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も茶
2025-11-09 21:17:48
13067文字
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父水
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21gの変様
水木が過去にタイムリープし、ゲゲ郎の代わりに依代になるメリバをハピエンにした話
父←水からの父→水、夫婦と父水が同軸
※死ネタ
※水木の異形化
※捏造の閻魔大王と童歌のようなものあり
※拙い挿絵あり
1
2
3
4
あの日、ゲゲ郎がゲゲゲの森の家へと水木を連れ帰ればその変様した姿に彼女は泣いて謝り感謝を述べた。家に居る事に関しては勿論快諾し、水木は幽霊族一家の居候となった。
幽霊族という人間ではない者達と暮らすことにはなったが、水木も既に狂骨に近い怪異であり、ご飯を食べたり眠ったりという人間的な生活を送らなくても死ぬことはない。更に言えば"視える"人間でなければ姿が見える事もないのだ。
そうは言っても夫婦は水木に人間の生活をさせようと用意出来る人間の食べ物を出して一緒に食べたり一緒に眠る事をした。ただそこに居てくれればいいという夫婦の要望により水木は最初こそ居た堪れない様子だったが、数週間もすれば慣れ、鬼太郎にもすぐに懐かれ楽しく暮らしていた。
それから数十年後、幼かった鬼太郎は小学生くらいに成長した所で見た目の成長が止まり、妖怪界を知る修行の為に独り立ちをしゲゲゲの森の別の場所へと移り住んだ。夫婦は勿論、水木も家を出る事を悲しんだがすぐに会える距離という事もあり門出を祝った。
「っ
……
」
「御前!!」
その後、三人で穏やかに日々を送っている時だった。子育てという責務を真っ当したからか彼女は倒れ床に伏せってしまった。回復したとは言え十年もの間、血を抜かれ続けた影響は根深く本当の意味で治癒は出来ていなかったのだ。母は強し、という言葉通り、母親という役目を担ったが故に今まで繋ぎ止められていた命は力尽きようとしていた。
そんな彼女をどうにかしたいとゲゲ郎や鬼太郎が
方方
ほうぼう
を駆け回り治療法を捜したが見つける事は出来なかった。治療法が見つからず諦めたくはなかったが日に日に弱る彼女にゲゲ郎と鬼太郎は彼女との時間を大切にしたいとまた四人で過ごす事にした。
「ごめんなさいね
……
」
「何を言う!謝らんでおくれ
……
」
「お母さん
……
」
最期の時が近付いていた。彼女が寝かされた布団の周りにゲゲ郎と鬼太郎と水木が座っている。心配そうにするそっくり顔を並べて自分を覗き込む二人に彼女は微笑ましくて頬を緩めた。
そんな中で水木だけが信じられないものでも見るような顔でその光景を見ていた。頭の中で渦巻く思考がどろどろと胸に落ちて行く。
「水木さん
……
?」
異変に気付いた彼女が水木に声を掛け、二人もそちらを見る。水木は僅かに口を動かしブツブツと呟き始める。
「ちがう、これはちがう、わたしが、ぼくが、おれが、みたいものじゃない。おくさんは、いきてなきゃ、いきてなきゃ、じゃないと、しあわせが、」
チリチリと青い炎が水木の身体から漏れ出る。感情の起伏によってその炎の勢いは変わり、特に負の感情の時の炎は激しく燃え上がる。
未来の記憶は疎か村での出来事も窖での事しか覚えていない水木の心に残るのは夫婦と赤ん坊を救わなければという使命感だけだった。でなければゲゲ郎が幸せになれないと強く思っていた。だからゲゲ郎に再会し家族が無事だったと聞いて安心し喜んだのだ。
その幸せが失われようとしているのが水木には耐えられなかった。
「落ち着くのじゃ水木!火が燃え移ってしまう」
