七海ななみ
2026-03-07 14:09:46
4189文字
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あなたの選んだ道は

ルカキリ。二人とも出会う前に政略結婚して、荷物ぶちまけの時が初対面になる夫婦のお話。フリンズはカントです。
今回は「風を捕まえる帰郷者」のイベストと、ファルカのキャラストの微ネタバレを含みます。個人的解釈を含みます。
ファルカってあの選択に後悔はしないと思うのです。ですが、幼少期の憧れって大人になっても引きずる人もいると思っています。ファルカも心残りになっているのではないかな、そして喜びを感じた自分に自己嫌悪してるかも、というのが私の解釈になります。あと、絶対に甘え下手。年齢、立場を考えたら仕方がないけどね。
マシュマロ立てました。ご感想等いただけたら嬉しいです。返信はXで行うと思います。
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出会う前に結婚した① | Privatter+ https://privatter.me/page/6999ae2ec80b2
出会う前に結婚した➁ | Privatter+ https://privatter.me/page/699a38e826fd2
出会う前に結婚した③ | Privatter+ https://privatter.me/page/699aab4914545
出会う前に結婚した➃ | Privatter+ https://privatter.me/page/699b71b6e05ee
出会う前に結婚した⑤ | Privatter+ https://privatter.me/page/699bd366e8e34
出会う前に結婚した➅※ファルカ伝説任務ネタバレ有り | Privatter+ https://privatter.me/page/69a11456c4be6
出会う前に結婚した⑦※⚔️伝説任務微ネタバレ有り | Privatter+ https://privatter.me/page/69a80d3627ae0


今回は「風を捕まえる帰郷者」のイベストのネタバレと、ファルカのキャラストの微ネタバレを含みます。ファルカに対する個人的解釈を含みます。
広い心でお読みいただけると幸いです。


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巨龍と殺し合い、血戦の中で自らの限界を超え、英雄として称えられる。
幼き頃の憧れだった。憧れだけで終わったつもりだった。
だが、本物の巨龍と戦い、喜びを感じる自分がいた。親友の眷属がアビスに侵され苦しんでいるのに、だ。
本当に、自身に嫌気が指す。
嫌悪感をさらけ出さないように隠す。幼い自分の声に蓋をした。


────────


あれから、ファルカはモンドとナドクライを往復するようになった。ナドクライの拠点を残しつつ、交代でモンドに帰還しているようだ。一緒に戻らないか誘われたが、歓迎ムードの中で、大団長の伴侶が共に帰還するのは変な気を負わせてしまうかもしれないと思い、辞退した。
だが、以前注文した指輪が完成するということだったので、帰還の日程をずらし、単独でモンドに向かうことになった。
城門を潜ると、街中で歓喜の声に溢れていた。門番によれば、遠征部隊のために小規模ながらもイベントを用意しているということだった。
ファルカの家で合流する手筈なので、あまり目立たないようにしながら移動する。
前にモンドに来た際は、政略結婚した大団長の伴侶として色んな人に探られた。得意の話術で躱していったが。
稀に躱されない人がいたが、そういう場合はモンド式のやり方で黙らせた。蟒蛇でよかった。
そんな事に想いを馳せつつ、ファルカの家にたどり着く。合鍵で入ると、生活感のない殺風景の部屋が迎えてくれた。
ただ待つのも退屈だ。食料品を買い足し、料理をし始める。燻製と、あとはジャーキーでいいか。ツマミにもなるし。
料理をしていると、鍵の開く音が聞こえる。振り向くとファルカがいた。

「おかえりなさい、ファルカさん」
………ただいま。なんか、いいな、こういうの」
「ふふ、もう結婚してそこそこ経っているのに、新婚………なんでしょうか?」
「新婚だろ。こういう風に暮らすようになったのは最近だぞ」

そう言いつつ、ファルカは甲冑を脱ぎ始める。料理に集中していると背後から抱き締められる。

「ファルカさん、僕は火を扱っているのですが」
「ちょっくらい、いいだろ? キリルに会えて嬉しいんだ」

そこまでいうなら仕方がない。火を止めてキスをすると、嬉しそうに笑うファルカが、愛おしかった。


────────


キリルと少しイチャイチャして、本命の指輪を受け取りに街に出る。遠征してた騎士が、家族と楽しそうに歩いている姿を見て、心が温まる。久し振りの帰郷を心から楽しめてもらえてよかった。ジンに感謝だ。
厄災の危機も去り、モンドは平和そのものだ。本当に、よかった。本当に、遠征に行って正解だった。厄災を阻止できて、本当に、よかった。
………巨龍に剣を突き立てることが、なくて、本当に、よかった。

『ちがう。本当は嬉しかった』

頭を振る。何を馬鹿なことを考えているんだ俺は。トワリンはあんなにも苦しんでいたのに。英雄にならなかったのは、正しいことだと、証明された。たくさんの命が救われた。トワリンも、救われた。
なにより、キリルと会うことができたのだ。これ以上の幸福はない。英雄よりも、かけがえのないものを手に入れた。それで、十分なのだ。
キリルはこちらをじっと見ている。

「もしかして、キスしてほしいのか?」
「街中で何を言っているのですか。………家に帰ってからなら、いいですよ」

やっぱり俺の伴侶は最高だな。恥ずかしがるキリルと手を繋いで宝石店に向かい、注文した指輪を受け取る。常に身に付けたい所だが、武器を握ることから、首にかけるようのチェーンも購入した。
どこで指輪をつけるか、とても大事な事だ。真剣に考えていると、家でつけようと提案される。二人で教会行っても目立つだけだし、静かに指輪を嵌めたい、と。
まあ、確かに一理ある。俺たちは目立ちすぎてしまう。二人きりでゆっくりしたい。あわよくば“子作り”をしたい。久々に会えたし、指輪を受け取るためとはいえ、あんな新婚気分を中断されたし、欲求不満である。
ああ、幸せってこういうものなんだな。顔がにやけてしまう。

