水井白羽
2025-11-15 22:38:39
46693文字
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竜人カルロの苦心

2025/03/05から2025/07/21まで深夜に投げていた文章の全文
見切り発車すぎて収拾がつかなくなったので仕切り直したいところ。


「──起きてください、起きてくださいってばカルロ殿!!」
誰かに揺り起こされ、カルロはやおら起き上がる。どうやら拘束帯は外れているらしく、上半身も四肢も自由だ。
起き上がると、どこかで見た事ある人物がいた。頭がぼーっとしたままのカルロが理解するのに時間はかかったが、どうやらあの時の学者なのは分かった。
……なにがあった?」
学者は安堵して胸を撫で下ろす。
「良かった……死んだのかと諦めかけてた所でしたよ」
「それより、おなかすいた」

カルロがヨロヨロと壁に伝うように廊下を歩く。側で学者が彼を支えている。──廊下の様子は騒然、荒らされていた。窓ガラスは割れたまま落ち、人気もまるでない。
「食べ物なんてあるのか?」
「あっち、びちくあたはず」
カルロが指差すと「倉庫」と書かれた部屋の扉があった。

幸い、倉庫内は無傷でカルロはそこにあった食料を口にする事ができた。いつぶりの食事だろうか。彼が口にするものに学者はやや怪訝そうだ。
……なんというか、硬そうで、黒くて、……犬や牛の餌でもここまで粗末なものは見た事ないが……
「僕らの食事なんてこのキューブだよ。味も栄養もみんな同じ。1つ食えばしばらく動ける。大昔の僕らの先祖は『料理』してたみたいだけどね」
カルロは硬い黒い固形のそれを噛み砕いている。ガリゴリ、その音が学者の耳に入る。ふと学者は気になり、食料の1つを齧ってみた。──頗る硬く、僅かな欠片が口に入った程度だったが、それだけでも分かる、食の楽しみを悉く削ぎ落とした味。
「これは……不味い。失敗して焦げの塊になった人参の柑橘汁煮の方がマシだ……
「よく分かんないけど、君たち的には不味いのか」

「所で」
生気を取り戻したカルロは学者に何があったかを聞く。問題はそれだ。
「何があったの?僕、ずっとあの部屋に閉じ込められてて何が何だかサッパリで」
「小生が知っている限りではありますが──」
学者は語った。デルテナ教のテントだらけになった後、暫く女神正教徒の自分達は拠点の建物内に篭っていた。だが、ある日を境に、全く見慣れぬ人たちが何処からかたくさん押し寄せ、デルテナ教のテントを教徒共々薙ぎ倒したのだという。
「あの時、恐る恐る外を見たら、血の池が出来てた……
震える学者にカルロも釣られ、寒気がした。カルロは青ざめ始める。
「『何処からともなく見慣れぬ人達」?それってまさか……
この世界に移住する人間たち、彼らの姿がカルロの脳裏に浮かぶ。その時、彼は合点がついてしまう。あの時の誰かが言った「力を無理やり引き出されてる」は恐らく、あの機械によってカルロの扉の力を無理矢理行使させる様を指してたのだろう。そうして、こじ開けた「扉」で政府は人間たちをここに呼び寄せた、ということになる。

「それからもっと事態は酷いことになったのです……その見慣れぬ奴らの、多分武装したのだろう、その一団が周囲一帯の町々を荒らし始めた……
カルロは顔を覆った。原住民に自分達が攻撃される事を恐れていたが、その逆のことが起きてしまったようだ。
学者はまだ続ける。見慣れぬ者、もとい地球人たちは略奪や鉱山の占領などやりたい放題し始め、治安がえらいことになったという。そしてある時、この拠点から地球人が来ているという噂を聞いた教会が、執行人たちを派遣して強襲し、何もかも滅茶苦茶になったのだという。
「小生は何とかあのパニシェグール(執行者)の目を掻い潜り逃げ仰せ、色々落ち着いた後、あなたのことが心配になってここに戻った次第です」
学者は宙を仰ぐ。
……ありがとう。多分これ引き起こしたの僕のせいかもしれないのに」
カルロは礼を言う。ただ、学者は何か引っかかったようで
「あなたたちの事情はさっぱり分かりませんが、まぁ……、あれ以来暫くあなたの悲鳴が小生の頭の中でガンガン響いたもので。アンテルナ族の性ですね」
学者の頭の触覚が揺れた。
カルロはふと思い出す。原住民を構成する種族の一つに、触覚が生えたアルテルナ族がいる事を。そして彼らは何かしらの超能力を持つ、と言うのが最初の偵察の時何となく耳にした事を。この学者が何かしらの超能力で、カルロが能力を強制的に使わせる為に痛めつけられた時の痛みを感じ取ったのだろうか?

