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保科
2026-05-21 18:58:45
13650文字
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超かぐや姫!
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ふぁにーゔぁんぷ!
かぐいろ Twitterに投げてた『月の姫は真祖では?』という連想ゲームの吸血鬼かぐやと彩葉の本編IFです 出会い〜ヤチヨカップ中位までの散文のまとめになります
表題は借りましたが特に型月要素なし、DECO*27のヴァンパイアがイメソンです
6/5とか 6/9とか なんか追記してる
ーーーーーー
かぐやのクラスはバーサーカー!……え?ムーンキャンサー?
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ひにちじょう
ヤチヨカップも中盤戦を過ぎようとするある日のこと。
4桁から3桁へと順位を跳ね上げ快進撃中のかぐやの下へ、ソロライブを開催しないか?という提案依頼が来た。
ツクヨミ内にはいくつかライバー向けのミニステージがあるが、そのスケジュールの一つに空きができたらしい。話題性という点でかぐやにお声がかかり、狂喜乱舞した彼女は一も二も無く返信メールを打った。
「もーちーろーん、おうけ、いたします、いろぴぃ、ともども
……
っと
……
」
「いや待てい、何で私まで立つことに」
「待たないそうしーん!
えー、いーじゃん彩葉どうせキツネの着ぐるみなんだし?」
こん、と両の手を頭に乗せて狐のマネ
――
いやウサギだろそれ、をするかぐやはそうしてにっひっひと笑った。「一緒ならさ、絶対楽しいよ、いろは!」
「
―――
」
それはそうなんだろうけど、と、既に認めざるを得ない私も大概だ。
かくしてとんとん拍子で話は決まる。ゲリラライブで告知を重ね、作らされたオリ曲とカバー曲を引っさげ、さて、そうして始まった肝心のライブはミスなく瑕疵なく大成功。もう嫉妬心を覚えるのも億劫なくらい、かぐやはそれはそれはキラキラ輝いて
――
「たぁーーーーのしかったぁ!」
耳元にダイレクトに届く歓声に、は、と我に返る。既に関係者各位に挨拶も済ませ、ツクヨミからはログアウト済みだ。仮想空間とはいえ、演奏は実際に自分の肉体を動かしてやるものだから、私も相応に緊張していた体がゆっくりほぐれ、達成感がないまぜの倦怠感に、ずぶずぶと沈んでいくのを感じた。
……
あー、忘れない内にスマコンは外さないと。
「お客さん大満足、かぐやも大満足!ん〜〜、最ッ高!
ね、彩葉は?どーだった?」
「
……
、まぁまぁかな。普通」
「っかぁー、もぉ!彩葉ってばこんな時も素直じゃな、
――
」
ぱちり。会話の片手間に、目から外したスマコンを洗浄液入りのケースにしまって
――
不自然に途切れたかぐやの声が気になって、顔を上げる。
「はいはい、悪かったわね、素直じゃなくて
……
。
……
何?」
「
―――
」
すとん、と。表情の抜け落ちたかぐやが、私をじっと見ている。その異様さに思わず私も目を止めて。
たり。
――
かぐやの口の端から、涎が垂れていた。
「
……
かぐや?」
「ぁ、え
――
え、っと、」
「ねぇ、あんた、口元、涎
……
」
「っ」
私の呼びかけに、ビクリと肩を揺らしたかぐやが、口元を乱雑に拭うと、1歩、2歩、恐れるように後ずさって。
――
そのまま横っ飛びで、押し入れの中へと飛び込んだ。すパァン、と、盛大に襖が閉まる。
「
――
は?」
突然の奇行に疑問符しかでない私に、襖越しのかぐやが「いや、その、ちょっと一人になりたくてですねぇ!」と叫ぶ。
……
だとしても急すぎやしないか?
「う、いや、いやはやごみーん、彩葉!えっと、そう!そうそう!
なんか今からさ、ちょいと散歩とか
……
どう?」
「は?
