しらかば
2025-09-19 12:29:28
5932文字
Public
 

三題小噺まとめ

最終更新2026.5.6


三題小噺3
『路地裏』『水』『目をそらす』

 路地裏、そこはきらびやかな街とはこと離れた無法地帯。
 多くの人々はそこから目をそらす。見なかった事にし、関わりすら断つ。
 いわゆる、「捨てられた者」が居場所としてただ漠然と生きているだけの場所。
 来栖莉桜は物心ついた時にはここで一人で生きていた。親の顔など思い出せない。ただ、自分が捨てられた存在であると気づくのは早かった。
 人々がゴミとして捨てたものを漁り、食べ物を拾うと空腹を満たす。時にはこの無法地帯に紛れ込んだ人を襲い、金品を奪い生きるための最小限の買い出しをする事もあった。
 街は華やかで、薄汚れた少年を受け入れはしない。毛嫌いする。それが普通だった。
 その日暮らしの生活をする莉桜には、ただ一つだけ困らない事があった。水である。己が水を扱う能力者で、水だけは意のままに自分を満たした。時には飲水として、時には身体の汚れを落とすものとして、またある時には――外敵を倒すための道具として。
 それを知り、莉桜に近寄る同類もいた。自分の生きるために利用できる存在なら利用した。殆ど口は効かなかった。
 だから、仲間にはならなかったしすぐに近寄る人はいなくなった。利用できないと思えば切り捨てられる、それだけだ。この地獄では誰一人として信じてはいけない。それは当たり前の事実。
 こうしてただ一人、莉桜は孤立した。
 将来など考えたことは一度も無い。
 この生活から抜け出すことを考えたことも無い。
 それが莉桜にとっての普通で、他者は誰も救いはしない。抜け出したところで能力者である以上はこの差別から抜け出す事はできない。
 仮にこの当たり前が壊れるとしたら、よほどの物好きが自分を好いたときのみだろう。
 思えば、人生を諦めていたのかもしれない。この世は地獄で、希望などどこにも存在しないのだから。

……よし、連れて帰ろう」

 莉桜がその地獄から抜け出した日は、突然だった。
 歳の近いその双子の陰陽師は、半ば無理矢理莉桜の手を引くときらびやかな街へと連れ出した。
 
 そして来栖莉桜の人生は、誰もが目を反らせない光の中を進む事となり、そして――破滅の道を歩んでいく。


 ◇◇◇
「泡沫夢幻」より、来栖莉桜。
 水能力者、過去に虐げられ捨てられたところを弓削兄弟に救われたキャラなのでこのお題は莉桜しかいないなと。