突然、足音が聞こえてきた。それは1人だけではない、そこそこ10人くらいのものだ。
「ここは危険です、一先ず離れましょうカルロ殿。奴らが、教会の執行者達がここに戻ってきます」
学者はカルロの腕をぐいと引っ張り立ち上がる。
カルロと学者は取り敢えず足音立てずに、なるだけ細心の注意を払って拠点から抜けようとした。が、如何にもこうにもこの執行者たちに気付かれ、あっという間に追いかけられることになった。
「いっくら何でもっ耳良すぎじゃないかっ!」
「奴らの耳の良さ舐めてました……っ!目も鼻も効くんですよ」
「うわ」
2人は必死に逃げる。カルロはどうにか「扉」を出そうとしたが、何故かあの「扉」は出てこない。
「カルロ殿、その、扉の力とやらで逃げられないんじゃなかったっけ??!」
学者が必死に叫ぶ。カルロもこれには面を食らう。
「扉の力が使えない……?!どうして?」
カルロは一瞬考えた。思い当たることは1つしかない。
「力を使いすぎたから……?!」
単純だが、カルロはそんな気がした。散々あの部屋で無理矢理力を使わされた内に──一時的な疲労なのかは分からないが──力が弱まってとうとう使えなくなったのだろう。

「そんな!!」
学者は困り果てた顔でカルロの方を向いた。
「こうなったら奴らを撒くしか……
だが、執行者達は足も速く、何と2人の目と鼻の先まで迫っていた。
「うわあああああ!!!」
危うし、カルロと学者。どうにかなるか、いやどうにもならないから2人は執行者達に取り押さえられてしまった!執行者達の力も強く、カルロもうまく身動きが取れない。
「僕が『神罰』対象者を逃がしたからか?!お前らが僕を狙うのは?!」
カルロが叫ぶと、彼を押さえていた執行者は答える。
「ああそうだ。女神様の御言葉に従う気のない異邦人……ケダモノは女神様の御命令により死んでもらう」
「本当に君らの女神サマって物騒だなぁ!」
学者はあちゃーと頭をざっくり下げた。
「カルロ殿、それは禁句です!というかちょっと小生も腹が立った。そもそも女神様はそんなすぐ気軽に神罰下すような御方のはずがないっ!……ぐえ」
学者を押さえていた執行者が彼の手を思いっきり踏みつける。
「罪人の分際で女神様を語るな!!」


……全く、ここ最近は変なケダモノどもが略奪を繰り返すせいで、人が足りないって言うのに」
執行者の1人がふとぼやく。カルロは地球人達のことを指しているのだなとすぐ気付く。
「しかも、変なビーム出す奴とか白い火を吹く奴とかいるんだろ?戦闘班は悲惨だろうな」
別の執行者がそのぼやきにぼやきを重ねる。
「え?」
カルロは驚き執行者の顔を見上げた。「変なビーム出す奴」「白い火を吹く奴」、彼に思い当たる人物がいる。
「何でオーギュストとフラムベルトがいるんだ?!この世界にはいないはず……?」
急に知らない人の名前を挙げられたものなので、自身を押さえている執行者が話に気を取られている内に、学者はカルロの方を向き、質問を投げかける。
「ええと……カルロ殿の知り合いですか?」
……ま、そんなとこ」

すると執行者が2人の会話に気付き、もう一方にある提案をする。
「どうやら奴らの仲間らしいな。どうする?ちょっと生かして情報聞き出すか?」
「でも女神様がこいつを『殺れ』とお告げがあったからな……
執行者達は考え込む。彼らの腕の力は自然と強くなり、カルロと学者はまた地面に押さえ付けられる。
だが、その数分後、事態が一変した。──カルロは突然何かの歪みを感じ取る。それは自分がいつも「扉」を出す時と同じもの。おかしい、自分の力は失ったはず。
「えっ?!」
その扉が開かれると出てきたのは武装した兵士たち。銃口をこちらに迎え、即座に執行者達を銃弾を浴びせかけた!!たまたま伏せられていたカルロと学者はそれに当たらぬよう祈りながら、治るのを待つ。あまりの突然の出来事、彼らはそれだけしか考えられなかった。
……そして弾切れと見え銃弾が収まると、執行者の1人は倒れて動かなくなり、もう一方の姿は無くなっていた。堪らず退却したのだ。
「助かっ……てないな、こりゃ」
カルロは顔を上げるがその顔は険しいままだ。
「はあ?!!!」
学者は理解できなかった。

