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燈 ともしび
2026-02-15 22:13:05
13281文字
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ぎゆさね【空っぽの大丈夫】
独自解釈を含むオメガバです。現役軸。
リクエストでいただいたお題だったのですが、楽しくて連載になってしまいました。
この度無事に完結したのでまとめます。
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-第二夜-
ああ、頭がふわふわする。苦しい訳じゃなくて、でも言葉にするのが今は難しい。
「呼べよ、今すぐ」
そう啖呵を切ったら胡蝶はしばらく俺の目を見つめて、でも引く気配がないのを確認すると大きなため息を吐いた。それは癇癪を起こした小さな子どもを見る母親の顔に似ていた気がする。
実際にその時の俺は『癇癪を起こした小さな子ども』そのものでしかなかった。
「本当に良いんですね」
最後にもう一度確認して、俺が微かに頷いたのを見ると胡蝶は部屋から出て行った。どこに行ったのか。多分、そのアルファーとやらを呼びに行ったのだろう。そう願ったのは俺だから。
猫の発情期は見たことがある。甘い、普段とは違う声でミャーミャーと鳴いていた。ならばオメガの発情期もあんな感じになるのか。俺もミャーミャーとでも鳴くのか。馬鹿らしい。
胡蝶が出ていくと徐々に思考が回らなくなってきて身体も熱くなってきた。
もう誰でも良い。早く。どうせ自分の身体に大層な価値など無いのだ。俺は柱として鬼を殲滅出来ればそれで。
「不死川さん」
どのくらい経ったのか。不意に胡蝶に名前を呼ばれた。
「お望み通りアルファーの方を呼んでおきましたよ。別棟の部屋へ行ってください。そちらにお相手が来ますから」
淡々とされる説明に適当に返事をして、言われるがままにその後をついて行く。
身体が重い。熱い。無意識のうちに下半身へ手が伸びそうになってそのまま自分の頬を叩いた。胡蝶の前で流石にそれは駄目だろう。それくらいの理性はまだ残っていたらしい。そして、胡蝶はアルファーでは無いんだなとも思った。もし胡蝶がアルファーならこの理性すら焼き切れていただろうから。
普段ならすぐに着くであろう距離の別棟まで歩くと人払いをされているのか棟自体が静まり返っている。まァ確かにこれからすることを考えたらそうか。そんなことをぼーっと思い、更に言われるがままに部屋の真ん中に敷かれた布団の上へと進んだ。
「少ししたらお相手のアルファーの方が来ます。本当に良いんですね?」
これは最後の忠告。胡蝶の良心。でも俺は無作法者なので頷くことで台無しにした。すると胡蝶は懐から何か紙の包みを取り出すと俺の前に置く。
「あまり効果は無いかもしれません。けれど気休め程度にはなるかと」
そう言って白い紙に包まれた避妊薬を置いて行った。行為後に飲めと。俺は回らない頭で受け取り、胡蝶が静かに出ていくのを見送る。
出入り口の障子が閉まると辺り一面が暗くなった。己の手のひらくらいしか見えない。
相手は柱の誰かなんだったか。誰だ。伊黒と甘露寺でないと良いとは思った。それ以外ならもうどうでも、誰でも良かった。ただ、俺の身体は性の対象になるような身体ではない。傷だらけだし女のような柔らかな感触もない。それなのにアルファーってだけで俺のことを抱かなくてはいけないなんて可哀想だなと思う。
ぽふ。布団に身体を投げ出す。熱に浮かされてまた下半身へ手が伸びかけたが、今ここに相手が入ってきたら気まずくなるなと、まだ理性が残っていることに驚いた。いや、そんなのこれからするのはもっとすごいことだろうに気にしなくて良いのか?
あ、もう駄目だ。そろそろ理性も切れる。あのミャーミャーと鳴く発情期の猫のように獣になってしまいそうだった。
そこへ障子が静かに開く。やっとお相手のアルファー様が俺に情けをかけに来てくれたらしい。有難いこった。涙が出るわァ。
相変わらず辺りは真っ暗だし、熱のせいかいつものように気配が辿れないから誰が来たのかは分からない。ただ、障子が空いた時に見えた影は男のものだったから甘露寺ではなくて良かったと安堵した。あと身長的に俺より低過ぎる感じでもない。なら伊黒でもないのだろう。
なら、良い。
その二人でないのなら、どうでも。
手を目元にやって、更に目を閉じる。相手の姿は見えなくて良い。伊黒と甘露寺ではないのなら相手が誰かも知りたくない。だからこの熱を治めてくれるのなら早くしろ。
衣擦れの音と、畳の上を歩く音。
そして、布団の上へと気配が動いて。
自分の上に誰かが多い被ってきたのが分かった。威圧感がない。なら、体格の大きい悲鳴嶼さんでも宇髄でもないのだろう。ああ、時透も駄目だったな。子どもじゃねェか。まァ、時透は胡蝶が流石に止めるだろう。
煉獄か、後は
……
。どちらでも良い。早く。
「不死川」
覆い被さってきた相手が耳の近くで俺の名前を呼ぶ。バカデカい声でもない。聞き覚えしかない。
「俺で不服かもしれないが
……
不死川の望みだと言うので来ている」
ああ、望んだわ。誰でも良いってなァ。だからテメエでも良いんだよ。
「とみおか」
掠れた声で名前を呼べば、相手がたじろぐ気配がした。今更なんだよ。ばか。俺はもう覚悟決めてんだからさっさとやれ。
一応、俺はオメガだから抱かれる側なんだったっけかァ。くだらねぇ。
ぐいっと、冨岡の頭の後ろに両腕を回して引き寄せた。
「冨岡ァ、俺で欲情出来んのか?」
「
……
出来る」
「なら上等だァ、さっさとそれ突っ込んでこの熱をどうにかしてくれや」
膝で冨岡の下半身辺りを弄ると硬いものが触れる。それなら良い。
「不死川」
冨岡は小さく息を飲んだ後に、何か言おうとした。でもそんなの俺には必要ないし関係もないので聞かない。聞こえない。
迷うように冨岡の手が俺の胸元を彷徨って。でもすぐに覚悟を決めたように俺の羽織を脱がせた。
そうだ、それで良い。
「しなずがわ」
す、と何か。名前の後に言っていたが、うるさいと思ってその唇を自分の唇で塞いだ。
ここからはもう言葉なんて必要ない。
そう思った。
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