─────────
さて、私は今、戦闘用の部隊編成と演練用の部隊編成を考えている。
「うーん。演練もお相手さんめちゃつよだからなあ
…うちも最強部隊作っておかないと
…」
極開花があってからとんでもないレベルのお相手さんと当たることがある。
いやはや、恐ろしや。
「ねぇちょう、」
…いないんだった。
つい癖で長義に話しかけてしまう。
「嫌な呼び出しじゃなければいいな
…」
長義はニ、三日は戻ってこれないだろうと言っていた。
実際男士と離れるのって、修行のときの四日くらいだから、他の理由でいないのってかなり珍しいのではないだろうか
…。
え、てか確かに元政府刀だけどさ?
呼び出しされるようなことしないし?
え
…?てか呼び出し
…だったか?
長義は私になんて言ってた?政府に行ってくる、とだけ言っていたような
…?
あれ、呼び出しって私が勝手に付け足しただけか?
えごめん長義、呼び出しではないのならうちの長義が何か政府に用があるのか
…?
なんの用が
……??
「
…うーん???」
やっぱり脳内はハテナだらけだ。
その思考でいっぱいになっていると、
「どうした?主」
まるで見えてるのかと言うように目の前で手を振られて、ハテナが一緒に払われていく。
クリアになった視界で捉えたのは、
「
…まんばちゃん」
「あぁ」
長義の色違い(失礼)の刀だった。
「なんで長義は政府に行ったのかなぁと思って」
思ってたことをそのまま口にすると、
「
…あぁ、そうだな」
特に抑揚無く告げられた同意。
うん、やっぱり
「まんばちゃんは知ってるんだね。でも口止めされてるのかな」
「何故、そう思う」
「なんとなく。
大丈夫、別に責めたり聞いたりしないから。それに、」
「
…それに?」
「まんばちゃんが知ってるのであれば、悪い理由とか、心配するものじゃないんだよね、きっと」
だから大丈夫、と笑うと、
「
…あぁ。あいつのことを信じてやってくれ」
優しく微笑まれた。
「やだなぁ。信じてるよ、ずっと」
「あぁ」
「そんな長義が信じてるまんばちゃんのことも、もちろん信じてるよ」
私にとっては当然の会話。
「あぁ、ありがとう」
それが、彼にとっても当然の会話になって、私は嬉しいし、多分、長義も嬉しいのだろう。
それから二日、万屋に行くときや演練に向かうときにまんばちゃんにお伴をお願いした。
特にいつもは誰って決まっているわけではないんだけど、長義のいない間はなるべくまんばちゃんにお願いしたし、まんばちゃんも「俺が行く」と必ず付き合ってくれた。
行った先で何があったとかそういうこともなく、平穏無事に過ごしたのだが、三日目に万屋に行ったときだった。
あれ、
「まんばちゃん、見てあれ」
「ん?」
そもそも万屋に生花があること自体珍しいのだが、
「青い薔薇だよ、珍しいね」
その色に惹かれた私が薔薇に触れようとしたとき、
「っ、主、!!」
その手を掴まれて脇腹を抱かれ止められた。
「
…っ、??」
そのまま動揺の視線を送ると、
「
…悪い、だがあれはだめだ。また寝込むぞ」
そしてクルッと方向転換して万屋を出る。
あぁ、そうか。
「
…ごめん」
「いや」
意味が分かり一言謝った私に、
「止められなかったら本歌に斬られる」
と、何の冗談でもなくマジトーンが返ってきた。
いえはい、しかしながら、私もそう思います
…本当にありがとうまんばちゃん。
…という、三日目のプチ事件(?)はあったが、それもまんばちゃんのおかげで結局は何もなかった。
「ただいまー」
その万屋からの帰り、門をくぐった私とまんばちゃんを出迎えたのは、
「お帰り。
まさか、俺がこの台詞を言うとはね」
「
…えっ、」
多少呆れが入った声色で振り返ったのは、政府から戻った長義だった。
「おかえり長義
…」
驚きながらも帰還を喜んだ私に、
「ただいま」
微笑んでふわっと頭を撫でていった長義の右手はそのまま腰を引き、
「!?」
「
…お疲れ偽物くん。君の役目はここまでだよ」
隣にいたまんばちゃんに解雇通知を渡していた。
ちなみに抱きしめられていたので表情は見ていないが、声がマジだった。
「
…あぁ、役目を果たせたようで良かった」
「良かった
…?
…あぁ確かに、役目は果たせたようだが」
「なんだ」
「
…はぁ。いや、いい」
「なんだ」
「いい。
…分かってはいたし、これは仕方ない」
「仕方ない
…?」
「とにかくいい。主、部屋に行くよ」
ひょい、と抱き上げられる体。
「へっ!?ちょっ、歩く!!歩けるよ!?ねぇ!!ちょぉおおぎぃいいい」
私の絶叫は廊下に木霊した。
…で。
「何でずっとくっついてるの
…?」
あぐらをかく長義の足の間に体操座りで収まる私の肩に顔を埋める長義に聞くと。
「消してるんだよ」
「
…なにを?」
「いろいろ」
「いろいろ?」
「
…君、偽物くんといるとき何があった?」
「
…なにがって?」
「あっただろう」
「あったっていうか、何もなかったに等しいけど
…」
「あったじゃないか」
ついさっきのことを説明した。これ以外は本当に何もないしこれも何もなかったけど。
「まんばちゃんのおかげで何もなかったよ」
「
…あぁ、そうだね」
…うーん、そう思ってないなこれ。
結局その日はそうやって、長義が納得するまでくっつかれていた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.