一難去ってまた一難、カルロの目の前にいたのは地球では敵として争った国の兵士。その1人はカルロに銃口向けたままだ。装備が一際しっかりしており、隊長格だろう。
「ほぉ、こんなところに扉竜ご本人がいたとはな」
「こっちこそ、なんで僕の扉からここに来たんだ?」
兵士たちはゲラゲラ一斉に笑い始める。完全にカルロを馬鹿にしている。
「お前知らんのか、いつも扉出してん癖に。お導きってヤツさ!ちょっと前にリディーヌとかいう奴がな、この世界にエネルギー資源がたんまりがあると言って、この『扉』を用意したのだ!好きにしていいってさ。つ〜ま〜り〜、この世界を狙ってんのはお前らの国だけじゃねえのさ」
兵士から語られる信じられない状況に、カルロは目を見開く。
「はあ?!何が何だか分かんないよ!!」
なんで自分の国も資源を狙っていることになってるんだ?元々自国の人間達を避難・移住のためにあの計画があったはずで、資源なんてそこまで重きを置いてなかったはず。それに何故、リディーヌの名が?というか、なんでリディーヌが「扉」を用意したことになってる?疑問が吹き出し、ますますカルロの顔は険しくなる。
「扉の力は僕しか使えないはず。況してや、軍や政府が敵であるお前らに扉を開放するか?」
兵士はフッと一笑し、
「さあな。リディーヌって奴、お前のきょうだいか娘かなんかじゃねえの?でも知ってたらこんなこと聞かねえよなあ」
それはそう。寝耳に水、カルロはなんも知らない。

そうこうしてカルロと学者は、敵国の兵士たちのアジトとやらに連れ込まれることになった。どうも彼らはこの世界に進出してある程度時が経っているらしい。そして2人は暗いボロ部屋に乱暴に放り込まれた。
「なんで小生まで……結局捕まってしまったじゃないですかー!捕まえて何する気なんです、あの奇怪な格好の奴らはッ?!」
学者は涙目だ。
「僕の力を搾取する気だろうね……政府と同じく。君は……あの国の連中のことだ、最悪、君は科学者の玩具になるかもしれない。解剖、人体実験、強制的な繁s」
学者は皆まで言うなとカルロの言葉を慌てて遮る。彼は背筋が凍る心地がして顔がサーっと青くなる。とんでもない連中に捕まったのはよく理解したようだ。
「教会の奴らに捕まって『神罰』喰らうのとどっちがマシなんでしょうか……
学者が言う『神罰』、カルロが一番最初にこの世界での脅威と取ったそれ。全身が赤黒く焼き爛れ、体も内部もズタボロになった姿を民衆に晒されながら死に絶えるのと、徹底的に国家の道具にされて使い潰されるのと、どっちがまだ穏やかな死に方なのだろうか。
カルロが学者の問いに答えようと色々思考を巡らしていくとふと浮かんだのは、いつかの教会の地下で見かけた『神罰弾頭庫』の文字。神罰からの連想ゲーム感覚でつい思い出してしまったが、彼はハッとした。
「そういえばあの執行者達だっけ?おそらく地球からいろんな国の軍が送り込まれて、えらい事になってるって言ってたけども……
「なんか言ってましたね」
「確か女神正教の『神罰』ってさ、国や地域、団体も対象なんだよね」
「ああ……その時は空から『神罰』が放たれ、落ちた罪深き地を、生きとし生けるものが死に逝く呪われた地へと変える……と、教会は言ってます」
……ミサイルでね」
あの時『神罰弾頭庫』と書かれた部屋の奥で見たもの。『神罰弾頭』なるものがずらりと並んだあの光景。色んな不安がカルロを一気に襲った記憶も蘇る。学者は俯いた。
……あなたも見たのですね」
カルロは続ける。
「女神正教はいずれ、あちこちに『神罰』ぶちかまし始めるだろう。そうなったら僕ら地球人どころか、君たちも巻き込まれてどうなるか分からない」

