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水井白羽
2025-11-15 22:38:39
46693文字
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竜人カルロの苦心
2025/03/05から2025/07/21まで深夜に投げていた文章の全文
見切り発車すぎて収拾がつかなくなったので仕切り直したいところ。
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「チヒロ・マニョリアン」性別:男性、年齢:26歳、種族:アンテルナ族、職業:神学者、出身:ラテブラの地近郊の街。
女神正教の神官の両親の元に生まれ、教会近くで育った彼は幼い頃から神官や巫達と接することが多く、彼らが説く女神の慈愛を純粋に信じていた。特にあるフェール族の巫の女性と仲良くなった。彼女はいろんなことをチヒロに教えてくれたもので、チヒロはよくお姉さんと慕った。幼いながら恋心みたいなものも湧いた程だ。
例の巫は女神を非常に慈悲深いお方と信じていたが、しばしば何故か教会と対立しているらしかった。理由は当時のチヒロには分からなかった。
だがフェール族の巫が行方不明になったかと思えば、ある日、チヒロの目の前で無惨な姿になっていた。ショックのあまり具体的な記憶は残っていないが、確かに彼のトラウマになった。両親は「女神様の思し召しを疑ったから罰が降ったのだ」と言い聞かせてきたが、当時のチヒロには余りにも理解出来なかった。
女神様を信じたい気持ちと疑いがぶつかる中、ひたすらに女神やこの世界の歴史の文献を読み漁り、女神正教の教会に所属するに至った。
がそこにあったのは信仰ではなく──「道具」。
政治、取引、競争、隠蔽、スケープゴート
……
女神の思し召しと言っておきながら、貴族や上級の神官の気分一つで下される「神罰」。
チヒロは絶望した。
「──
…………
え?!」
走馬灯、それが消え失せ目が覚める。学者は何がどうなったか分からず、周囲をキョロキョロ確認する。
「カルロ殿?!」
学者のそばには真っ黒焦げになり倒れるカルロ。揺すってみるものの反応はない。手に返ってくる温もりも、あの髪長男から発した光線の熱なのか、体温なのか判断できる気がしない。
「
……
」
オーギュストは冷たい目で学者を見下ろす。
「い、いきなり何するんです?!──うわあ離せ!!」
だが学者は兵士らに抱えられ、引き離されてしまう。
……
学者がどこかに連れてかれたあと、そこにきたのは倒れてるカルロとオーギュストの2人だけ。オーギュストはしゃがんでカルロの様子を伺う。
「やれやれ
……
お前ならこの程度じゃ死なんとは思ったけどサ。口減しの対象の人間を守ろうとガチャガチャやってたのはホントお前らしい。
──さて、どうすっかなぁ、この死に損ない。扉も使えない、最早何も持たない無駄に死なねえだけのお前」
「なぜ
……
?」
倒れたままのカルロのか細い声。
「お前だって知ってるだろ、このエウノヴァの戦況が悪いってのを。『弱い』人間養う余裕ないのもさ。前の大統領は『弱い』あいつらのためにこの計画を打ち立てたワケだが」
「
……
そうだね。人間達は弱い。だから僕ら竜人が、守らないと
……
」
「守るとか生温いよな。あいつらは俺たち竜人が支配して管理しないとダメだ。すぐ死ぬ、すぐ飢える、すぐ文句言う。汚染が進みまくりな前線で戦ってるのは俺らだって言うのに、安全圏にいる奴らにあだこだこき使われりゃあ
……
なぁ」
「
……
」
「だから、今の大統領はこの計画を変えたんだ。この世界の資源をガッツリ貰って、戦争に勝って、ゆくゆくは俺ら竜人に国を明け渡すのさ。この世界に放り込まれた『弱い』人間がどうなろうと知ったこっちゃないんだろ」
カルロの中で失望が支配する。オーギュストは続ける。
「ま、このことをお前に知らせなかったのは、お前なら猛烈に反対するからなんだろうな」
オーギュストは深く溜息を吐いたのだった。
カルロの口が再び動く。
「『冥土の土産』ってヤツかい
……
?」
「さあな?冥土すら行けないお前にとっちゃ何になるんだか」
最悪だ。守るべき人間達の口減し、友好な関係を築くべき異世界に対する搾取。それに加え、暴力装置たる自分達竜人が力なき人間達を支配したら、それは果たして健全な国家になるだろうか?
