Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
氷紀
2025-07-25 13:33:14
11312文字
Public
とある息子たちの話
Clear cache
とある放蕩息子の葬送
『とある息子たちの話』シリーズの前日譚です
養父の思い出を引きずっているゲタくんが、男の子の幽霊と出会って別れる話。CPとしてはモブゲタ
※モブの下高校3出展作品
1
2
3
4
5
6
こっそり入り込んだその家は、すっかり『廃墟』と呼べそうな有様だった。
窓が割れていて壁が崩れ、動物が入り込んだ跡もある。床には砂や埃が積もって、もうだいぶ元の面影は失せてしまっているけれど
――
それでも、確かにそこには『人の生活』があったのが見て取れる。
玄関からすぐの六畳間に、小さなベッド。その周囲に置かれた、何か知らない機械
――
窓から差し込む月光に、医療用、の三文字が浮かんで見えたから、多分、イツキが使っていたものなのだろう。
それで、あれ、と思った
――
この手の機械は、基本的にレンタルなんじゃなかったか? 前になんだかそんなことを聞いたことがあった気がする。それを返さないまま、ここに野ざらし
……
というか放置されているというのは、ちょっと変だ。
更に奥へ行ってみる。六畳間の隣の部屋は、入り口が半分崩壊していた。大きな獣が力一杯殴りつけたような壊れ方。部屋を覗いてみれば、中はめちゃくちゃに荒れていた。部屋に置かれていた家具の類が、軒並み荒らされてひっくり返り、踏みつけられて粉砕された跡もある。だから部屋全体は見通せないけれど、奥の方に、冷蔵庫らしきものが斜めに傾いでいるのが見えたから、きっとここは元々台所だったのだろう。足の踏み場がないから、中に入るのはやめておく。
更にもう一つ奥の部屋。ここは子供部屋、らしかった。昔どこかで見たような玩具や、子供用の学習机が、砂の色に染まって沈黙している。床には色褪せた黄色いカバンとサッカーボールが転がって
――
窓が破れていて、壁はツタに三分の二くらい覆われていたし、全体が砂とホコリにまみれていたけれど、荒らされた形跡はない。
だからこそ、目を引いたものがある。この部屋の中で砂と埃に覆われていないもの。
学習机の上に置かれた風鈴、二つ。
白に藍色の金魚が描かれたものと、透き通った青に白で花火の柄が描かれたもの。双方に白い短冊がついていて、花火の柄の方は白紙、金魚の柄の方には子供の字で『いっしょに いこう まってる』と書いてあった。
思わず部屋に踏み込んで、風鈴を手に取る。
――
不意に、二つの風鈴が一瞬だけ、淡い光を宿したような気がした。
言葉にもならない、微かな、本当に微かな神格の気配を感じ取る。本当に一瞬で消えてしまったけど、でも確かに、人間でも妖怪でもないものの力だった。
……
ああ、そうか。そういうことか。
イツキは、あの神社の神格に、本当に好かれていたから
――
。
風鈴を手に持ったまま、数秒立ち尽くす。タイチにどう話したらいいだろう。
剥き出しの真実をそのまま突き付けたら、それは時々凶器になる
……
なんて、昔の自分なら考えもしなかったことだ。それが良いことなのか悪いことなのか、よく分からない。
考えながら歩く。七件の家を通りすぎて、またあの廃神社が見えてくる。
……
よし。だいたい、決めた。
もうタイチもイツキもこの世の住人ではないのだから、タイチの『心残り』をどうにかしてあげればいいんだ。その足を、軽くしてあげればいい。そう思い定めたら、僕の足も軽くなった。
1
2
3
4
5
6
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内