「あなたの推測であって欲しいですが……
学者は重々しく溢す。カルロが言っていることはあくまで憶測だ。だが考え得る最悪の事態とも言える。その先は地球人とこの世界の人々の共倒れだ。
カルロは目を閉じ、この事態をどう責任とって収めようかと思考を巡らし始める。グルグル、回り続けて、纏まらない。──地球人達を全員地球に連れ戻すにしても、扉の力が無ければ自分に何が残っていようか。
「あああ〜……!」
考え事しているうちに、気が付くと夜、学者はすっかり眠りこけ、カルロの側には兵士が用意した食料のキューブがあった。カルロ達の国それと比べるとちょっと色が薄い。彼はお腹が空いている事にも気がつき、思わずそれを口に放り込んだ。──硬いは硬いが自国のよりもずっとマシで、そしてほんのり甘い味がした。不思議と涙が溢れてくる。
「ウチのより美味い……

次の朝、また別の人がこのボロ部屋に放り込まれたのだった。その人物はいつかの尼僧。なんか敵国の兵士たちが押し入った先が、デルテナ教徒達の拠点の一つだったらしい。何となく嫌な顔をするカルロと学者。それぞれ違う理由だ。
「トラブルの予感……
「またデルテナ教の連中……
男どもの苦々しい表情に尼僧は口を尖らせた。
「なんか文句ある?」
それからはしばらく、学者と尼僧の睨み合いは続き、気まずい空気が部屋中を支配し、カルロはいてもいられない心境だったが、出る事も叶わずそのまま時が過ぎ、昼になる。
また敵国の兵士が食料のキューブを3人に向かって放り込む。まるで鳩の餌やり感覚。

「──カルロ殿のとこの食料と比べたら、まだ食べられたものです。こちらの方が食の喜びは残っている感じはしますね」
〜例の食料について チヒロ・マニョリアン

「悪くはないけど、毎食コレは泣きたくなるなぁ」
〜例の食料について ブーリアナ・トゥルファル

それからまた時が経つ。尼僧は カルロがさっきからずっと延々と考え込んでいる事に気がつく。
「あんたはさっきからずっと黙りこくって考え事きてるけど、何か逃げる寸法でも考えてんの?」
尼僧の声かけにハッとし、カルロは彼女の方を向いた。どうも考え事に没頭し過ぎて、周りが全く見えなくなっていたみたいだ。
「逃げたその後のことかな……今、僕の故郷の……地球から略奪を繰り返す勢力達がウジャウジャやってきてるんだ。君たちを襲ってここに放り込んだのもその内の1つだ。リディーヌもどうも一枚噛んでるっぽいけど状況が全然分かんない……でも、このままだと女神正教の奴らは地球人を処刑しようと『神罰』をあちこちに放つかもしれない。それだと、地球人にも君たちこの世界のものもみんな共倒れになってしまう……!」
ただ、尼僧は首を傾げ、「何言ってるんだこいつ」と言いたげに眉間に皺を寄せた。

「なんというか……あんた、わたし達よりずーっと向こう側にいるみたい。分かる?」
尼僧はそう言っては学者の方に目配せする。学者は「分からんでもないですがね」といった感じだ。
「ところでさ、あんたはどっちの味方なの?私たち?わたしをとっ捕まえた奴ら?」
尼僧にちょっと疑いの目を向けられたカルロ。今や地球人=略奪者達のような状況、どう説明しようかちょっとの沈黙の末カルロの口は開く。
「その2択じゃ良くないな。厳密に言うと地球人の……僕の国の人間の味方でありたいんだ。僕らをとっ捕まえたのは、祖国にとっての敵国の連中。地球での戦争でずっと戦果を交えている」
学者と尼僧は顔を見合わせる。
「カルロ殿達が元々避難が目的でこの世界に来た、というのは聞いているのですがね……戦争って一体全体どういうことなのですか?」
学者はカルロに助けられて彼らの拠点に身を寄せていた間、詳しい話は直接聞かされてなかったようだが、そこにいた政府関係者や作業員の会話から「避難のため移住する」というのは薄々知っていたらしい。ただ何故そうまで至ったのかまでは、彼にはあまりピンと来ていない。

──カルロは学者の問いに答える。
……いつ何がきっかけで始まったのかはもう分かんなくなっちゃったけど、地球では相当長い間戦争してたんだ。おかげで環境は汚染しきってさ。更に僕らの国は負けが込んでとうとう兵士でもない人間達でさえ命の危機に晒され始めたんだ。そこで政府は異世界へ移住を考え、僕を創り上げた。異世界とを繋ぐ扉を出す力を持つようにね」
学者と尼僧は口をポカンとしたままだ。特に尼僧は目を見開いている。
「人間達を安全な場所に移住させる、それが僕の使命」
カルロはまだまだ続ける。
「そうして色々あってこの世界にぶち当たって、移住計画は進んだけども……女神正教とかいう剣呑な奴らから人間達を守るために、政府の支援もない中1人行動していたんだ。その結果がこのザマだよ」