――
今から?」
「そそそ、お一人で、ぜひぜひ」
「いや、バイトもないのにこんな時間に出歩きたくないけど
……
」
「
……
そですね〜いやわかる〜でもなんとかお願いしたいなぁって、ね?」
なんか分からんが、とにかく、今のかぐやが私を遠ざけたいらしい、ということは分かった。
――
分かったが、納得はできない。今日ここまで、散々に私を振り回しておいて、終わった途端にはいさよならなんて納得ができるか。
「
……
あー、さっきの、嘘。楽しかったよ。
かぐやと一緒に、ライブして」
しょうがないと、照れくさいながらに素直な気持ちを口にする。本当に原因が分からないから、私の態度が問題なら、と。
でも、かぐやの言葉は変わらない。
「う
……
わ、分かってるよぅ。彩葉が、一緒に楽しんでくれてたこと位。
彩葉は、悪くない、違うの。違う
――
かぐやが」かぐやは、かすれた声でつぶやく。「かぐやが、彩葉のこと、今、
……
ごほーびに、見えて」
「
――
『ご褒美』?」
「そう、ねえ、だからお願い、お願いします。私が落ち着くまで、ちょっとだけ、少しでいいから
――
」
知らない単語に、なんだそれ、と訝しむ。
さっきから続く彼女の要領を得ない態度は、普段ならともかく、今の疲れた体には大分堪える。流石に疲れてきて、ものは試し、と私は襖に手をかけた。
抵抗されるかもという予想に反し抵抗なく襖は開いた。押入れの隅。ガラクタの隙間に埋もれるようなかぐやが、ぎょ、と驚いた様子で私をみる。
――
爛々と紅く、見たことがないほど紅く輝く瞳で。
吸血鬼の、瞳で。
「
―――
」
閉じこもった彼女を視認できたのは、その瞬間だけだった。
――
気付けば私は、突き飛ばされた部屋の床の上で、かぐやに組み伏せられていた。したたかに打った頭と背中が痛くて、ぐ、と苦悶の声を上げる私に、しかしかぐやは謝罪の一つもなく。
「
――
は、はーっ、は、
……
」
ぽたり。雫が顔の真横に落ちる。痛いな畜生、文句の一つも言おうと見上げたかぐやの顔を見て、ああ、それが彼女の涎だ、と気づいて、彼女の言葉が脳裏をよぎる
――
『彩葉のこと、今、
……
ごほーびに、見えて』
――
成程、結びつく。全部。
「
……
あんた、もしかして。お腹、すいたの?」
ぐる、と、獣のように喉が鳴る。瞳孔の開ききった瞳が私を凝視しながら、理性をもって、ひとつ、こくりと頷かれる。
かぐやは、それ以上動かない。
――
待っている。待っているのだ、いつものように。いつもと比にならない輝く紅い瞳が、いつも通りでない彼女の心情をこれでもかと示しているのに。熱い吐息交じりの、かぐやの囁きが耳朶を打つ。
「
……
その、らいぶ、がんばり、すぎたみたいで」
――
そりゃそうだ、調子に乗ってアンコール2曲も追加して、観客も煽りに煽って跳ねまくって飛び回って走り回って。そもそも練習に熱中して昼も食べ損ねている訳で、健啖家の彼女だ、空腹も限界だろう。
頑張った。私も、かぐやも。今日は頑張ったんだ。
「やばくて、いろは。
…
おねがい」
そういうことなら。ならさ。
「はやく、にげて、」
『ごほーび』があったって、
……
いいだろう。
あんたも、
……
私も。
「うん、そうだね。
かぐや」
「
――
いろは」
「
――
いいよ」
多分、私は笑っていて、かぐやは、なんでか泣きそうだった。口元が、ばか、と一瞬つむいで。
「
――
、いただき、ます」
掠れた声に、律儀だなあ、と、なんだか面白くなりながら、肩と首の狭間に彼女の牙が突き刺さるのを他人事、のように、
――
あ。やばい、二の腕って言うの忘れたわ。
「っ、
―――
かぐ、や
……
っ」
呼びかけに、既に返事はない。即座に襲い来る虚脱感は、いつもと比にならない程強く、合わせて、ささった場所からじんわりと広がる、ふわりとした高揚感
――
首元を覆うぬくもりだけが私を私たらしめているような、そんな甘美な幸福を、享受する。
耳元で、ごく、ごく、と、彼女の喉元を液体が嚥下する音がする。そんなの、
……
初めて聞いた。初めてだ、感覚も、態度も、全部、
……
ああ、そうか。
これまでのかぐやの吸血が、マナーを伴う人の食事ならば。
これは、捕食なのだ。ヒトならざる鬼の、獲物を喰らう、野蛮な行為。
――
それは、なんとも、
――
。
多分、まともに物を考えられたのはそこまでだった。まず、視界が霞む。暗くなる。意識が混ざり、指先の、全身の感覚が遠ざかる。
「
――――
、
――――
」
目眩がする。眠気が襲う。耳鳴りがする。でも、幸せだ。ただ、浮ついたような幸福が私のなかに残り続ける。
1秒か、10秒か、それとももっと?
