あんな初対面になるなんてな。
やってしまった、と思いながら頭を掻く。相手の反応からして悪手を取ってしまった。
確かに、ナドクライでライトキーパーに所属していると聞いたが、こんなすぐに会えるとは思っていなかった。
荷物を拾ってもらったお礼もあるし、観光客と名乗った謝罪をしなければならない。
相手は酒好きだからモンド式のお礼が一番だろう。
早急に和解せねば。相手は伴侶なのだから。
そういえば、伴侶があんなに美人だったとはな
…。
いやいやっ! 下心は捨てろ!! 伴侶といえど初対面だ。適切な距離を保ってこそ、騎士だろう!
深呼吸をして、拠点に戻った。
翌朝になり、蒲公英酒を持って夜明かしの墓に訪れる。
「昨日は失礼した。改めて自己紹介をさせてくれ。俺は西風騎士団大団長、北風騎士のファルカだ」
「おや、観光客ではなかったんですか」
心なしか視線が冷たい。根に持っている。謝罪もあるがそれだけではない。酒樽を差し出す。
「こちらはお詫びの品だ。納めてくれ」
「
………なんですか、これは」
「昨日のお礼だ。モンド名物、蒲公英酒だ。酒好きだろ?」
量はあるから、ライトキーパーにお裾分けするのもいいだろう。そう言うと、伴侶はポカン、という顔をしていた。なんかその顔はかわいいぞ。
ピラミダに案内され、マスターライトキーパーのニキータにお裾分けをしたら飲み会となり、ニキータと仲良くなった。
………伴侶よりも、伴侶の上司と仲良くなってしまった。
このままではいかん。なんとか伴侶と二人きりになる。
「ニキータ以外には結婚を伏せています」
「ああ、わかった。それと、おまえの事をなんと呼べばいい?」
「
………フリンズ、とお呼びください」
「フリンズ、これからよろしくな!」
笑顔で手を差しのべると、ふいっとそっぽ向かれてしまった。
先は長そうだ
………。
───────
腐っても大団長のようだ。ライトキーパーの面々とあっという間に仲良くなり、同盟のような関係性となった。あと予想以上に酒豪だった。手紙に書かれていたことも、一部は真実だった、それだけだ。手紙だけで人となりを理解してた気になっていた僕が馬鹿だっただけだ。
了承したのは僕だ。仮にも伴侶としてやっていかねばならない。少なくとも、ファルカがナドクライに滞在している間だけは。そう自分に言い聞かせ、巡回に出かける。
最近、ワイルドハントが増えてきている。一匹、一匹と確実に殲滅していく。
遠くで悲鳴が聞こえる。ワイルドハントに襲われたか。走って向かうと信じられない光景があった。
ファルカが商人を守って戦っていた。それはいい。騎士道に則った行動なのだろう。
それよりも、なんだあの剣術は。両手剣の二刀流など聞いたことない。一撃一撃が、まるで暴風だ。見惚れそうになるが、それどころではない。どんどん湧いてくるワイルドハントを槍で突き刺す。
気に入らない伴侶だった。でも、気がつけば背中を合わせて戦っていた。
この男は強い。強い人間は好きだ。全力で手合わせをしてみたいと思うくらい、彼の剣術に酔いしれた。
ワイルドハントを殲滅し、ファルカがこちらを見る。
強い意思を持った瞳だ。ああ、なんて綺麗なのだろうか。これはもう駄目だな。
恋なのかはわからない。でも、彼に堕ちてしまった。
彼は商人からお礼を言われている。その姿は騎士そのものだ。
僕に向かって笑顔で話しかけてくる。
「助けてくれてありがとな!」
「いえ、ライトキーパーとしてお礼を言わせてください。助けていただきありがとうございます」
毒気が抜かれた僕を見て、きょとんとした顔になっている。商人が助けたお礼に酒場で奢ってくれるらしい。ありがたく同席することにした。
───────
昨夜の飲み会では、仲良くなるには先が長そうと感じていた。だが、今はどうだ。普通に仲良くなっている。
酒豪と聞いてはいたが、俺以上かもしれない。こうして話すと気が合うし、楽しい。
「驚いたな。フリンズがここまで面白いやつだとは思わなかった」
「ええ、僕もファルカさんとここまで打ち解けるとは思いませんでした」
「改めて、フリンズ、これからもよろしくな!」
手を差し出すとフリンズも手を差し出して握手をする。フリンズがにこっ、と笑う。まるで無垢な微笑みだ。気品がありながら、あんなに可愛く笑うのか。
それに、さっきの戦っている姿は、美しかった。貴族としての気品が溢れていた。
可愛くて美しい。気が合う。もしかしたら最高の伴侶を手に入れたのかもしれない。流石に、まだ友達から始めないとな。
一気に飲み干した炎水が、喉を焼いた。
出会う前に結婚した③ | Privatter+
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