それからも、尼僧と学者はカルロの話に質問しつつ3人は長々と話し合う。大体こんなことが話された。
・カルロが尼僧を助けたのをきっかけに、政府に目をつけられ、カルロを幽閉、扉の力の搾取が始まった。
・尼僧達のテントを血の海に変えた兵士は、恐らくカルロに無理矢理出させた扉から来たと思われる。
・ただ、それ以外に拠点で何があったのか、カルロはもちろん学者もよく分かっていない
・同時期に各地で略奪や占領が起きている
・カルロ達の敵国の兵士もいる
・そもそも例の移住計画はカルロの国の極秘計画のはずだった。よもや敵国にカルロの扉を提供するだろうか?
・敵国の兵士はリディーヌの名を挙げた。彼女が何か知っている可能性がある
・リディーヌはデルテナ教においては魔女とみなされている
・これ以上事態が悪化すると、女神正教が『神罰』を執行し始めるだろう。『神罰弾頭』を放ち何もかも滅茶苦茶にするそれは地球人、この世界の人々の共倒れを意味する。
──そして、すっかり夜の帳が下り、辺りは真っ黒。


カルロはボロ部屋の中、宙を仰ぐ。カルロ1人、学者と尼僧合わせても3人じゃ到底どうにもできない事態。滅びの時が近付いてるだろうに嗚呼もどかしい。
一方尼僧が本を開き、真剣な面持ちでカルロの方へ向いた。
「カルロさん、やっぱりカルロさんの国?って魔女……リディーヌに唆されたと思う」
カルロはその視線に気づく。
「僕もそんな気がする……目的はさっぱりだけどさ──その本ってさ何書いてあるの?予言?」
最初は読ませてくれなかったデルテナの書。
「予言……と言うよりはデルテナ様のお言葉かな。デルテナ様が滅びを避けるために何するべきか、私たちを導きなさるのさ。……正直言うと、かなり曖昧な事も書かれてるけど。例えば『中央の主の祖は世界を繋げる力を持つ』とか」
『中央の主の祖』そんな言葉あったな、とカルロはいつかの尼僧の書き置きを思い出した。自身も世界を繋げる力を持つためギョッとした記憶がある。
「『中央の主』ってね、わたしたちデルテナ様を信ずるものの間でも、とてもとーっても重要人物でね……遠い未来の時代、中央のラテブラの地におわす、全ての皇だ。皆を愛し皆から愛され皆を守る……そんな素晴らしい方とデルテナ様は仰られた。祖っていうのはそんなお方のご先祖サマ」
「そう、なんだ」
なんだか凄い話だ。カルロにはピンとこずあんまり解らない様子で生返事。
「そうしてデルテナ様の導きのまま、ずーっと祖を探し回ってたけど……多分話を聞く限り、あんたがその祖よ」
「そんなこと言ったってカルロ殿は分かってないですよ」
そんなピンと来てないカルロと謎の訳のわからない話をする尼僧に呆れ、学者が不満げに話に入り込んだ。
「第一、その中央の主……の祖って何するんです?君らの女神の導きなら分かるでしょ?」
尼僧は肩をすくめた。
「さあ……単にご先祖様がいなかったら、その子孫がいなくなってしまうってだけだと思う……
……ダメじゃん」
カルロはポツリと呟いた。

「それはそうと話は戻すけどさ、こんなんだけどさ、今カルロさんがやりたいのってなんなの?」
語気を少し強める尼僧の言葉。カルロにとってやりたい事、今やるべき事。それは──
「ここを出よう。それから……まずは略奪を止めなきゃ。僕だけだと出来ることはたかが知れてるケド」
……ボロ部屋の向こうから足音が聞こえてくる。兵士たちがこちらへ近づいているようだ。
「どうやら僕らをどこかに連れて行く気だ」
夜空の下3人は外に連れ出される。目の前にはトラック。トラックの荷台に放り込もうってことらしい。このままでは兵士たちにやられたい放題されるだろう。
するとカルロは兵士たちの隙を見て思いっきり蹴りを入れた。突然の蹴り、兵士たちは咄嗟に構える事もできずすっ飛ぶ。あまりの出来事に学者も尼僧もぽかんと呆然する。その横でカルロが運転席に乗ると2人を急かすように窓から乗り上げて叫んだ。
「早く乗って!とにかく遠くへ行こう!」