ファルカ伝説任務の裏話になります。ネタバレを含みますので、ご注意ください。
軽いってもんじゃないです。なんなら、後半は台詞書き起こしが大半です。ほぼストーリーをなぞっています。
あと個人的解釈を含んでいる部分がありますが、広い心でお読みいただけると幸いです。
─────────
「ちょっと凱旋の準備で忙しくなるかもしれない」
「
…………そう、ですか」
夜明かしの墓に訪れたファルカは、そう言った。
そうか、もうすぐモンドに帰ってしまうのか。
…寂しい。
「大丈夫だ、“約束”があるから、仕事をすぐに終わらせてナドクライに戻ってくる」
そういって、僕を抱き締め頭を撫でてくれる。大きな手で撫でられるのは落ち着く。
「それと、だな、またおまじないをしてくれないか? ちょっとばかし嫌な予感がして、な」
「
………いいですよ」
身を屈めてくれた。嫌な予感、か。ならこうするべきだろう。
口を重ねる。何度も重ねる。ファルカが呼吸をするタイミングで舌をねじ込む。
ファルカは驚きつつも、答えてくれた。
「は、
……っ、あ
……ふ
……っ」
熱い。静かな夜明かしの墓で、ぐちゅぐちゅという音が鳴り響く。ファルカが僕を強く抱き締める。離れたくない、そう訴えていた。
「
……っ、は
……ふ、
……ふ、んっ
……」
つう、と溢れだした唾液が流れ落ちる。そろそろ、止め時だろう。口を離し、顎に伝った唾液を舐める。
「
………おまじない、効きましたか?」
「今ほど忙しい俺を恨んだことはない」
「なら、生きて帰ってきてください」
「
………ああ」
見送ると、ファルカは僕をじっと見つめている。その姿に、胸がざわついた。
本当に、遠くにいってしまう、そんな、予感。
「なんて顔してるんだ? 大丈夫さ、俺にはおまじないと約束があるからな」
「
………ええ」
ファルカは去っていた。違和感だけが胸に残る。
何か僕にもできないか、そう探っていたら、西風騎士団からライトキーパーに協力要請がきた。幸いな事にニキータもイルーガも忙しい。僕が代表して向かうことになった。
────────
西風の砦で待機していると旅人さんに声をかけられる。
会議に参加することに驚かれたが、事情を説明すると納得してもらえた。
だが、少し離れた所で話をしたいと言われ、着いていく。
「あのさ、西風騎士団の代理団長から聞いたんだけど
………ファルカと結婚してるって、本当か?」
「
………ええ」
「本当だったのかよ!!」
「ライトキーパーではニキータしか知らないので、内密にお願いいたします」
「おお、わかったぞ
…」
それと、代理団長がお前の人柄を気にしてたから、いいやつだと言っといたぜ!
親指を突き立ててパイモンさんは言っていた。
確かに顔も合わせず政略結婚してたから不安にもなるだろう。旅人さんが保証してくれたなら印象はよくなっただろう。
感謝しつつ、会議が開催されることになり、同席する。
ファルカと目が合う。微かに驚いている。僕が来るとは思ってなかったのだろうか。
だが、すぐに元に戻り、大団長として会議が始まった。
───────
ファルカの事を知ったつもりではいたが、そうでなかったと思い知る。遠征の目的も、魔神のことも、ナドクライの土地を案じていることも、なにもかも。
わかっているのだ。彼の立場が話すことができなかったことを。
手を強く握りしめる。今まで知らなかった自分が恥ずかしい。助けになれなかった自分が悔しくてたまらない。
そして、魂の回収に同行しても、役に立てないのも、わかっている。ライトキーパーとして、成すべき事を成さねばならない。
なら、せめて、これだけでも。
旅人さんに声をかける。
「ファルカさんのこと、お願いいたします」
「
………うん」
こんな事しかできない自分が、虚しい。
───────────
僕に出来ることは、ファルカさんの魂の回収に弊害が起きぬよう、ワイルドハントを足止めすること。
やつらも最後の魂の回収に全力で止めようとしている。
怒りを殺し、冷静に狩り尽くす。怒りに身を委ねたらどれだけ楽になるだろう。だが、ファルカさんのためにも冷静でいなければならない。