………
「どうした、キリル?」
「いえ、なんでもありません。早く家に帰りましょう」

キリルは怪訝そうな顔をしている。何か悩みでもあるのだろうか。後で聞かないとな。


─────────


殺風景な部屋で申し訳ないが、窓辺に立ち、向き合う。
指輪の小箱を開けると、サファイアとイエローダイヤの指輪が収められていた。
俺はサファイアを、キリルはイエローダイヤの指輪を手に取る。

「今は指輪だけだけど、いつか、結婚式を挙げたいな」
………少し恥ずかしいですが、いい、です、よ」

指輪を右手の薬指に嵌める。胸いっぱいの幸福に、こんなに幸せで、どうすればいいのかわからなくなる。
頬に手を添えると、互いに目を閉じる。
幸せって、こういう味なんだな、と噛み締めた。
このままベットに行きたいところだが、忘れる前に懸念点を解消しといた方がいいだろう。

「そういえば、さっき、怪訝そうな顔をしていたが、何かあったのか」
……………何かあったのは、ファルカさんの方では?」
………俺?」
「ファルカさんが何かを隠しているようだったので、気になったんです」
………特に何かあった覚えはないな」
………まさか、無自覚ですか?」

ジト目でこちらを見つめている。何故だ。
首の後ろに手が回される。少し屈む状態になり、抱き締められる。

………貴方が、立場上、甘えることができないのはわかっています。遠征の事も、僕に話せないことが多かったのも、わかっています」
「それは………
「僕はあの時、自分の無力さを嫌でも理解しました。僕に出来ることは少ないです。でも、話せなくても、何か辛いことがあったら、寄り添う事なら、できます。僕は、貴方の伴侶なのですから」
………
「貴方は何かを隠して、辛い想いに蓋をしているような、そんな気がするんです」

想いに、蓋をしている。
幼い俺が泣き叫んでいる。でも、俺もいい年した大人だ。そんな子供のような憧れは、もうなくなったんだ。

………そんな、ことは、ない」
「感情が漏れていますよ。我慢しなくてもいいんです」

キリルは優しく俺の頭を撫でる。やめてほしい。耐えられなくなりそうになる。もし、この想いの蓋を外したら、外してしまったら

………キリルに、嫌われたく、ない」

こんな、醜い感情を持つ俺を知られてしまったら、キリルに嫌われるかも、しれない。
だから、そっとしといてくれ。また蓋をするから。

「舐められたものですね。それだけで嫌われると思われていたのですか? いいですか、僕は貴方の伴侶です。僕は、貴方の色んな姿を知りたい。どんな姿であっても」
………
「だから、僕の前では我慢しないでください。全てを隠さないでください。たくさん甘えてください。………伴侶なんですから」

キリルは、何も言わず、俺の頭を優しく撫でる。
………あたたかい。いとおしい。
蓋が、抑えきれない。感情が溢れ出す。
………俺は、思ったより、無理をしてたのかも、しれない。
キリルを強く抱き締める。キリルは、ただ受け止めてくれる。
ポツポツと、魔女が作ったシャボン玉の魔法について話す。
そして、かつて夢を抱いていた、巨龍と戦えたこと。喜びを感じたことも、アビスで苦しんでいるのに、嬉しかったことも、気がつけば全て話していた。
キリルは、笑うことも嫌うこともせず、受け止めてくれた。

………そうでしたか。それで、喜びを感じた自身に嫌悪感を抱いていたのですね」
………酷い、だろ」
「そんなことはないですよ。酷い人は自覚すらしないものですから。だから、貴方は優しい人なんです。………それに、子供が巨龍と戦うことに夢を抱いて何がいけないのですか」
「俺はもう、そんな夢はない。いくつだと思っているんだ」
「確かに、貴方は年を重ね、大人になりました。でも、心残りだったのではないですか? だからこそ、喜んだ」
………
「貴方にとっては過去の夢だったかもしれない。でも、貴方が思う以上に、大きな夢だった。いくら過去の幼い頃の話といえど、自分を否定されたら辛くなりますよ」

キリルの言葉が頭から離れない。
幼い俺が叫んでいる。巨龍と戦って、英雄になりたいと。
未来を知り、英雄になるのではなく、厄災に立ち向かう道を選んだ。英雄になるよりも、大切なものがあると思っていたから。

「もう少し、自分自身を、大切にしてあげてください」

自分を、大切に。

………よろこんでも、いいんだろうか」
「ええ、ゲームの世界での出来事なんですから、もっと喜んでもいいんですよ」
………そうか、そうだったんだな」

俺は、ずっと、我慢してたのか。
………もっと、素直になれば、よかったのか。

「トワリンと、戦えて、嬉しかった」
「ええ」
「でも、英雄になったとしても、モンドを守れなかった」
そうなん、ですね」
………英雄に、ならない方が、正解だったなんて、苦しかった」
………
「でも、英雄にならなくて、本当によかった」

幼い俺よ、確かに夢は叶える事はできなかった。
でもな、モンドは平和になるし、なによりも、かけがえのない伴侶が、側にいてくれるのだ。

………キリル、俺と結婚してくれて、本当にありがとう」
「ふふ、どういたしまして」

不思議と呼吸がしやすい。心が安らぐとはこんなに心地がよいのか。
………これが、伴侶か。キリルは本当にすごいな。本当に、幸せだ。
右手の薬指に嵌まっているイエローダイヤが、静かに輝いている。キリルの顔が見たくなり、イエローダイヤの瞳を見つめると、幸せそうに微笑んだ。


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