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ぱら子
2025-06-22 23:54:39
10883文字
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神は降臨する
アビス教団によって人工魔神にされる🐳の話
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様々な国で名を挙げている旅人とファデュイ執行官、そして自称凡人の元(?)岩王帝君が揃えば宝盗団など赤子同然のようなもので遺跡を不当占拠していた彼らを退治する依頼はなんとも呆気なく終わった。
途中同行してもらった千岩軍に宝盗団たちを引渡し、四人も遺跡から出ようと出口に向かっていたのだが、ある異変に気づく。
「な、なぁ
…
出口までの道ってこんなに遠かったか?」
「いや。入った時のことを考えるともう遺跡に外に出ていてもおかしくはないだろう」
パイモンの疑問に鍾離は来た時のことを思い出しながら答えた。四人がいる遺跡は古いものだが構造は複雑でなく、ほぼ一本道レベルの迷いようのないはずだったのだが歩けど歩けど出口に辿り着ける気配がまるで感じられない。
「気付かないうちに遺跡の仕掛け動かしちゃったとかかな?」
空は遺跡の壁をペタペタと触って仕掛けらしいものがないか探してみる隣でタルタリヤもそれに倣って壁を軽くノックする。しかし硬い岩壁の肌触りと音しかせず、仕掛けのようなものがある様子もない。
他に考えられそうな事となると、タルタリヤ達とは別の誰かが遺跡内にいて4人を外に出さない為に何かしてきているという事。
「この遺跡に過去の魔神による残滓などは感じられない。ならば何処かに隠れている宝盗団の残党か、アビスの者たちか
……
その者らをどうにかしなければ俺たちはここからは出られないだろう」
「へぇ
……
なるほど。さっきの奴らはウォーミングアップにしかならないレベルだったから、少しは骨のある奴だといいねぇ」
タルタリヤは楽しそうな声で右肩に手を置き、腕を回す。
遺跡から出る為にこの変な小細工をしている者を探し出してさっさととっちめる事にした一行は出口に向かって進むのではなく、逆方向に向かって進んでいった。どうせ出口方向に進んでも進展は見込めない、ならば敢えて逆に進めば糸口が見えるやもしれない。押してダメなら引いてみろ理論である。
少しして一行はまた遺跡の最奥と思われる先程宝盗団たちを懲らしめた場所へと戻ってきた。出口を求めて歩いていた時は狭い通路が何処までも続いていて途方もない様子だったが逆はあっさりと行くことができた。
だがそこには誰もおらず、相手はまだ隠れ続けている様子である。
「おーい!オイラたちに用があるならさっさと出てこーい!」
周囲に響き渡る大きな声でパイモンが何回も叫び、空は隣で何処から敵が現れてもいいように警戒していた。そんな二人の後ろでタルタリヤも肩を回して準備体制に入る。
「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。楽しみだね」
「公子殿」
「なぁに先生?」
「少し、聞きたい事があるのだが
……
」
鍾離の発言にタルタリヤは思わず「え?今?」と言いそうになった。
何を聞きたいのか分からないが質問するタイミングなんてさっきの通路を歩いている間とか色々あったはずだが、今まさに敵と相対しようとしてる時に言い出すんだとタルタリヤは眉を顰めたが鍾離が凡人を自称するだけの岩神である事を思い出した。
「ここ最近、腕を怪我した事はあったか?」
「腕?う〜ん
……
まぁ確かに、前の任務でアビス教団の連中とやり合った時にちょっと奴らの攻撃がかすったけど、特に異常なしって結果だったよ」
「ふむ、そうか
……
」
神妙な面持ちで腕を組んで何やら深く考え込みだした鍾離にタルタリヤが軽くため息をついた時、タルタリヤたちの前に空間の裂け目が現れる。その裂け目はアビス教団の者たちが使うもので、そこから現れたのは深罪の浸礼者であった。
「オイラたちを閉じ込めてたのはお前だったんだな!」「目的は何?」
空はパイモンの前に出ながら浸礼者に問いかける。鍾離もタルタリヤも話を一旦中断してそれぞれ武器を持って浸礼者に体を向けた。浸礼者は空、パイモン、鍾離と順番に見て最後にタルタリヤを見る。
