浅葱
2026-02-14 23:08:42
8763文字
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26.2.21_夢チェリ公開分過去SSログ


【名前について】


「気を悪くされたらすみません、新橋さんはご自身の名前についてどうお思いですか」
 テーブルに置かれた書類を目にして、自分は屋敷の主人に尋ねた。
……最初に謝罪が入るのならわざわざきかなければ良いものを。いきなりどうされたのです?」
「いえ、新橋さんのお名前、『冥』の字は名前にするにはあまり向かない字だと思いまして」
「そんなことですか。気にしておりませんよ別に。字の持つ意味を知る前からこの名なのです。後から知ったところでどうこうなるものでもありますまい」
 名前について、子ども自身に選ぶ権利はない。与えられた名で生きていくしかない。
「むしろ、字で書かれる方がありがたいのですよ。区別がつきますから」
 双子の兄と弟で同じ音の名前を与えられた新橋さん。"メイ"と呼ばれ振り返っても呼ばれていたのは兄の方、ということはとても指で数え切れないほどだったはずだ。その時の虚しさ、悔しさは当人にしかわからないものだ。
「では、自分は今後も冥さんと呼ばないほうがいいですか」
「そこはお好きにどうぞ」
 彼の辛い記憶を呼び起こすのなら避けたほうがいいか、そういった提案は意外にも躱された。
「いいのですか」
「ええ。不便だったのは幼少期と大学の頃だけですので。貴様がその音で呼ぶときは俺だけでしょう?」
「まあ、そうですが」
「それに、思い出したとしてもそれはそれで。俺が自分の罪に苦しんでも、その時は大崎様が受け止めてくださるのでしょう?」


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