Nagisa_burn
2025-11-03 12:57:11
6896文字
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最果てまで

決戦〜高校卒業後、周囲の人と関わるのが怖くなった黒崎くんがユーハバッハの残滓を見つけて拾って育てる話です。ユハ一、メゾンド×一護がベースです。(未完)



「なあ、これ、このままこんな感じだと思うか?」
文字通り何もない空間からずるりと現れた青年は、きょろきょろと周りを見渡してこちらを見つけると、開口一番にそう言った。それ、というのは青年の腕に抱えられたもののことであり、その正体もひと目見れば察せられる。回答は容易いが、それよりもまず告げるべき言葉があった。
……挨拶も無しにそれか」
「あ、ごめん。ひさしぶり……でもねえか? しばらくぶり? だな藍染」
まともに取り合うだけ無駄だと判断し、目を閉じてから息を吐く。腕の中の生き物を抱え直した青年―――……黒崎一護は、そんな藍染を気にした様子もなく更に距離を詰めてきた。一般の魂魄であれば蒸発して塵も残らない霊圧に晒されながら、平気な顔をしてぐっと目の前に黒々としたものを突きつけてくる。
「これ、ユーハバッハの欠片」
…………見ればわかる」
「最初は手のひらサイズだったんだけどさ、俺の霊圧食わせてたらちょっとずつデカくなってきて。ただこのままずっと、この形のままデカくなったら部屋埋められそうだし、どうすっかなって。ここまで育てて捨てるのもよくねえだろうし……
「霊圧の給餌手段は?」
「え? こう、指とか手ェ出して、吸わせてる」
「好きなだけ?」
「飽きたらどっか行くし」
藍染も、底無しと言われる側の存在だ。けれど一護のそれは常軌を逸している。成長を続ける藍染に対し、一護はそもそもの器が広く深い。溜まったダムからカトラリーで水を掬い続けたところで些事でしかないだろう。本人に規格外の自覚がないのがいただけないが。
「何故私に? 君の周囲には適任が多くいるだろう」
…………ちょっと、色々。それに、あんたは教えてくれるだろ」
誰と比べてのものか一護は言わなかったが、表情と言い淀み方ですぐにわかった。ほいほいこんなところに来て頼るのは心底度し難いが、浦原喜助よりも優先されるというのは悪くない。何より、あの男の悔しがる顔が浮かぶようだった。
……じきに人の形を得るだろう。他でもない君がそう望んで接するならば」
「ホントか?」
「回答を求めて来たのではないのか?」
……ん、信じる。ありがとな藍染、助かった。急に来て悪い」
「構わない。そもそも、気軽に来れることが異常なのだから」
……そうなのか? 斬月がこいつを使って、繋げてくれて……。それなら早く戻ったほうがいいな。じゃあな!」
蠢く残滓を子どものように抱えたまま、一護が手を振って軽く跳ねる。影に沈むようにして消えたあとに残ったのは沈黙だけだ。余程彼のために力を振るったのだろう、霊圧の痕跡すらも残っていない。残滓とはいえ、滅却師の王であり今や世界を支える楔の末端だ。甘やかすのに全力を出したならば、そうもなるかと独りごちる。
さて、嵐は去ったが、どうやらしばらくは退屈しなさそうだ。音のない空間で目を閉じて、この先のことを思う。
案の定、一護は三日後に再びやってきた。あんたの言う通りだった!やっぱりすげえな! と、三歳児サイズになったむすくれた敵の親玉を抱きしめながら。