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2026-01-05 18:21:48
12058文字
Public 高諸
 

高諸 何度でも、愛を囁く

完結しました!

怪我から目が覚めた高坂さんは3ヶ月分の記憶が無くなってた。そんなお話です。

尊ちゃん視点、高さん視点が、入り乱れてます。



尊奈門が熱を出した。

熱で頬を真っ赤に染めて、呼吸をするのも苦しそうな様子。そんな姿を見ているだけで、心はギュッと締め付けられるように痛んだ。
ただの熱でこれなのに、目を覚ますかもわからない私の看病をしていた時、こいつはどんな気持ちだったのだろうか。
その時のこいつの気持ちを思うと、更に胸が痛んだ。

胸の痛みを誤魔化すように、汗が浮かぶ額に濡らした手拭いを乗せた。冷たくて気持ちがいいのか苦しそうだった寝顔が、少しだけ和らいだ。
ひっそりと胸を撫でおろすと、部屋の隅に置かれた包みが目に入った。

──昼間のあれは、よくなかった。
今日は、久々に尊奈門と休みが重なった。だからあいつと約束していた”らしい”団子屋に、誘おうと思っていた。……秋限定の栗饅頭がどうのこうのと、言っていたから。
だけど小頭と話している間に姿を消していたあいつは、あろうことか一人でその団子屋に行っていた。

てっきりあいつも私と行くのを楽しみにしていたと思っていた。だから動揺してしまった。その動揺が言葉となってあいつを追い詰めていた。
そのせいで、あいつも売り言葉に買い言葉で、言いたくないことを言ってしまったのだろう。

このまま無理に話し合っても、互いを傷つけるだけ。
だから互いに頭を冷やす時間も必要だろうと、去ったあいつを無理に追わなかった。
──そんなこと気にせず、引き留めるべきだった、が。

あいつが帰ってきたら、ちゃんと話そうと思っていた。昼間のことを謝ろうと。

──いや、それだけじゃない。
きっと忘れてしまった数ヶ月の間に、私は何か大事なことをあいつと約束している。
それが思い出せないから、ここ数日、私はずっとあいつを悲しませてる。だからそれをあいつから聞き出して、思い出せなくても、その"約束"は守りたいと思っていた。

日が暮れるまで尊奈門が帰ってこなかったら、探しに行こう。
そんなことを考えながら、あいつが帰ってくるのを部屋で待っていた。
だが、日が暮れる時間より早く、厚い雲で空が暗くなるとすぐに大粒の雨が降って来た。

──尊奈門は、大丈夫だろうか

一瞬、嫌な予感が背を冷やしたが、あいつも子どもじゃない。さすがに雨風がしのげる場所に避難しているだろうと踏んで、雨が小降りになるのを待った。

『尊奈門、拾ったんだけど』

だからまさか、ずぶ濡れのアイツを組頭が抱えて連れ帰ってくるなんて思ってもいなかった。
身体の芯まで冷え切って、ぶるぶると震える尊奈門を受け取ると、すぐに風呂に入れた。
が、案の定、布団に入れた途端に熱を出した。医務室で休ませるかと聞かれたが、こいつがこうなった原因は自分にある。だから看病を引き受けた。
もう、かれこれ数刻はこいつの寝顔を眺めながら、ぬるくなった手拭いを取り替えている。

「う……、んぅ……
「尊奈門、起きたか?水、飲むか?」
……はい、」

背中を支えて身体を起こして、水筒を差し出せはゆっくりと水を飲み始めた。
良かった。水をしっかり飲む姿に安堵した。この様子なら、今夜いっぱいたくさん汗をかけば熱はすぐに引きそうだ。

…………、こうさかさん……、ごめ……さ、い」
「謝らなくていい。それが飲み終わったなら、大人しく寝ていろ」
「そうじゃなくて、昼間」
……あれも私が悪かっただろう」

汗で濡れた髪を撫でれば、尊奈門はへにゃりと笑った。

その笑顔に胸が跳ねるのを感じた。
それを悟られないよう、水を飲み終えた尊奈門を再び布団に寝かせる。母親が子供にするように、トントンと身体を優しく叩いてやれば、熱で体力を奪われているあいつはあっという間に再び眠りについた。

規則正しい寝息が聞こえて、手を止める。
目を閉じれば、鮮明に浮かぶ、先ほどの尊奈門の笑顔。

あぁ、そうだ。
私はこの顔を見たかったんだ。夢の中で見た、幸せそうな愛おしい笑顔。
それを見れるためなら、私は──