こあらん
2026-03-31 00:25:04
21643文字
Public ロベシエ
 

オレのモノになってくれ/ロベシエ(R18)

肉体関係はあるけど付き合っていない。
シエテのある言葉がきっかけでロベリアが動く話。

人によっては、解釈違いがあるかもなので、いやな予感がしたら回れ右でお願いします。




「サリュ、団長。パルフェな音は奏でられたかい?今回は一緒に行けなくて、寂しかったぜ。次は絶対にオレを誘ってくれよ?」 
 グランサイファーに戻った後、甲板でグランと昼食後の予定の打ち合わせをしたら、予想外の人物が現れた。シエテは思わず顔をしかめて、その相手を見た。

「あ!ロベリアさん、こんにちは!」
……ロベリア……
 明るく元気にロベリアに挨拶をするルリアとは対照的に、眉を寄せてため息をつきながらグランはロベリアを見ている。会うたびに自分のコレクションを聞かされるので、つい身構えてしまうらしい。ロベリアはそんな様子のグランのことなど気にもせず、ニコニコしている。

「どうしたんだ?クラポティの兄ちゃん。オイラ達に何か用かぁ?」
「ウィ、キミらはまだ、ランチを食べていないって聞いたからね。・・・・・・・・・・・団長の為に、買ってきたぜ。フィナンシェだ。ランチのデザートにどうだい?」
 そう言い、ロベリアは手に持っていた小さな箱をルリアに渡した。ルリアが箱を開けると、そこには黄金のように綺麗に焼かれた小さい焼き菓子がいくつか入っていた。
「わぁ!ありがとうございます!いい匂い。おいしそうです!」
 ふわりと、焦がしたバターの香ばしい香りが周りに広がる。匂いだけで口の中がじんわりと潤んで、お腹がより減ってくる。まだ昼食を食べていないルリアは目をキラキラさせて、今にもかぶりつきそうな雰囲気だ。
……大丈夫だとは思うけど、変な事、企んでいないよね?」
 疑い深い眼差しでグランはロベリアを睨むと、ロベリアは大袈裟に肩を竦めて首をゆっくり横に振った。
「まさか!オレが愛しの団長にそんなことするはずがないだろう?これは今朝、この島のブーランジェリーで買った、とっておきのやつさ!」
………
 それでもグランは冷ややかな目でロベリアを見つめている。


 そんな二人のやり取りをシエテは、一歩下がった場所で見守っていた。基本的にシエテはグランと他の団員との交流には干渉しない。しかしロベリアは時折、暴走してグランの気に障るような事をする。その時はグランの為にも仲介しないと──そう思いながら様子を見ていた。
 どうやら、本当に菓子を渡しに来ただけのようだ珍しいな。そう思っていた矢先、一瞬ロベリアと目が合った。彼の瞳がゆっくりとシエテに向け、目をわずかに細めた気がした。そのすぐ後、ロベリアはシエテに顔を向け、まるで照れくさそうに笑った。
「ああ、そうだ。シエテ、実はキミの分も用意してあるんだが。オーララ、オレとしたことが、まさかキミが今グランと一緒にいるとは思わなくてね。キミの分はオレの部屋にあるんだ。後で貰いに来てくれないか?」
……えぇ……俺にも……?」
 まさか自分にも話を向けられるとは夢にも思わず、驚きのあまりシエテは目を見開いた。予想外過ぎて、かなり間抜けな声で答えてしまった気がする。
「ウィ」
 目を瞑りながら、まるで後ろに花でも抱えているように肩を揺らして笑い、シエテをゆっくり見つめる。その瞳の奥には、シエテにしかわからない熱情が見えた。

 ……なるほど、そういう事か。いつもの夜のお誘いだ。シエテはロベリアの意図を理解し、内心で冷やせをかいた。グラン達がいる前で何やっているんだ。バレたらヤバいだろと焦りながら、なんとか平静を装って答えた。
「あ、あぁありがとう。じゃあ、後で取りに行くよ」
「ディナーの後なら時間が空いているぜ。それじゃあ、アビアント!団長、シエテ」


