サブさぶれ
2026-05-09 17:25:24
14364文字
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原作軸③

原作軸のSS・短編置き場③です。


おわり


 すっかり沈んだ太陽が山の向こうを赤く染めている。空に残された雲は紫色の影を背負っている。
 もうすぐ一日が終わる。暮れていく空を眺めながらアオイはぼんやり思った。

「寒ぃな」

 不意にかけられた声に振り向く。頬をほんのり紅潮させた恋人の顔は、暗がりの中でもひどく美しかった。

「だね」

 答えながらスグリの肩にもたれかかる。細くて骨張っていて、けれど揺らがない強さを持つ肩。かすかにカミツオロチの蜜と汗の香りを感じる。スグリの、スグリだけの匂い。愛おしさを伝えるように、アオイはそっと頬擦りをした。

「寒いな」

 ぽつり、呟く。寒いのは冬のせいなのか、残り数日で終わってしまう留学期間のせいなのか、アオイには分からない。
 分からないけど、今はただ、スグリのそばにいたいと思った。


 あと少しで完全に陽が沈む。真っ暗闇に覆われる。君が見えなくなってしまう。
 お互いを見失わないように、なんて思っていないけど、それでも。アオイはしっかりとスグリの手を握った。今、この世界で、ギュッと強く握り返された手だけが真実のように感じた。