空気が震えるような低い轟音が聞こえる。上空からだ。
上空を見ると、ドラゴンが羽ばたいていた。
「フリンズー!! 掴まって!」
「旅人さん?!」
咄嗟の声に手を伸ばすと、僕の身体は上空へ投げ出された。
ドラゴンの上には、旅人さんとパイモンさん、それに見慣れぬ少年がいる。格好からして吟遊詩人だろうか。
「君がファルカの伴侶だね。ファルカを助けるために力を貸してほしいんだ」
その言葉に、何も考えず、二つ返事をした。
─────────
「悪いけど状況説明している時間はないから結論だけ言うね。ファルカは地脈に溶け込もうとしている」
「
………っ!!」
「もちろん、ファルカも想定済みの出来事さ。救出策も考えてある。そのためには、想いを込めた糸が必要なんだ。ほら、旅人。ファルカから預かっているものがあるでしょ?」
「後で使うことになるから、って渡されたこれ?」
旅人さんは大きな封筒を持っていた。開けると手紙がたくさん入っている。
…どれも見覚えがある。伴侶になってすぐに、文通してた時に僕が書いた手紙だ。
「
…詩と手紙は人がはじめて文字で想いを託すのに使ったものなんだよ。たくさんの愛を込めたんだね」
「あれ、手紙じゃないものがある。
…これは、写真?」
旅人さんが取り出した写真は、やけに草臥れていた。
旅人さんが僕に写真を渡す。写真に写り慣れていない仏頂面の僕と、笑っているファルカさんが写っていた。
何度も指でなぞったのだろう。光沢を失い、鈍い質感を帯びている。
「これって祈月の夜に撮った時のやつだよな? やけにボロボロだぞ」
「パイモン、それだけ愛しい伴侶の顔を何度も見たってことなんだよ。これは手紙でないけど、たくさん想いが込められてるね」
ああ、本当に、貴方って人は。
目が熱くなるが頭を降る。まだ泣くときではない。
首の後ろに手を回し、鎖を外す。写真と、取り出したサファイアの指輪を旅人さんに渡す。
「旅人さん、これを」
「これは?」
「僕のおまもり、です」
そう言うと、旅人さんは受け取ってくれた。旅人さんはたくさんの手紙と、写真と、指輪を抱き締める。
「全部届けてあげてね。 ───『風を捕まえる異邦人』」
─────────
「貴様も、私も負けたのだ。残念ながら、私にも貴様を救うすべはないぞ。
…北風とともに、その魂が安らかに眠れることを祈ろう
…孤独なる遠征者よ」
「
……はは、孤独、か
…」
かつての俺なら、受け入れていたかもしれない。
「すまないな。お前と一緒に地脈の底で最期を迎えるのも、悪くない結末だと思いもしたが
…
かつてのローランドとは違ってよ、外で美味い酒と、ダチと、愛する伴侶が待ってんだ。だから
…」
でも、今の俺には、帰りを待ってる人がたくさんいるんだ。
モンドで待っている仲間の顔が浮かぶ。
そして、愛しい伴侶が、俺との“約束”を待っている。
「───諦めるつもりなんざ、さらさらないぜ!」
「やっほー、君に届け物だよ!」
たくさんの手紙が降り注ぐ。よかった、みんな返事を書いてくれた。
手元に写真が落ちてくる。掴むと、大事なおまもりだった。
もう一つ、小さな物が落ちてきた。
…これは、指輪?
サファイアの宝石が輝く指輪には見覚えがある。文通してた時に、贈り物の一つくらいしないとな、そう思い、贈った骨董品だ。
俺の記憶では綺麗なサファイアの指輪だった。手入れはされているが、小さい傷が目立つ。よく見ると、指輪の内側に傷が多い。
…ああ、これはおまもりになっていたんだな。
早く帰りたい。愛しい伴侶にキスをしたい。
たくさんの、俺を呼ぶ声がする。みんなが、俺を呼んでいる。
『ファルカさん』
愛しい声が、聞こえる。
想いが光になり、糸となる。大切に、離さないように、握りしめる。
「想いで貴様を見つけ、しかも同化を解くとは
…。絆を求め、他者の助けを待つ
…。騎士の正しい在り方ではない。
アビスはもはや私の存在を許さぬようだ。だが、不当な死を遂げた亡霊たちが貴様の帰還を阻むだろう。もし己が道を信じるのなら、彼らを解放し血染めの凱旋を目指せ。
───『最強』の北風騎士 ファルカ」
ワイルドハントが沸いてくる。だが負ける気はしない。俺は一人ではない!
