を、私は一つしか持たないから。
身動き一つ取らない彼女の肩を、抱き寄せる。貴女が、逃れないように
――
私が、逃れられないように。
「
いいよ
」
「ぁ
―――
」
瞬間。行き場のない手が動いたと気づく頃には、私は天井を見上げていた。のしかかるヤチヨの口が、首元に当たっているのは気配で分かるけれど、それ以上は分からない
――
ああ、物足りない。痛みも、それ故の倒錯した快感も、この場所には何もない。きっとそれは互いにそうで、でも、ぼんやりと何かが抜かれるような、そんな緩やかな虚脱感は、
……
気のせいじゃない?
「
……
、っ、ぁ、いろはのあじ、しない
……
っ」
無意識だろう、ヤチヨが心底悔しそうに呟く声に、その声の艶めかしさに悲鳴が出そうだった。動きからして何度も噛みついているらしいけれど、これ現実でやられてたら酷いことになってたかも。熱もない、感触もない、それでも、彼女に求められている事実に無駄にうるさい心臓がどうかばれないようにと祈りながら、しばしされるがままになる。うぅ、と唸りながら一心不乱に私の首筋に噛み付く彼女の動きが、暫く経って、落ち着いた、と判断して。
私は、その後頭部を、ぽんぽんと叩く。
「
……
ヤチヨ。ヤチヨさーん」
「
………
ぇ。あ、わぁ!?」
――
我に返ったヤチヨが、弾かれたように体を跳ね上げた。そうして、
――
っは。知らぬ間に止めていた呼吸を戻しながら、私もまた、ゆっくりと体を起こす。
……
軽く目眩がした。ああやっぱり、これは気のせいじゃない。
「ご、ごめん、ごめんなさい、彩葉。私、そんな、こんな
――
」
「ううん、私が煽ったんだから気にしないで。
それで
――
今日はどうだった?」
「
―――
」
手を添えた肩口に傷一つないのを、物足りなく撫でる私へ。その泣きそうな顔を、驚愕に変えて、恨めしそうに睨んで、呆れたように頭を振って
――
百面相と呼ぶのがふさわしい顔をした後、ヤチヨは額を抑えてため息をつく。
「
……
。お説教は、後でするから」
「え、何故」
「
……
味は、しないよ。するわけない。だって、こんなのままごとのはずで、なのに」
私の疑問をスルーして、ヤチヨは困った様子でつぶやいた。
「
……
なんか、『お腹いっぱい』って感じ、する」
「ああ、やっぱり?私もさ、今、何かすごい怠いんだよね」
「
――
え。ツクヨミ越しで、擬似的な吸血が可能ってこと
……
?」
「うん。
――
これ、現実とツクヨミの経路として面白いアプローチかも」
愕然と口にするヤチヨに、私は興奮のまま思わずまくし立てる。「だってさ、月人であるヤチヨが現実とつながりを持つ事がゴールなら、必ずしも汎用的である必要はないから。私とヤチヨの間で今起きた現象についてもっと深掘りすれば、かなりのショートカット、に」
――
あれ。息をうまく吸えない。いつの間にかなぜか私の顔はヤチヨの肩口にもたれかかっていて、ヤチヨが、頭上から私の名前を怒ったように呼ぶ。いろは。かわいい声。
「
――
もう、考察は結構。
もし本当に、私が貴女の血を吸い取っていたとして
――
いつも吸血の後、貴女はどうなるか、もう忘れたの?」
「
………
ヤチ」
「貧血の初期症状。スマコンはおしまい。
寝て、彩葉。
――
お説教は明日、するから」
両肩を押されるように、体を戻されて。ぴん、と顰め面で私の額を弾いたヤチヨが、ごちそうさまでした
――
と律儀に呟く、言葉の真偽を確かめる間もなく強制ログアウト。
「
…………
」
スマコンの接続が切れた視界に、LEDのライトの光がひどく眩しい。自室のベットに気怠い体を横たわらせたまま、私は、治り始めた肩口をゆるくなぞった。
きっとそう遠くない未来、私は彼女の跡を失う。失ってしまったのなら。
――
ため息をつく。
「
……
先、遠すぎ」
ねえ。かぐや。あんたが『めでたし』ってつけたナンセンスに焦がれているのが、実際のところ私なんだって、わかっているのかな。
……
わかってないんだろうな、ヤチヨはさ。
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