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吾妻
2025-10-07 23:20:57
10260文字
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アークナイツ
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Short Story log08
今回は龙博♀・棘博♀・流博♀・里博♀が入っています
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雨に唄えば
背後でゲートが閉まると、荒々しい雨音が一気に遠退いた。
「ほら、傘を用意しておいて正解だったでしょ?」
得意げな声に振り返ると、テキーラが濡れそぼった大きな傘を畳んでいるところだった。
「今日は降らないほうに賭けていたんだけどな」
「確かに今日は一日曇りの予報だったけど、このあたりの天気は変わりやすいって聞いてたし、湿度もだいぶ高かったからね」
備えが功を奏したからか、テキーラは上機嫌だった。ドクターは有能な部下の手腕に改めて舌を巻く。ドクター自身、天候を読むのはそれなりに得意なほうだが、さすが長らく観光都市の案内役を努めていただけはある。
出掛けは確かに晴れていたのに。途中から土砂降りになるとは思わなかった。
「ドクター大丈夫? 濡れなかった?」
「平気だよ。君こそ、前みたいに体半分濡れてないよね?」
「もちろん。そのために前より大きな傘にしたんだし」
以前も用意周到な部下が傘を差し掛けてくれたことがあったのだが、ドクターを濡らさぬために青年の肩が傘から大きくはみ出た結果、結局テキーラの体半分がずぶ濡れになるという結果に終わった。
その際、ドクターが彼の髪や耳を丁寧に乾かしながら、自分のことも大事にするようにと言い聞かせたためか、今回は以前よりも大きめの傘を用意していたようだ。前回の反省がきちんと活かされている。
「ほら」
テキーラは、パーカーのフードを下ろして体を屈めてみせる。
乾いたままのふわふわの髪と、わずかに水滴が散っている程度の垂れ耳を順繰りに確かめたあと、ドクターはふと、青年の背中をちらりと眺めて。そして。
「このまま私の部屋においで」
と、言った。
「えっ、でも
……
」
恋人からのお誘いだ。嬉しくないはずがない。しかし、今日はまだ仕事が残っている。
公私はしっかり分けたい派のテキーラは、ドクターの意図が掴みきれずに困惑した。
ドクターは、戸惑うテキーラの足元に視線を落とす。
「服や髪は無事みたいだけど、ちゃんと拭かなきゃいけないだろ、〝それ〟」
「え
……
」
ドクターはテキーラの足元を
――
彼の後方で雫を滴らせている大きな尻尾を視線で示す。
ふわふわと立派な毛並みを誇る尻尾は、豪雨に晒されて水を吸い、重そうに垂れ下がっている。
「先日、ちょうど良さげな尻尾のお手入れセットを手に入れたところだし」
「そんなもの、いつの間に
……
」
「最近は、ペッローの尻尾の手入れに関してはだいぶ上達してきたと思うんだ。腕前を披露してあげる」
心なしかうきうきした足取りで、ドクターが歩き出す。
テキーラは、自身の背中を振り返り、しとしとと雫を零している尻尾を見下ろして苦笑してから、主人の背を追って歩き出した。
【おわり】
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