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しらかば
2025-09-19 12:29:28
5932文字
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三題小噺まとめ
最終更新2026.5.6
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三題小噺4
『廊下』『ブーツ』『求める』
コツ、コツと廊下を叩く音が響く。
元々は警察庁のあった場所であるここは、随分と綺麗な見た目をしている。
その場に不釣り合いな、小さな身体。
黒を身に纏うようなワンピースに、同じく黒いブーツ、黒髪を二つに結んだ少女。橘詩依那は人知れず少しの苛立ちを覚えていた。
「
……
この身体になってから、不便で仕方ないわ」
まず、全ての建物は大人が基準で出来ている。
子供だからと、周りの大人は己を見下す。その内情も知らぬまま。
そして、そんな大人が基準の建造物では
……
手が、届かないのだ。
扉はなんとか開いた。と、言うより慣れた。
最初の頃は死霊を使ってやろうとしたがそれは諦めた。
しかしやっとの思いで目的地にたどり着き、その書物を取ろうとして手を伸ばしたが届かない。
幼い子供の姿の自分には、本棚の上の書物など遠き存在。
「
……
どうしよう」
最後の難関。
この組織は何を果たしてきたのか。ここにいた亡き存在の死霊を扱うにあたり、その記録を見ようと思ったのに。
背伸びをする。届かない。
椅子を持ち出す。届かない。
「
……
だからって端末は璃月が扱うし、使えない」
思わず独り言も増える。
誰にも頼らない、そう決めた以上は自力でなんとかしてやる。死霊でも召喚して落とすか?詩依那が悩んでいたその時、背後に立ったのは自らよりひときわ大きな人影。
青いロングコートがひらひらと靡く中、その人間はいとも簡単に手を伸ばし、詩依那の目的の資料を手に取った。
「お前の求めるものはこれか?」
男の低音は響く。その記録は詩依那へと渡され、男は引き続き上段にある書物を一通り取り出し地に重ねた。
「
……
舜」
「別に、俺も見ようと思っただけだよ?」
青い髪を靡かせ、エメラルドグリーンの瞳を向ける男。水無月舜は詩依那の目的をすぐに達成させた。
「読み終えたらその辺に置いておけ。俺も後から見たいからね、これはあくまでも俺の為だ」
そんな事を言いながら、困っていた詩依那を助ける為だと言うことはすぐに分かる。
この男は無慈悲で、冷酷で。
それでも
……
璃月とは違う、その魂の奥底は人思いな優しい人で。
「
……
そう、ありがとう」
礼を言われる筋合いはないよ、そう呟いて立ち去った彼が少し嬉しそうに見えた。
誰も頼らない、誰も信じない。
その想いが揺らいでいるとは、彼女も知らない。
◇◇◇
「泡沫夢幻」より、橘詩依那と水無月舜。
本編を書いていたら書きかけの小噺を思い出したので加筆しました。舜と詩依那、なかなかいいコンビだと思うんですよね。
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