 ウィンクをしながら、ロベリアはこの場を立ち去り、この場には再びグラン達だけが残った。お喋りなロベリアがいなくなった途端、この場はしぃんと静まり返ってしまい、誰一人会話を始めようとはしなかった。その代わり、三人はじぃっとシエテを驚きと好奇心が混ざった瞳でずっと見つめている。ルリアなんか、興味津々と言わんばかりの瞳がキラキラと輝いていて……視線が、痛い。最初に口を開いたのはグランだった。
……シエテって、ロベリアと仲が良かったんだ。知らなかった。なんで教えてくれなかったの?」
「え……えぇ!?」
 意外な組み合わせに驚きと動揺が混じっているグランは、何とも言えない渋い顔をしている。
「そうですね、とっても仲良しさんに見えました!いつお友達になったんですか?」
「え!あ、あぁ。ま、まぁね。ほら、同じ団の団員だし
 純粋にシエテとロベリアが仲のいい友達だと全く疑っていない無垢なルリアは、満面の笑みを零しながらシエテを見つめている。なんだか、良心が痛いので、やめてほしい。内心焦りながらも、まるで急な尋問を受けているかのような心情になってしまったシエテは、なんとかその場を誤魔化そうとした。変に焦って関係を怪しまれたりはしたくはない。

……同じ団の仲間なのもあるけど、ほら、彼、過去に問題があるでしょ?風の噂で聞いていたから、十天衆としてロベリアを色々と調べなくちゃって思ってね〜。まぁ、それで色々と……。あっ、でも別に喧嘩とかしていないからね!今は仲良くやっているよ?黙っていてごめんね〜、グランちゃん!」
……そっか。やっぱりシエテはロベリアの事に気付いていたんだ。……はぁ、なーんだ!もっと早く言ってよ!だったら色々相談に乗ってもらえたのに!」
「ご、ごめんね
 シエテの説明に納得したのか、グランはようやくいつもの明るい、太陽のような表情に変わった。今は口を尖らせて大袈裟に拗ねた顔をシエテに見せている。子供らしい反応に心が癒されつつも、これ以上突っ込まれないことに安堵した。

「でも、シエテがロベリアの事に気が付いていたのは、なんだか心強いぜ!何かあったら、相談にのってくれよな!」
「そうだね。でも、シエテとロベリアが仲が良いのはなんだか嬉しいよ。あっ、それだったら、これから、ロベリアのおもりとか頼んでもいい?」
「ぇ、ぇえーー!」
 ビィとグランは、少し抱えていたものの何かが軽くなったような表情でシエテを見つめながら笑っている。グランの後ろから、まるでお願い!とでも言わんばかりのキラキラしたオーラにシエテは圧倒された。ロベリアの件は、15歳の少年にとって荷が少し重かったのだろう。可愛い団長の負担を少しでも軽くしてあげたい気持ちはあるのに、いつもみたいに『それなら、お兄さんに任せてよ!団長ちゃん!』と軽い気持ちで言うことができず、内心シエテはなんとも言えない罪悪感にかられていた。



 確かに、シエテとロベリアは最近は仲が良い。最初はお互い警戒し合ってギスギスするような間柄ではあったが、今では自由時間の時に交流する時間が増え、くだらない話で笑い合ったり、ラードゥガで飲みに行ったりするような仲でもある。嗜好は違えど、性格の相性はいいようで、一緒にいて疲れることなどなく、むしろ楽しい時間を過ごしていると思う。確かに他の団員とは一歩前を出た関係なのは否めない。
 しかし、その関係は肉体関係も伴っている。だが、恋愛感情はあるわけではない。告白はされていないし、そもそもシエテはロベリアに対して特別な感情を持っていない。つまり、二人の関係はいわばセックスフレンド、というやつだ。ある日、ロベリアの自室で飲みながら談笑していたら、そういう雰囲気になってしまい、このようなふしだらな関係が始まってしまった。

