七海ななみ
2026-02-22 16:07:53
2174文字
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出会う前に結婚した③

ルカキリ。二人とも出会う前に政略結婚して、荷物ぶちまけの時が初対面になる夫婦のお話。フリンズはカントです。
今回はルナⅠ~ルナⅡまでの裏話。ネタバレ含みます。はよ結婚して。してたわ。
出会う前に結婚した① | Privatter+ https://privatter.me/page/6999ae2ec80b2
出会う前に結婚した➁ | Privatter+ https://privatter.me/page/699a38e826fd2


不味いことになった。ランプに保管している結晶からアビスの力が流れ出るようになってきた。
かといって捨てることもできない。少しずつ力を制限されてきている。
どうしたものか、と思慮に耽っているとファルカの顔が浮かんだ。仮にも伴侶だ。伝えた方がいいだろう。
ファルカさんもアームスヴァルトニル湖の調査で忙しいと聞いていた。
もしかしたら、政略結婚の相手とはいえ、こちらに駆けつけてくる可能性もあるかもしれない。だが、僕は人間よりも耐性のあるフェイだ。過剰に心配する必要もない。

『僕の方は自分でなんとかします。騎士の務めを果たしてください』

手紙にさくっと状況報告だけして西風騎士に渡すよう頼む。名乗ると腰を抜かされるばかりに驚かれた。だが、確実に届けると確約してもらった。
ふと、あのサファイアの瞳を思いだし、少しだけ寂しくなる。貰った指輪を鎖に通してペンダント代わりにする。

「少しだけ、僕の事を守ってくださいね」

サファイアに口づけを送る。さて、僕も務めを果たさなければ。
この後、スーシ隊長の殺人容疑をかけられたり、ワイルドハントに襲われ、アビス汚染で苦戦していたところを旅人さんに助けていただいてついでにアビスを浄化していただいたり、月の狩人が大砲で復活しようとしてたところを阻止したりと、目まぐるしい日々を送った。
全て終わった後に手紙で報告をしたが、

『帰ってきたら覚えてろ』

と苦情が来ており、思わず苦笑した。


──────────


月の狩人の調査をしていると、コロンビーナさんが月の狩人に襲われていた。なんとか逃げ出せたが、状況は悪化していく一方だ。大量のワイルドハントに囲まれ、窮地に陥ったが、ファルカさんが助けに入ってくれたことで状況は一変した。
こちらの顔をちらりと見られる。僕の事を気にしてくれているようだ。少しだけ嬉しいが、その前にお説教が待ってそうだ。
ファルカさんが仕切るのは安心感が格段に増し、士気が一気に上昇する。
アイノさんとイネファさんが対応してる最中、声をかけられる。

「フリンズ、少しいいか」
「ええ、もちろん」

少し離れて二人きりになる。向き合うと真剣な瞳で見抜かれる。ああ、綺麗だなと見惚れていると、説教が始まった。

………なんだあの手紙は!! アビス汚染なり殺人容疑なり、俺の心臓が止まるかと思ったぞ!!」
「止まらなくてよかったですね。仮にも伴侶である貴方の負担にならなさそうでよかったです」
「あ~そうじゃない! 伴侶でなかったとしても心配するに決まってるだろう!」

伴侶でなかったとしても心配する。その言葉に少し舞い上がってしまう。とはいっても、この人は知り合いであれば皆このように心配するのだろう。伴侶であっても、僕たちは友人関係のままだ。
少しだけ癪だ。だから少しだけ勇気を出してみる事にしよう。

「お言葉ですが、ファルカさん、貴方も怪我をされていますよね?」
……………バレてたか」
「少し屈んでください」
………?」

少しだけ屈んでもらい、額の髪をかき分けてキスをする。

「早く怪我が良くなるよう、おまじないです」

仮にも伴侶なのだ。これくらいはいいだろう。
イネファさんの足音が聞こえる。二人きりの時間はおしまいだ。顔が熱いので、外の空気を吸いにいった。


────────


……………反則だろ」

堕ちた。良い友人としてやっていこうとしていたのに。
この件が終わったら、全力で口説く。そう決意して頬を叩いた。


─────────


作戦中にワイルドハントを対処していると、思わぬ助っ人が入った。ファルカさんの同僚であるアルベドさんとドゥリンさんだ。名乗ると、

「大団長の伴侶にお会いできて光栄さ」
「え、え、えええええ!!!」

ドゥリンさんは知らなかったのだろう。酷く驚かれた。表向きには隠しているので黙っててくださいね、そう言うと何度も頷かれた。

「そう言えば大団長は言ってたよ。強くて気が合ってお酒が好きで美しくて可愛い伴侶に恵まれて幸せだ、って」
…………そうですか」

同僚に何を言っているんだあの人は。顔が熱くなる。アルベドさんは、確かに可愛らしい人だね、と追撃をしてきた。
あの瞳が恋しくなり、胸元にある指輪を服の上から触れる。早く、この騒動を解決して、触れあいたい。そう考えてしまう自分が恋する乙女のようで恥ずかしくなってしまった。


─────────


「フリンズ、無事で何よりだ」
貴方、西風騎士団の中では僕の事を何て言っているのですか」
………あぁ、アルベドか。思った通りの事を伝えたつもりだが?」

ウインクをしながら告げられた言葉に、顔が熱くなる。落ち着け。ここは人の目がある。

「それと、さっきの“おまじない”、またやってくれないか?」
………外の空気を吸ってきます!」
「あれ、フリンズ? 行っちゃったな。何があったんだ?」
「さあ、俺にもわからん」

覚えていなさい、今度は口にしてやりますから!
心の準備ができたら、ですけど。


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