ゲゲ郎に肩を掴まれ声を掛けられた水木はハッとしてゲゲ郎の顔を見る。すると叱られた子供のように顔をくしゃりと歪めると立ち上がり走って部屋を出て行く。手を伸ばし水木!と呼び止めようとしたがそんな事で止まる筈もなく、追いかけようと片膝を立てた所でピタッと動きを止めた。
今ここで追いかけていいものなのか、妻は弱り果て今にも逝ってしまいそうだというのに。もし追い掛けてその間に逝ってしまったら?別れも言えなかった時はどうしたらいい?地獄に会いに行く事が出来たとしても易々と行ける場所でもない。そんな思考が巡った。
「何をしているの?早く追いかけて」
そこに凛とした声が通った。思わず振り返る。弱々しかった彼女が以前のような
精悍
せいかん
な顔つきで真剣な眼差しをゲゲ郎へ向けていた。
「しかし御前が
……
」
「そんな事を言っている場合じゃないわ。水木さんは今不安定なのよ。彼を悲しませないで。行きなさい!!」
「は、はいぃぃ!」
妻の気迫に立てた膝に力を込めて立ち上がりバタバタとゲゲ郎は水木の後を追って行った。それを見送りふう
……
と彼女は息を吐いた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。それより鬼太郎、お願いがあるの」
少し情けない父をいつもの無表情で見送り母へと顔を向け声を掛ける愛息子に彼女は手を伸ばし頭を撫でた。
◇◇◇
「水木!」
家から出た先にある森の中に水木は佇んでいた。未だにチリチリと炎を纏い、木々の隙間から差し込む月明かりに照らされている。
一見すれば幻想的に見えたかもしれないが一歩間違えれば辺りを青い炎の海にしてしまう可能性を秘めていた。
「げげろ
……
なあ、俺がやった事って無駄だったのかなぁ」
こちらに振り返る事もなく水木はゲゲ郎に投げ掛ける。ゲゲ郎は間髪入れずに口を開いた。
「何を言う!お主のお陰で儂らがどれだけ救われたと思っておる!無駄な訳がなかろう!?」
「でも、でもさ、奥さん、死んじゃうよ、ゲゲ郎の幸せ、無くなっちゃう、お前にはあの人が必要なのに」
水木が振り返る。虚ろな海の双眸からは止めどなく涙が静かに溢れ出ていた。その表情にゲゲ郎はたじろぐ。そんな水木を今まで見た事がなかった。
「水木
……
?」
「どうして
……
?どうしてどうしてどうしてッ!僕が命を懸けたのはこんな未来の為じゃないのに!!」
両手で顔を覆い咆哮する。それと同時にぶわり、と炎の勢いが増し、水木の身体を覆い燃え上がる。本人が燃える事はないが水木の足元にある雑草に火が移った。
「いかん!水木、落ち着くのじゃ!」
「わたしは
……
ぼくは
……
おれは
……
こんなのっ、認めないッ!こんな世界」
「それ以上言ってはならぬ!!」
「んむ
……
っ!?」
ゲゲ郎が素早く髪の毛を伸ばし燃える水木を引き寄せ抱き締めるとそのまま唇へ口付けた。見開かれる水木の目は驚愕に彩られる。その瞬間、炎は霧散した。
どうしても怨念を引き受けた水木にとって負の感情は引っ張られ易く、そして怨みや憎しみを生み易い。世界を滅ぼそうとした怨念が混じった水木が口にすればそれは呪詛となり、何かしらの災いが起きる可能性があった。
それを口を塞ぐという行為で防ぐ事が出来た為、ゲゲ郎の髪が少し焦げたくらいで辺りの実害はほぼ無かった。
「はっ
……
」
ゲゲ郎が唇を離す。あまりの衝撃に止まっていた息を再開した水木は正気に戻ると今起きた事を思い出しボンッと顔を赤くした。
「ななななななにしやがるッ!!」
「これ水木、蹴るでない」
抱き締められて腕の自由が効かないので足でゲシゲシとゲゲ郎の腿辺りを蹴る。痛くも痒くも無さそうなゲゲ郎は余裕綽々で受け流す。
「お主が暴走しそうじゃったから止めただけじゃろう」
「〜〜〜〜っ、だからって!お前には奥さんが居るのに
……
」
他に方法があるだろ
……
と自分が悪いのは承知の上なので強く出れず口篭る水木に内心ホッとしたゲゲ郎は水木を地面に降ろし改めて頭ごとすっぽりと腕の中に収め、頭に顔を乗せる。
「お、おい!」