 どんな話の流れでこんな関係になったのか正直覚えていない。その日はなんだか浮かれて結構飲んでしまったし、お互い調子に乗っていた。多少の好奇心もあったし、ロベリアも抑えている欲求の捌け口が欲しかったのだろう。ふと視線が絡み、気付けば唇が重なっていった。初めての、他人の唇が触れたあの感触は今でも憶えている。柔らかく、熱くて、気持ちが良い──不思議な感触。ロベリアの酒の熱に溶け、快楽に溺れた吐息が傍に聞こえてシエテも胸が熱くなった。それに夢中になっているうちにロベリアの舌が口内に入り込み、押し倒されていた。そして、気が付いた時には事が終っていてベッドで裸だった──。
 シエテ自身もその場の雰囲気に飲まれ、流されるままロベリアを受け入れてしまった。とんだ失態だったと思う。そして、その関係はその夜だけでは終わらず、ずるずると続いて今に至る。シエテを自分の快楽のおもちゃとして扱うのが楽しいのか、ロベリアはその後も定期的にシエテを夜の誘いにかけてくる。そのたびに、シエテはふらりとロベリアの部屋へ運んでしまう。
 シエテ自身、本来は誰かとそういう関係になるのは望んでいなかったはずなのに。それなのに、ロベリアと交わってから何かが変わってしまった。シエテも、ロベリアとの初めての夜が忘れられないのだ。破壊の音を聞いて興奮した時とは少し違う、蕩けながらも奥底に情熱の炎を宿した瞳。そんなロベリアを見るのは初めてで、新鮮で。そして、そのロベリアがひたすら自分を求めてくる姿が、なんだか可愛らしくて。またあの表情が見たくてつい受け入れてしまう。
 そして、絶頂の時の解放感──あれが、麻薬のようにシエテの心を侵食している。快感に揺さぶられて、何も考えられなくなるあの瞬間、あれがたまらない。その時、シエテは使命から“解放”され、『ただのヒト』であるような錯覚を抱いてしまう。それがあまりにも心地よく、癖になっているような気がする。本来、経験する必要はない事をしてしまい、完全に脳みそがバカになっている。毎回、ロベリアと情を交わした後になって罪悪感に苛まれる日々なのに、やめられない。酷い時はシエテから誘いをする時だってあった。その時、ロベリアは喜んで受け入れてくれる。まぁ、それは極稀であるが
 それでも、ロベリアと身体を重ねる時の幸福感、そして罪悪感がミルフィーユの層を成していても、あの独特の快感がシエテの心を蝕み、やめるという選択肢がなかなか浮かび上がらない日々だ。


 先程のも、夜のお誘いだろう。含みのある笑顔があからさまだった。何が『グランと一緒に戻ってきてるとは思わなかった』だ。今朝、ベッドの上で眠そうにしながら、今日の予定を聞いていたくせに。グランと同行して依頼を受けたって事、知っていただろ。白々しい。その場にいないロベリアに対して苛立ちが募る。
 それにしても、先程のロベリアは少し様子がおかしかった。いつもだったら、誰もいない時にこっそりと夜の誘いをしてくるのに、よりによってグランの前でするとは。会話の内容は自然だったから、勘付かれてはいないと思うが、他人の前ではやめてほしい。団の風紀に関わるし、団長に勘付かれたらグランがどんな反応をするのか想像がつかない。


「はぁ……

 昼食の後、約束していたグランとの剣の手合わせも終わり、部屋に戻った。着替える気が起きず、そのままベッドに座る。ふぅっと腹からたまった重いものを全て吐き出すかのように、ため息を深くついた。
 時刻はあっという間に夕暮れ時だ。窓からオレンジ色の優しくも淡い光が、シエテの部屋全体を照らしている。もう、今日は特に大きな予定が無い、ロベリアとの約束以外は


 正直、気が乗らなかった。今日はもうロベリアに会いたくない。もう、このまま寝てしまいたい。今日のグランとの会話で改めて自分の立場を自覚してしまった。やっぱり、いくらロベリアとはいえ肉体関係だけの関係は辞めるべきだ。不健全だし、万が一、周りにバレたら示しがつかない。終わらせるなら、早く終わらせたほうがいい。そう頭で考えても、ロベリアに会ったら流されてしまう予感があった。
 シエテが部屋に入るたび、ロベリアはいつも本当に嬉しそうに、蕩けた笑顔で迎えてくれる。あの顔を見てしまうと、心の奥の何かがぎゅっと締付けられ、理性がとろりと溶かされそのまま流されてしまう。認めたくはないが、ロベリアとの時間は、自分の足りない何かをそっと埋めてくれる甘くて危ういひとときだった。
 誰かに強く求められ、受け入れるということがこんなにも心に至福をもたらすなんて考えたこともなかった。今回もロベリアのところへ行ったら、きっとまたいつも通り、関係を結んでしまう。ダメだというのはわかっているのに。だから、少し距離をとって、頭を整理したかった。

約束しちゃったし、行くしかいんだろうなぁ。……はぁ困ったなぁ

 行きたくない、ロベリアに会いたい──相反する気持ちがシエテの心の中を渦のようにぐるぐると掻き乱す。ロベリアの事を考えるたび、十天衆の装飾が重く感じる。情に、欲に流されるな、俺は空の世界のためだけに生きていけばいい、そう訴えてきている気がする。確かにその通りだ。

 ──そうだ、後でロベリアに会う時はこの姿のまま会いに行こう。そこで、まだ仕事があるとか言って、断ってさっさと部屋に帰ってしまおう。うん、そうしよう。

 もはや今のシエテにとって、十天衆の鎧はロベリアからの誘惑から護る盾のような存在であった。