ぱら子
2025-06-22 23:54:39
10883文字
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神は降臨する

アビス教団によって人工魔神にされる🐳の話



蛍に連れ去られたタルタリヤはアビスの黒い糸が手足に絡み付いた状態で彼女らアビス教団が根城していると思われる暗く寂れた地下遺跡に囚われていた。
腕の印から伸びていた回路のような線は更に範囲を広げており、鎖骨あたりまできてしまっていた。
「はぁっ………はぁ……
印と線は怪しく光り、タルタリヤは荒く息をしている。
あの連れ去られる時よりの苦しさはないがそれでも自分の中にある何かが暴れ出そうとしているのを感じていた。
ここまでだと危険だ、とどうにか脱出する術を考えていると目の前に蛍と浸礼者がやって来た。
「目が覚めてたのね」
「あぁ最悪の目覚めだよ。相棒の妹がこんな事して……俺に何がしたいのかな?」
口角を上げて余裕げに振る舞うタルタリヤに対し、蛍は眉一つ動かさず冷たい表情でタルタリヤを見つめる。
「私の目的はカーンルイアを復活させる事。それには貴方が必要なの」
「俺が……?」
「そう。神の目と深淵の力を持つ貴方は"アビスの魔神"になるの」
「は?」
彼女は何を言っているのだろうか?
突拍子もない蛍の言葉にタルタリヤの頭にはハテナが浮かぶ。
ナタの炎神が人による代替わりシステムだったのは知っているが、それは七神だから出来ていたであろうことであって今まで存在もしていなかったはずの深淵、アビスの魔神を創り出すことが可能なのか。
「人を魔神にするなんて、そんなことがアビス教団(きみたち)に出来るの?ま、俺は氷神たる女皇様に忠誠を誓ってるし、神になる気なんてこれっぽっちもないよ」
「へぇ?話に乗ってくれたら、今よりもっと強い力を手に入れて天の玉座を踏みつけることが出来るのに」
「ゔっ……
強者と闘い、いずれ神や天の玉座を踏みつけて世界征服してやるのが夢なタルタリヤにとって、そう言われてしまえば蛍の誘いは魅力的に見えてしまう。しかし女皇様を裏切り、アビス教団のよく分からない計画に協力するつもりは更々なかった。
「それでも、俺は君たちには協力できない。強くなるなら、もっと他の方法を探すよ」
真っ直ぐに蛍の目を見てタルタリヤはハッキリと言った。
それに対して蛍はニコリと笑う。
「貴方の答えは分かった。でも……貴方の答えで私の意志が変わることはない」
蛍は結晶のようなものをタルタリヤに見せる。それはとても禍々しい色をしていてアビスの瘴気が漂っていた。嫌な予感が過ぎり、背中に汗が流れる。
「カーンルイアの技術とアビスの秘術を掛け合われて作った"人工的に魔神を創るためのコア"。これを、貴方の中に埋め込むの」
……っ!」
コアを手に近づいてくる蛍にタルタリヤは必死に拘束を解こうと藻掻くが、神の目と邪眼が取られているのと身体に刻まれた印のせいで力が思うように出せない。そうしてる間にも距離は縮まり、ついに蛍とタルタリヤの距離は身体が接触するレベルになった。
蛍はタルタリヤの身体の印を指でなぞる。
「コアに拒否反応を起こさないように、アビスを身体に馴染ませる印をつけたのは英断だったようね」
「君が指示したものだったのか!」
「貴方が強くなるためならアビスの罪人から技術を学ぶことは厭わないと言ったように、私も自分の願いのためなら……手段を選ばない」
そう言った瞬間、蛍によってタルタリヤの胸にコアが押し込められる。
「やめっ……
コアはズブリズブリと吸い込まれていき、やがて完全にタルタリヤの中へと入ってしまった。
ドクンと心臓がはねる音と共に胸が発作でも起きたかのような強い痛みに襲われ、顔が苦痛に歪む。
「ゔっ……あ゙ぁあ゙あ゙ぁぁっ!」
遺跡内に苦悶の声が響いた。
拘束されたまま苦しむタルタリヤの足元にアビスの泥が現れ、そこから黒い霧が立ち上っていく。黒霧はタルタリヤを呑み込んでいくと、やがて一つの繭になりゆっくりと空中へ浮上していった。繭は暫く空中に留まるとやがて中から四方へと触手のようなものを勢いよく飛ばす。触手は壁や床に張り付き、繭の固定する支えとなった。
一部始終を全て見ていた蛍は静かに浮かぶ繭に笑みを浮かべる。
「繭が破れる日が楽しみね」