もごっと胸の所で水木が声を発し身じろぐ。ゲゲ郎が擽ったそうにくくっと笑った後、意を決したように口を開いた。
「水木、よく聞くんじゃよ」
凪いだ声に水木の動きが止まる。頭の上に顔がある為見ることは出来ないが少しだけ顔が上向きになる。
「儂はお主が好きじゃ、愛しておる」
「へ
……
?」
「妻と同等に、妻に向ける物とは違う愛情がお主にもある」
「なに、なにいってるの??げげろ、まって」
「ずっと迷っておった。これを告げてお主に拒絶されては儂は立ち直れるか解らんかった。じゃが、もう迷わぬ。お主に巣食う怨念は儂が生涯、愛し続けよう」
「!!?」
「水木、儂にとって妻だけが幸せではない。勿論、倅だけが幸せでもない。水木も居なければ幸せではないのじゃよ。儂は水木とも家族で居たい。ずっと一緒に居たいのじゃ」
水木の後頭部へ手を添え髪を梳くように撫ぜる。優しく少しあやす様に撫でる手に水木は安心しきった顔でゲゲ郎にもたれ掛かった。
「だから、もう憂うのは止めるのじゃ。儂からこれ以上幸せを奪わんでおくれ」
「
……
うん」
こくりと小さく水木が頷く。水木にとってゲゲ郎の幸せが最優先事項な為、そう言われてしまえば素直に頷く他ない。顔を離しいい子じゃのうと水木の額へ口付けた。
「や、やめろよ!僕は子供じゃない!」
「子供と思うてしとる訳ではない。愛しい者だからしとるのじゃ」
「う
……
」
真っ直ぐに反論され水木はぐうの音も出ず口を噤んだ。その様子にゲゲ郎はくすりと笑って水木を腕の中から解放すると帰るかのうと言って水木の手を引いた。
「
……
なぁゲゲ郎、お前が俺の事をす、好き、なのは解ったけど、僕は
……
」
「良い良い。急ぐ答えではない。これからじっくり教えてやるからのう」
手を引かれながら申し訳なさそうに言う水木にゲゲ郎はにこにこと笑い掛けながら答える。教えるとは?という疑問が浮かび口を開こうとした時、前方から声を掛けられた。
「あなた、水木さん」
「奥さん!?」
「御前!動いて大丈夫なのか!?」
声の方を見れば前方から鬼太郎に支えられながら歩いて来る彼女が見えゲゲ郎と水木は驚いて駆け寄った。そんな彼女は2人がやって来ると鬼太郎に断って自身の足で真っ直ぐ立った。
「良かった。なんとかなったのね」
「すみません
……
わたし
……
」
「水木さん、勘違いしないで」
「え?」
「本来ならあの場所で私は死を覚悟していたわ。もうこの人にも我が子にも会えないかもしれないと思っていたの。でも、貴方のお陰で私は生き長らえてこの子も産まれて成長も見る事が出来たのよ。貴方が本当に望んだ世界にならなかったかもしれない。それでも貴方が命を懸けて守ってくれたものを否定しないでください」
「奥さん
……
」
「お母さんの言う通りですよ、水木さん。貴方が居なければ僕は産まれていなかったんです。僕は産まれて来れて水木さんに会えて良かったと思っていますよ。水木さんは違うんですか?」
「そんな事ない!俺だって会えて嬉しかったんだ!」
ブンブンと頭を振って必死の形相でそう答える。水木の答えに鬼太郎は僅かに口角を上げて嬉しそうに微笑んだ。
「あなた」
「なんじゃ?」
「これからはあなたの番よ」
「無論」
「?」
ゲゲ郎が水木の肩に手を回し引き寄せる。夫婦の言葉少なな意思疎通に間に挟まる水木は疑問符を浮かべた。
「さて、みーんなで帰るかのう」
ゲゲ郎の一言により全員が歩き出す。雑談をしながら我が家へと帰り、彼女との最期の時を享受した。
翌日、満足したのか彼女は地獄へと旅立った。身体は家の近くに埋葬し、花を手向けた。
その日からゲゲ郎からのアプローチが始まり、水木は最初こそそういう意味で好きにならないやら奥さんが居るだろなどと断っていたが徐々に絆され過去の自分がなし得なかった幸せへと一歩ずつ近付いて行くのだった。
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