Nagisa_burn
2025-11-03 12:57:11
6896文字
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最果てまで

決戦〜高校卒業後、周囲の人と関わるのが怖くなった黒崎くんがユーハバッハの残滓を見つけて拾って育てる話です。ユハ一、メゾンド×一護がベースです。(未完)

※思いついた場面しか書いていないため飛び飛びです。



手を差し出してからしばらくして、路地の壁にある、剥がれかけた貼り紙の存在に気づいた。野良猫にエサをやるな! と、きつく怒る文面だ。印刷ではなく、手書きの文字。感嘆符が赤いから、きっとかなり据えかねたのだろう。
視線を前に戻す。一護の指先に食いつくようにしてずるずると地面を這ったそれは、やがて手のひらに収まると動かなくなった。余計なコストを抑え、霊力を吸い上げることに注力している。黒い塊から覗くいくつもの目が、ぎょろりと一護を睨みあげた。ので、もう片方の手で蓋をしてやる。おにぎりを握るような、どこかで見たような体勢。
………………ああ、あの映画か」
黒いし、まあ、似たようなものかと独りごちる。あいにく見せつけに行く姉はいないし、ほかの人間相手でも行こうとも思えない。両手でそれを握ったまま立ち上がり、どうしたものかな、と思いながら歩き出す。
「なあ、流石にこのまま外歩くと不審者になるからさ、……どうにかなんねえ?」
そっと中を覗き込み、問いかける。口はなさそうだ。ただ、大きな目が不満そうに細められた。意思疎通は可能と判断し、少し迷う。一護の思考を汲み取った斬月たちがいっせいに非難した。そうは言っても。
「俺も、さんざん取られたし。仕返しってことで、な?」
なにが起きても、斬月たちがいれば大丈夫だろう。どうにかなると思っているし、そう信じている。
だから一護は、それをおもむろに口に含んだ。ギ、と短く悲鳴を上げた黒い残滓を、なるべく噛まないようにして呑み込む。あくまで一時的な避難場所だ。あとでトイレで吐こうと決めた。うっかりレバーを押して流さないようにしよう、と意思を固め、むかむかする胸のあたりをさすりながら路地裏を出る。
早く身を落ち着かせたかった。誰も一護を知らない場所で、誰からも意識されず、誰と関わることもなく、一般人Aとして過ごしたい。難しいとわかっていても、それでも。
それでも少しでいいから、今だけはひとりになりたかったのだ。