ふじしろ
2026-01-31 11:20:01
6833文字
Public アル7
 

カオイズ小話

セマバンCP1で展示した1000〜2000文字程度の短いコイバナ
1ページ目はもくじです。
読みたい話を選んでご覧ください。



【私の幸福(ピカ様ゆきマリ)】


「首領」
「首領」
部屋のデスクに一人でいるといつ入ってきたのか摩利央とマリオがじゃれついてきた。
床に膝を付き幼子のようにじゃれる二人を見て思わず溜め息を漏らす。
「何か用か」
彼らには部屋に入ることを許しているが一応聞いてみる。
「首領に会いに」
「大切な用事です」
悪びれる様子もなく、至極真面目な顔で二人は答えた。
財閥の血筋ゆえ色々と抑制されて育ったのだろうか、摩利央は私とマリオの三人だけでいる時にはこんな風に甘えたように寄ってくる。
そしてクローンなのだからそれはマリオも同じだった。
だが大きな子供二人を両腕に抱えるのは思ったより悪い気はしなかった。
家庭を持ち、子供を授かっていたらこんなこともあったのかもしれない。
「私はお前たちの保護者ではないぞ」
二人の様子に苦笑交じりに呟くと、二人は同じ顔で頬を膨らませた。
「そんな風に思ったことはありません」
摩利央が答えるとマリオもそうだと言わんばかりに私の顔を見上げる。
「そうか。それは悪かった」
私の言葉に満足したのか、答えると二人は再びじゃれついてきた。
しかし、もしあの世と言うものがあるならば、私と対峙したあの男はこの様子をどんな気持ちで眺めているのだろう。
カオスイズムを潰すために奔走しただろうに皮肉にも身内から協力者が出て、こうして私と近しい関係になっている。
摩利央を憐れに思うのか、身内から出た錆を恥ずかしく思うのか、私には想像もつかなかった。
端的に言ってしまえば私にはそれを理解することが難しい。
社会で問題なく生活を送るためにあらかたその仕組みは知ってはいるものの、理性的や倫理的な思考についてを理解することが出来なかった。
それは感情や脳機能の欠損なのかもしれないが、幸い私には高い知能が備わっていた。
だから親にさえそのことに気が付かせることなく生活を送っていた。
だからこそ盟友同士、仮面を外したあの日に私の中で何かが弾けたのは必然だったのかもしれない。
「首領?」
黙ってしまった私を摩利央とマリオは両脇から見上げてくる。
不思議なもので愛情を受け取るということは少なからず愛情を返すことなのかもしれない。
ただ最初はコスモス財閥の血筋ということで目を掛けていたが、摩利央の盲目的な私への感情は心の固まっていた何かを溶かした。
摩利央のそれはより強い番を求める生存本能から来るものなのか、それともいわゆる人間らしい感情によるものなのかは私にはよく分からない。
ただ今は摩利央もマリオも二人ともそれぞれに愛おしく、こうして見つめられれば放っておくことが出来ない。
自身にそんな感情が眠っていたことにはきっと私が一番驚いているのだろう。
「あっちへ行ってくつろぐか?」
二人をそれぞれに眺めベッドの方を指差せば二人の顔が途端に明るくなる。
「喜んで」
「是非」
二人は嬉しそうに立ち上がり私の腕を引く。

今の私はお前から見ても幸福そのものに見えないか。

それが私の答えだった。