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浅葱
2026-02-14 23:08:42
8763文字
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26.2.21_夢チェリ公開分過去SSログ
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【フォンダン】
「腕を回すのなら肩か頭にしてくださいませ」
日曜日の逢瀬。穏やかな昼下がり。特別な理由があるわけではなく、ただ触れたいから新橋さんを正面から抱き寄せた。すると返ってきたのは先の言葉である。
「撫でてもいいのですか?」
「許可すると言っているのです。相変わらず鈍臭いお方で」
一度、髪に指を通しながら海鼠のような触り心地だと伝えてからなかなか触れさせてもらえない(ので、新橋さんの溶け切った時に堪能させてもらっている)が、どうやら今日は機嫌が良いらしい。それとも、こちらを許すほど他に何かやめてほしいことがあるか。
折角の機会を無駄にする理由もない。そっと右手を耳近くの髪に添えれば、新橋さんの方から頭を寄せてきた。そのまま撫でてもされるがままにしている。どうやら、普段避けられるのは本気の拒絶ではなく、単なる照れ隠しのようだった。今後は、少し押し気味でねだってみてもいいだろうか。
しかしなぜ、突然許しが出たのだろう。指に絡まる感触を堪能しながら、疑問は再び戻ってきた。新橋さんから声がかかる直前、自分の手はどこにあったか。なぜ候補が肩と頭、両方とも上半身であったのか
―
「新橋さん」
「どうされました?」
もしかして、新橋さんは。
「腰を怪我、もしくは痛めているんですか?」
「なっ
……
! なぜそうなるのです!?」
劇作家である新橋さんは仕事の大部分を座って机に向かい、物語を描いている。長時間の座り仕事というのはどうしても腰を痛めがちだ。長めの調査報告をまとめる時、集中していると、終わった時に腰が引き攣ったような感覚に襲われる。
自分でこれなのだから、その何倍も物を書く新橋さんが腰を痛めることがあったとしても不思議ではない。反応から見るに的外れな推理ではないようだが、本人が認めない以上強くは言えない。しかし、本当に怪我をしているのだとしたら今するべきは抱擁ではなく彼の腰を労ることなのではないか。
「書き仕事の最中に痛めた、というわけではなく?」
「そんなヘマ致しませんよ今更」
「本当に怪我ではないんですね」
「そうと言っております。何の心配もございません。腰は無事ですので触らないでいただけますか」
やはり、腰に触れられたくない何かがある。そんな口ぶりだ。
「一度確かめさせてください。無事なら問題ないかと」
「かっ! 勝手に何を
……
ふみゃ!?」
「
……
」
「
…………
」
短い悲鳴の後に広がったのは沈黙。そしてそれを破ったのは、
「今のは忘れてください忘れられないのなら忘れさせて差しあげますッ!」
息継ぎを忘れた新橋さんの声と、硝子の灰皿を持ち上げる音だった。
「理由はこれでしたか」
「ぃ、いい加減に
……
したまえっ
…
よ
……
」
身動きの取れないように腕の力を強め新橋さんの衝動を抑え込んでから、腰を撫でた。始めはビクリと身体を震わせていたが、すぐに力が抜けていく様子を見て、全てを理解した。
「その、そこを撫でられるとですね
……
そ、そういった気分に
……
なってしまいます
……
ので
……
って! わかったのならそろそろやめていただけますか!?」
「なっていいじゃないですか。そういう気分に。ここはあなたの家ですから」
「
…………
馬鹿」
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