「
……
姫様の命令に従い、或る者を迎えに来た」
「迎え?」
疑問をよそに浸礼者は胸の前で手を合わせ力を練り始めた。溢れ出すアビスの力に空と鍾離がさらに身構える中、二人のすぐそばで苦悶の声と共にその場に崩れ落ちる者がいた。
「うぐっ
…
!」
「公子殿!?」
胸を抑えて蹲るタルタリヤの1番近くにいた鍾離がさっと駆け寄る。どうしたのかと手を伸ばした時、タルタリヤの腕に目がいった。腕には四芒星の印がハッキリと現れ、怪しい光を放っていた。そして四芒星の印を中心に放射状に回路のような線も伸びていて、そこから感じるアビスの強い気配に鍾離は顔を顰めた。
望舒旅館でタルタリヤの服の袖から印がチラリと見えた時から気になってはいたものの彼が深淵にいた時期があるというのは聞いていたし、あの時印はすぐに消えたこともあって過去の影響で残っているものなのだろうと思っていた。だが先程タルタリヤに聞いた話と今の状況からしてアビス教団が彼に何かしらの細工を施したようであるのは明白である。
「公子殿しっかりしろ!」
「せんっ
……
せ
……
っ!ぐぅっ
…
あ゙ぁ!」
鍾離に応えようとするがタルタリヤは苦悶の声を上げて蹲った。やがてタルタリヤの周りには紫電がバチバチと現れはじめ、雷撃が自分の足元のすぐそばに当たった鍾離は思わず一歩後ろに下がってしまう。
浸礼者はその一瞬の隙を見逃すまいと術を唱えるとタルタリヤの周りに紫の結界を出現させ、囲い込んでしまった。
「タルタリヤ!」
空が結界を割ろうと何度も剣を振るうが強固な結界には傷一つ付けられない。その間にもタルタリヤは結界の中で苦しんでいた。
「クソっ
…
!」
「
……
お前たちが公子殿を狙う理由は何だ?」
鍾離はあくまでも冷静に問うた。小細工をしてまでタルタリヤを捕まえようとするのは余程彼を欲する理由があるはずなのだ。
「ふむ、アビス教団の悲願を達成するための"鍵"である。ただそれだけ」
「"鍵"だと?」
空も鍾離も鍵という言葉に疑問を浮かべる中、浸礼者は結界に向かって手を翻す。すると結界はタルタリヤを中に入れたまま掌ほどの大きさのキューブになった。
キューブは空中に浮いた状態で浸礼者の手へと飛んでいくが、キューブを取られてはダメだと判断した空がかつて稲妻でトーマの神の目を取り返した時のように雷元素の力で素早く動き、浸礼者よりも早くキューブを掴む。はずだった──
「っ!?」
突如目の前に現れた少女が振るってきた剣を空は間一髪で弾いたが、反動で後ろに下げられてしまう。そのせいでキューブを掴むことは出来ず、それは少女の手に収められていた。
浸礼者の隣でキューブを手に持つ金髪で白い服と白い花飾りを頭に付けている少女を見た空は目を大きく見開き、震える口で呟く。
「蛍
……
?」
「
……
」
蛍と呼ばれた少女は感情の見えない目で空たちを見る。
驚きを隠せないようでいる空の隣で鍾離は初めて邂逅するこの少女が前に聞いていた彼の妹であることを理解した。
「貴方が旅人の妹殿か。公子殿をこちらに返して頂きたい」
「岩神モラクス
……
それは出来ない相談ね」
淡々とした様子で言う蛍を鍾離は睨む。彼女の兄である空がいる手前、睨むだけに抑えているがそれが無ければ岩槍を降らせていただろう。
そんな鍾離を他所に蛍は自分の背後に裂け目を出現させる。
「目的は達成した。行きましょう」
「待ってくれ!蛍!」
空は蛍へと駆け出すが蛍の後ろに控えていた浸礼者に見えない壁を展開されてしまい、近づく事が出来なくされた。鍾離は壁に手を置き、術を破ろうとしたが特殊な作りになっているのか破るには時間が掛かってしまい、これでは蛍に逃げられてしまう。ならば退路を塞ぐのが早いと判断した鍾離は蛍たちと裂け目の間に石柱を数本生やして逃げ道を塞いだが、蛍が慌てる事なくパチンッと指を鳴らすと石柱はアビスの力で砕かれてしまった。
「これで止められるとでも思ったの?」
「
……
っ」
「じゃあね、お兄ちゃん。またすぐ会えるよ」
そうして蛍と浸礼者は裂け目をくぐっていき、閉じたのと同時に透明の壁もなくなった。しかしもうそこには蛍たちの姿はなかった。
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