しらかば
2025-09-19 12:29:28
5932文字
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三題小噺まとめ

最終更新2026.5.6


三題小噺2
『静かな神社』『書類』『飽く』


 木々のざわめきが、よく聞こえる。
 その静かな神社は神々しく、何かを祀るように不気味なほどに静まり返っている。
……やっぱりここが落ち着くわね」
 高校の制服のままにその賽銭箱へと向かう古びた階段へと躊躇いなく座ると足を伸ばし、少女は鞄を探り始めた。短い黒髪は靡き、風に攫われるように。
「これがバレたら意味がないからね」
 少女が取り出したのはところどころが破れた書類だった。辛うじて何かの術式の記載があるということは読み取れる。
 少女は書類を軽く読むと立ち上がり、目を閉じる。気配を集中させ、印を切るように手を動かす。鳥の群れはそれに驚いたように飛び立った。
 目を開く。
――我にこの地の力を!」
 溢れ出した光は少女に吸い込まれようとし、そして――
――キャッ!」
 少女の身体を弾き飛ばすように木に叩きつけると、散り散りになり消えた。
「うーん、やっぱり出来ないわね……お父様も多分この術式で戦ったのだと思うけど」
 少女は身体の土を叩くとゆっくりと歩き、再び書類を手に取る。
「我が一条に伝わる術式……これが出来たら私はきっと……
 
 あの英雄様みたいになれるのに。

 ふとため息をつき、少女は立ち上がると賽銭も入れずに手を合わせた。それは毎回、学校帰りにここに来た際に欠かさない彼女なりのルーティンにすぎない。
……この一条星奈、必ずや当主となります」
 祈りではなく、誓いの儀式。己を奮い立たせるための決まりごと。
「ふう、今日はこの辺かしら。早く帰らないと煩いからね、お父様が」
 少女の秘密特訓は、彼女が飽くその日まで続く。


◇◇◇
「万古千秋」より、一条星奈。
 まだ練り直し中作品で未公開だけど、メインヒロインの女の子。父親は一条奏多、母親は若草月夜。英雄に憧れる陰陽師ちゃん。