「『遠征』の最後は作戦なんてなしに、血路を切り開けってわけか
…。望むところだ!」
───────
想いの力というやつだろうか。たくさんの声が聞こえる。
『誠実こそ騎士の美徳───約束通り、凱旋してください!』
『「お前は一人じゃない」
…ふっ、その言葉。そっくりそのまま返そう』
『私に任せてください!』
『乾杯の酒は冷やしてあるぜ!』
『こんなところで倒れないでよ、ファルカ!』
『こっちに飛んで! 大団長!』
『翼を広げよう、新しい朝へ向かって』
『ルピカ、運命の、選択!』
『早く、帰ってきてください。愛しています、ファルカ』
「ああ、早く帰るさ! 俺も愛している、キリル!」
蒼い灯りが照らしている。まるで俺を導くかのように。
「これで、最後だ!!」
───────
どれだけ進み続けただろうか。もう、身体は限界に近い。足と剣を引きずりながら歩く。
膝をつくと、アンドリアスがいた。
『
…前へ歩き続けろ。振り返る必要などない』
そうだ、俺は立ち止まってる訳にはいかないんだ。立ち上がり、歩き続ける。
『ファルカ、オレ、名前の意味
…わかった』
『
…みんなに迷惑かけたんだから、戻ったらちゃんと礼を言いなさいよ』
『ふっ、報告したいことはいろいろあるんだが
…まあ、帰ってきただけで十分だ』
『騎士団に戻るつもりはない
…自力でなんとかしてくれ』
みんなの姿が浮かんでは消える。
ジンを筆頭に西風騎士の皆が敬礼をする。
『
…大団長、皆であなたを待っています』
その言葉が嬉しくなり、俺も敬意を持って敬礼をする。
風が吹き、振り返ると剣が刺さっている。
…ここにいたのか。
「まあまあ『大団長』をやれてるだろ?
…その沈黙、肯定ってことでいいな」
酒を剣に振りかける。久しぶりの酒を飲んでほしい。
「かつてお前らが命を掛けて守り抜いたものは
…今もちゃんと残ってる。
ああ
…騎士団も、モンドも
…そして騎士の誓いも、俺がしっかり守っていくさ。だから
…あの手紙は、俺が代わりに届けておく」
不思議と力が沸いてくる。歩き続けていると、黒剣が地面に刺さっていた。
跪き、エレンドリンの手紙を置く。
「
…お前は『あいつ』の影だが、時間があるなら代わりに読んでやってくれないか?
───ルースタンもエレンドリンも、お前のこと、忘れちゃいなかったぞ」
話したいことは話せた。たくさん歩いた。そろそろ、終着点だろう。
「はぁ
…今回は、本当に遠くまで来ちまったな」
剣を突き刺し、剣を背もたれにして座り込む。
隣に、愛しい気配がする。俺の隣に座ってくれているのか。
肩を預ける。早く、会いたい。
『そろそろ、帰ってきてください。おまじない、切れているのではないですか?』
「ああ、飛びっきりのおまじないをかけてくれ」
「あとは───風の導くままに」
────────
風が、心地よい。
ああ、帰ってきてこれたんだな。
目の前には仲間達がいた。
「よう
…久しぶりだな、お前ら。
…また会えて、本当によかった」
栄誉騎士が俺の剣を渡してくる。
「おかえり ────大団長」
「
…ああ、ただいま」
剣を受け取る。仲間達の顔を見ると、嬉しそうに笑っていた。
少し離れた位置に、愛しき伴侶がこちらを見ている。
「
………キリル」
俺の声に、仲間達がキリルの方を見る。
キリルは静かに近づいてきた。
「
………ファルカ、さん」
「
………その、いろいろ話せなくて、悪かった
…」
話したい気持ちはあった。でも、政略結婚の背景や、万が一阻止をされた時の事を考えて、話さないことにした。
喧嘩に、なるだろう。そう思って顔をあげると、キリルは泣いていた。
「
………キ、キリル?」
「
………話したいことは、たくさん、ありましたが、もう、いいんです」
キリルに抱きつかれる。俺の心臓に耳を当てている。キリルは、嗚咽混じりに泣き出した。
「
……あなたが、ぶじで
……ほんとうに、ほんとうによかった
……っ」
その言葉に耐えられなくなり、強く抱き締める。
愛しい、なんて愛しいのだ。
…帰ってこれて、本当に、よかった。
足音が遠ざかっていく。皆、二人きりにしてくれたようだ。
「
………キリル、ただいま」
「
………おかえり、なさい」
唇を合わせる。新たなおまじないはしょっぱかった。
優しい風が吹き、俺たちを祝福してくれた。
出会う前に結婚した⑦※⚔️伝説任務微ネタバレ有り | Privatter+
https://privatter.me/page/69a80d3627ae0
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