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那須野
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徳種
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群青
【徳種】原作軸翌年IF*徳川さんの高校最後の強化合宿、その前と後のふたりの話。鬼+入+徳/曲+種パートも少し。
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(五)
――
とは確かに言うたけど、なあ。
二ヶ月後。しんと静まり返った夜更けのマンションの一室で、種ヶ島修二は考える。
□□駅から徒歩十分、徳川の自宅である。愛媛の実家を離れて暮らす息子の学生生活のために諸々のサポート込みで手配されたという部屋は、退居が間近に迫ったいまはリビングや寝室の端々に幾らかの荷箱が積み上げられていて、少しのもの寂しさを漂わせるこざっぱりとした空間になっている。
荷造りを手伝いがてら泊まりがけに来たものの、元々あまり物を増やしていないらしくすでにほとんど作業は終わっていた。空いた時間はこれ幸いとばかりに満喫し、戯れるように同じベッドに潜り込んだ、のだけれども。
離れがたそうな表情を浮かべてみせる徳川を宥めるうちに絆されて、気付けば男の腕の中
――
いわゆる腕枕の体勢にこちらが収まる形で眠ることになっていた。
過去の気ままな人付き合いのうち、添い寝程度の経験ならばそれなりにあるが、自分とほとんど変わらない体格の男に腕枕をされる日が来ようとは。
よく鍛えられたしなやかな腕は見た目ほどには固くなく、高めの体温と厚みも相俟って、枕としてのポテンシャルは申し分ない。まだ夜には底冷えのする季節でもあるから、男の健やかな寝息を聞きつつ気兼ねなく身を預けて目を閉じれば、さぞよく眠れるに違いなかった。
(ヘタすりゃ手ェ握るだけで耳真っ赤やのに、おんなじ布団で寝るんはコレやもんなあ)
大物やわ、ホンマ。
声に出さず呟いて、背に回された腕の重みを感じながら口元だけでやわく笑む。あたたかい。
あと半月ほど後にはしばらく触れられなくなる体温を、五感と記憶にそっと蓄えた。
あれほどひたむきな好意を滲ませておきながら、距離を理由に感情を飲み込もうとするいじらしさに、二ヶ月前の晩からすっかりあてられてしまっている。
荷造りの手伝いなど、ふたりで過ごすためのただの口実だ。律儀に許しを得てから遠慮がちに抱き締めてくる両腕と、その慎ましさとは裏腹な鼓動の速さに不器用な男の切実を感じては、どうにかしてそれをほどいてやりたいと思う。一年半前、あの合宿所で徳川が己にそうしたように。
文字通り命懸けで平等院に挑み、再びの敗戦を喫してなお、この男は素直なままだった。
徳川が口にしたいくつかの言葉とまっすぐな眼差しは、自身の心のうちのかすかな陰りを確かにほどいて溶かしていった。
……
もっとも、当の本人にそこまでの自覚はないのかもしれないが。
ひとつの頂点を目指した日々からいくつかの季節が過ぎ、夢への足掛かりを得た男は海の向こうへ出ていくけれども
――
いまでも自分たちは違う方法で、同じ場所を目指している。
「
…………
、」
寝入ったばかりの男を起こしてしまわないよう気を払いつつ、広い背に回した腕をほんのわずか強くする。眠っているはずだというのに応えるように強まるしなやかな腕に、思わず喉を震わせてちいさく笑った。
明日の朝、目を覚ましたらなにより先に男の名前を呼んでやろう。
きっと返される律儀ないらえに、好きだ、と応えたら、この男はどんな顔をするだろうか。
そんな算段を立てながら、今度こそ目を閉じる。
寝室のカーテンの裾から零れる群青が、眠りに落ちるまで瞼の裏で揺れていた。
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