──目が覚めると、まず視界に入ったのは暗い天井。デジャヴ。だが、身体は固定されていないらしく、カルロはゆっくりと体を起こした。
焦げ付いたはずの身体はすっかり元に戻り、己の無駄な程の頑丈さに自嘲する。
「さてと
……
」
ドアはもちろん鍵がかかっており、出られるわけがない。
とりあえず、尼僧が持っていた本の通りツェントの丘に辿り着いたはいいが、まさかこんなことを知る事になったとは。ああもう滅茶苦茶だ。
ただ、壁は──あの拠点よりはあるが──薄いと見え、話し声が聞こえてくる。カルロはそっと壁に耳を当てた。
「今日は大統領が視察に来るってのに侵入者騒ぎとかキッツ」
「ま、あんのフラムベルトが奴らを追って外に出たんだし、それは幸いだった」
「あー」
「全く、一体全体誰が黎烏国を始めとする敵諸国にこの世界のことバラしたんだ?──」
歩きながらの会話だったのか、話し声は遠くなり、これ以上は聞き取れなかった。
エウノヴァとて、他国もこの世界に来てるのは予想外だったのだろう。
「そういえば、リディーヌがあれこれ言ってこの世界に招いた、って破座は言ってたな
……
」
そういえばリディーヌは今、一体全体何処にいるのだろう。あの城の中に幽閉されたままであれば、破座らをこの世界に招くことは出来ないはずだ。そもそも彼女に、カルロの扉の力の様な力が無い、はず
……
するとドアの鍵が開けられ、誰かが中に入ってきた。よく見るとその顔は今の大統領ではないか。
「!!!!」
なんでそんな奴が?!確かに「視察に来る」とは聞いていたが、まさかカルロが放り込まれている部屋に入るのは驚きであった。
「僕の処遇を考えるとしても、部屋間違えたんじゃないかな?」
カルロは軽口を叩いてみる。
大統領直々の尋問、奴らの聞きたいことは「黎烏国をはじめとする敵国を呼び寄せたのか否か」。といっても、どんなにカルロが「知らない」と主張してもボコボコにするのでそれ以外の目的もありそうであった。八つ当たりか?
「僕から力搾取するだけして、放置して、今度は尋問かい?」
「前大統領の亡霊たるお前には敵に情報売る動機があるからな」
「
…………
」
平行線の中、ボコボコにされてるにも関わらずカルロの口は減らない。
「
……
あいつの計画を変更したって本当かい?『竜人が支配するべき』という思想に取り憑かれてるお前らしいとは思うケド」
「
……
ああ、そうだ。あの永きに渡る戦争で如何に人間が弱く脆くどうしようもない存在だと突き付けられた。だが、Dr.ドラゴルニアが齎した竜と竜人
……
彼らはより強く、より素晴らしい存在だ。彼らが弱き人間の支配下なのはおかしいとは思わないかね?」
「どの口がいってんだか」
強い力を持つ竜人が弱い人間を支配すべき、と言いつつ、政府は強大な扉の力を持つカルロを酷使していた。その矛盾にカルロはふっとムカムカが湧いてくる。必要な犠牲だの、反乱分子なりうるだの、あれこれあちらはほざくだろうけども。
「このままでは──」
自室に戻されたカルロはポツリと溢す。
「──ロクなことにならない」
とはいえ死なない以外に何もない自分。自ら1人で戦うにも太刀打ちできる気がしない。
「『中央の主』とやらなら、こんな状況をどうするんだろうね」
デルテナ教徒である尼僧が言っていた「中央の主」。偉大な人物らしく、彼らはその登場を待っていると聞いたが、其奴ならこんな状況もどうにか出来るだろう、きっと。
「君はいい子だ。私が死んだ後も、これからもずうっと、人間に尽くしておくれ」
ふと、前の大統領の言葉がふっと脳裏に浮かぶ。今の大統領一派に暗殺された彼。「竜人は弱い人間を守る為に在る」そう考えていた人物であったが、
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