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しらかば
2025-09-19 12:29:28
5932文字
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三題小噺まとめ
最終更新2026.5.6
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三題小噺1
「雲の上」「書類」「揉む」
「
……
やはり慣れない」
望月大和はため息を一つ。
机の上には書類が山積み。すっかりおなじみとなったいつもの光景である。
「いい加減に慣れるしかないが
……
」
そして深いため息をまた一つ。
つい数年前まで警察官として現場に出て動いてきた自分に、こういう事務仕事は向いていない。ましてや、騎士団長として導く側になるなど。
警察官時代に抱いた想いを胸にこの道を選んだ以上、そんなことは承知の上だが今の望月のため息はそんなことが原因ではない。
これは、その頃の己にも予測が出来なかった未来だからだ。
「
……
こういう時、舜ならすぐに慣れるのだろうな。まあ、あいつならここでも現場にも行けるしな
……
俺のような心配はないか」
後輩であった水無月舜は公安に異動したと聞く。民間の治安維持組織
――
騎士団に移った自分にとっては、国の機関のエリートとなった後輩はすっかり雲の上の存在となった訳だ。
気が気でない。
ソワソワとしながら徐に立ち上がり、誰もいない執務室をうろうろと歩く。
「うーむ
……
いやしかし
……
和希は無事だろうか
……
」
ある日、騎士団にその新人隊員が彗星のごとく現れる。実技試験は歴代最高得点、筆記試験も満点に近い優秀なその新人はすぐに任務に着けるほどの立場に昇進する。名を、鷺内和希。
【父さん、俺さ
……
騎士団に入ろうと思うんだ】
その彼
……
もとい、息子が望月にとっては気を揉む要因でしかなかった。
あの和希が、自分の意思で決めた進路。親としてそれを認めないわけにはいかない。
「もし和希に何かあったら俺はどうしたら
……
」
しかし、いざ入隊すれば当然のことながら職場はいつ怪我してもおかしくはない任務ばかりになる。朝の挨拶が最期の別れ、なんて事もあり得る。
ここでは身内であるという関係は伏せよう、和希が入隊する時に二人でそう決めた。それでも、親というものは子を心配するものである。
ましてや、執務室で全ての采配をする立場の己には現場の新人隊員としての彼を見るわけにもいかない。
「いや、和希もそれを覚悟でここに来ているんだ。他の隊員と同じようにすべきだが
……
いやそれでもだな
……
」
やはり落ち着かない。
きっと息子は、今よりずっと上の階級となるだろう。そうしたら、自分と肩を並べる日も来るかもしれない。
そんな息子にふさわしい騎士団長である為に、今の自分がすべきことは何か。この大量の書類を片付けることだろう。
「
……
そうだよな」
望月は椅子に着席し再び書類を確認し始めた。
「
……
いや、でも
……
」
この感情に慣れるのはまだまだ先だろうな。
彼は諦めたように笑った。
◇◇◇
「泡沫夢幻」より、おなじみ騎士団長望月大和。
和希が入団してすぐくらいのイメージ。
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