――
ごちそうさまでした。
感覚という感覚が彼方に薄れる中、その声だけを遠く聞いて。なんだか、泣きそうな程震えていたから、別に、泣くことはないでしょ、と、口元は動かせないまま意識は途切れる。
「
……
、
……
あー
……
おはよう
……
?」
「
…………
彩葉、実は頭悪い説」
「
……
あのさ
……
、アホだいひょーみたいなやつに、どうしてめぇさめたとたん、ののしられなきゃなんないの
……
」
いつの間にか、布団に寝かされていたらしい私の枕元にて。視界いっぱい、沈痛な面持ちのかぐやが、開口一番罵ってきた。いやなんでよ。
首元に感じる、貼り付けられたガーゼの違和感により、覚醒直後から意識の混濁もない私は、何が起きたか
――
何が起きてしまったかは理解した。
視界の端の壁時計は、ライブが終わったあとからおよそ数時間が経過した深夜なことを示していて、夜明けも程近い時間帯だった。
――
ああそうだ明日のスケジュール、と、スマホを探そうとした手が上がらない。というか身体がものすごい倦怠感でうまく動かない。なんなら、多分舌も上手く回ってない。息を吸う度にくらくらする感覚は、非常に
――
極貧生活のなかで覚えがある。
「
……
、かぐや、これいま、わたし、どーなってる
……
?」
「極度の貧血
……
だと、思う。取り敢えず手当てして布団寝かせてる〜、って、感じ。
……
あー
……
起きてくれてマジで良かったぁ。
……
ね、彩葉。急でごめんだけど、これ、飲んでください。てか飲んでお願いだから」
案の定の症状だ。ぐい、と、口元に添えられたゼリー飲料を、言われるがままにちゅうちゅう吸って飲み込んだ。あ、これ、昔セールの時に買い溜めして飲んで以来だ
――
味的に鉄分用のやつかな。
大人しく吸ってると、かぐやが、深くため息をつく。
「
…………
99%、これについては、かぐやが悪いんですが。でも、1%は、彩葉が悪いと思いますので、反省してください」
喋れないので目付きで抗議する
――
そんなことない。てかどっちも悪くないだろ別にこれ。
「うっわこの翁反抗的ぃ
……
あのね?かぐやさぁ、本当にお腹すいた時、おなかいっぱいになるまで加減できないんだよ、どうしても。
……
だから逃げてって、言ったのに。この為に買い溜めしてた栄養バーとかで、凌ごうと思ったのにぃ
……
なんでさーあんなさー
……
」
ぶすくれた声に、はて、と思う。そういえば、なんか
……
言われた、ような。
ぱちぱちと瞬き疑問を表明する私に、かぐやは、ああ、もう!と、しっちゃかめっちゃな様子で頭を振った。本当に、つらそうに。
「
――
しんじゃったとおもったの!
かぐやが、いろは、
……
ころしちゃったかと」
それは、うん。まあ、心配かけましたね。私もそんなに吸われると思ってなかったんですよ。
「
……
なんで
……
」
呟かれる途方に暮れた声に、返す言葉を持たない。何で、と問われても。
――
あの瞬間、ただ、貴女の為になりたいと思ったのだと、それをどうやって伝えればいいのか、言葉を持たないから。
……
あー、てかダメだ、気分悪くてこれ以上飲めない。飲み口から口を離すと、もういいの?とかぐやが問うてくるので、頷く。
「
……
ごめん、ごちそうさま」
「ん。
……
ね、後で残りも飲んで。絶対だよ」
「あー
……
おけ、がんばる」
「や、その、彩葉はもう、頑張らなくても、いーけど」
頑張らせたし、と、気まずげなかぐやに、さて。
私は満を持して、肝心な問いを告げる。いつものように。
「
――
で、かぐや。
どうだったの」
「
―――
」
言葉に詰まったかぐやが。布団に横たわる貧相な私を、本当に、信じられないといわんばかりの呆れた顔で、眺めて
――
「
……
最高。超、超超超超超、美味しかった
……
」
「よっし」
敗北とばかりのため息交じりの言葉に、力のはいらない手で、ガッツポーズ。へなへなと、気の抜けた様子でかぐやがその場に倒れ込んだ。
「もー
……
なんで彩葉が得意げなのぉ
……
」
なんででしょうね、もう、私も分かんないよ。
でもさ、ライブも、今の顛末も。結局あんたが嬉しいと私も嬉しいから、とか
――
絶対、内緒だけど。
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