すだ
2025-09-14 09:57:57
10752文字
Public 婿スバカグ
 

私の知らないあなた

交際前。カグヤ恋心自覚前。婿スバルの忘れ物を届けに行ったら、ゆるっとした格好で出てこられてしまい動揺する舞手カグヤのお話。暴走するカグヤさんがいます。どんなに暴走しても、愛の力で受け入れるスバル。友人枠でマウロさん出演。
#スバカグ

「ふぁ……
 大きいあくびをひとつした後、スバルは伸びをした。
 今日は疲れた。とにかく疲れた。店はひっきりなしにお客さんがやって来たし、商品の配達もいつもより多かった。
 ようやく全部さばき切ってクサツ旅館でゆっくりできたのはいいが、気を抜くと湯船の中へ沈みそうになり、そのたび引っ張り上げられた。
 呆れたようにスバルさんもう帰んな、と誰かに言われ帰って来て、今寝ぼけ眼で布団を敷いている。
 さて、寝支度はできた。後は明日の用意を……
「あれ?」
 いつも手元にあるはずの持ち物袋が無い。しまった、クサツ旅館に忘れてきただろうか。
 今から戻るか、明日取りに行くか迷う。そんなに遠くないのだから取りに戻ればいいのだが、何しろ眠い。悩んでいると外から扉が叩かれた。
「スバール! オレだよー!」
 マウロだ。そう言えば先程温泉で一緒になった。もしかして忘れものを届けに来てくれたのだろうか。
「え? マウロさん? 今開けます」
 ぼーっとした頭で自分の格好を見ると、随分とはだけた浴衣姿だった。
 まあいいや、マウロさんだし。
 このとき、深く考えずそのまま戸を開けたことをスバルは後悔することになる。


「うーん、困ったっス……
 夏の里の夕刻。一日が終わりクサツ旅館で汗を流したカグヤは、うんうん唸るクサツの様子を見かね声をかけた。
「クサツさん、どうかしたんですか?」
「ああカグヤちゃんっスか。ちょっと困ったことが起きまして」
 事情を聞くと、どうやらスバルが忘れものをしていったらしい。丁度一番忙しい時間に突入したので、届けたくても難しいのだとか。
 カグヤが届けようかと提案すると、とても感謝された。
「今日のスバールは、疲れてる感じだったからね」
 後ろから声をかけられ振り返ると、浴衣姿のマウロが手を振った。
「チャオ!」
「こんばんは、マウロさん」
「お前、スバルと一緒だったのか?」
 モコロンが聞くと、マウロは頷いた。
「たまたまね」
「スバルが忘れものをするなんて珍しいです。どんな感じでしたか?」
「うーん、何だかぽやーっとした感じだったね。話しかけても反応が薄いというか」
「ぽやーっ、と」
 子供の頃、限界がくると頭をゆらゆらさせていたスバルが思い浮かぶ。
 そんなに疲れているなら明日の朝に届けた方がいいだろうか。ただ、カグヤも暇ではない。それに、スバルがいい顔をしない。忙しいキミの手を煩わせるなんて、と落ち込ませてしまうかもしれない。
「オレが届けて来ようか?」
 だからと言ってマウロに頼むのも面白くない。最近この人は幼馴染と仲がいいのだ。
「いえ、マウロさんの手を煩わせるわけにはいきません。私が今から届けに行きますよ」
「そうかい?」
「助かるっスー、ありがとうございます、カグヤちゃん」
 笑顔で礼を言いながら、クサツが後ろから忘れものを取り出した。
「これっス」
 そう言って見せてくれたのは、スバルの持ち物袋だった。
「ほぼ全部じゃないですか」
「全部忘れてるねえ」
「まあ明日取りに来てもらえばいいんでしょうけど、これだけ忘れて行ったら困るんじゃないか、って心配なんスよ」
「クサーツさんは優しいね」
 マウロに感心され、いやあと照れるクサツ。
「というわけで、よろしくお願いするっス!」