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ぱら子
2025-06-22 23:54:39
10883文字
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神は降臨する
アビス教団によって人工魔神にされる🐳の話
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「──っ!」
バチッと目を開け、タルタリヤはベッドから飛び起きる。窓の外はまだ夜明け前で空が白みはじめようとしている所だった。
見慣れた静かな部屋に少し安堵感を覚え、ふぅと一息をつき、軽く汗を拭ってふとタルタリヤは思った。
とても気味が悪い夢を見た、はずだが上手く思い出せない。暗く重苦しい海の中みたいな所で自分と他に誰かいたような気がしたが誰だったのだろうか。
「はぁ〜
……
ま、所詮夢だし。気にすることないか」
何か引っ掛かるが夢なんて忘れることが多いのだから仕方ないと自分に言い聞かせ、再びベッドに横になり二度寝をすることにした。
その後、タルタリヤはいつも通りの日常を過ごしたが印が見えることはなく、やっぱり何かの見間違いだったと決めつけて印の事は頭の隅の隅に追いやってしまった。
そして印の事を忘れかけた頃、異変は少しずつ少しずつ起き始める。
それは邪眼を使った後、戦闘による気持ちの昂りがなかなか収まらなくなったことだった。
斬れば斬るほどもっと戦いたいもっと斬りたいという欲求が強くなっていき、次第に気付けば意識が飛んでいたなんてことも起こるようになっていた。
「
…………
ま!こ
……
し、ま!公子様!」
「っ!?
……
え、どうしたの
……
?」
「あの
……
もうその辺にしては
…
どうでしょうか?」
とある任務の時、邪眼を使ったのだがいつの間にか意識が飛んでしまっていたらしいタルタリヤは部下の声で我に返るまで既に事切れた炎斧ヒルチャールの身体を何度も双剣で斬りつけていた。
どうやらこの現象は邪眼を使った時にしかこのような事は起こらないようであり、邪眼を使う程の戦闘にならなければ特に問題はなかった。しかし嫌な予感がしたタルタリヤは邪眼を使うのを控えるようになったのだが、その意思に反して無意識的に邪眼を使ってしまうことも増え始めていた。そしてあの一度現れてはすぐ消えていた腕にあったアビスの印が邪眼を使っている間だけ濃く現れ、あの黒い人影の夢も頻繁に見るようになっていた。
夢の内容はやはり自分とよく似た姿の黒い人影に身体を撫でられ耳元で言葉を囁かれ続けるというもの。人影は常に『アビス』だの『深淵』だのを囁き、タルタリヤはぼんやりとした頭で囁かれた言葉を繰り返す。そして目が覚めると夢の内容は綺麗さっぱり忘れてしまう、そんな日々が続いていた。
***
ある日、偶々璃月で再会した旅人の空とパイモンが請けていた依頼を手伝うためにタルタリヤは二人と共に目的地へと向かいながら、道中の望舒旅館で休憩がてら食事をとっていた。
「そういえばタルタリヤさ、最近なんかあった?」
「え?急にどうしたんだい相棒?そんな事聞いてきて
……
」
「うーん、なんかいつもより元気ないような気がしたから」
空の指摘にタルタリヤは少し驚く。自分としてはそんなつもりはないのだが目の前の相棒にはそういう風に感じ取れられてしまったのかと思ったタルタリヤは腕を組んで最近の事を色々と思い返してみる。
「あ〜、そうだね
……
最近ちょっと邪眼の調子が悪いってことくらいかな」
「邪眼?神の目の方じゃなくて?」
空はそう言ってかつてフォンテーヌで神の目の調子が悪いといってタルタリヤから神の目の預かったことを思い出していた。
「そう邪眼の方。特に使い過ぎてる訳じゃないんだけど〜」
「おいおい
……
邪眼って元から危ないもんだろ?大丈夫なのかよ?」
口の端にご飯粒をつけたパイモンが怪訝そうな顔でタルタリヤに目を向け、空もまた同じような顔で彼を見る。二人はこれまでの旅でファデュイの邪眼が危険なものであることは知っており、一応タルタリヤの友人として心配してはいるのである。
「大丈夫大丈夫。邪眼が不具合起こしてないか、詳しい奴に見てもらうことにしたから邪眼は今持ってないんだ。それに今日の相手は宝盗団なんだろ?邪眼を使う程でもないさ」
「
……
まぁ、そういうなら
……
」
イマイチ不安が拭えなさそうではあったが空とパイモンは納得したようで、料理に目を戻して再び食べ始める。タルタリヤもようやく慣れてきた箸を手に取り、近くのエビとポテトの包揚げの一つ口に入れた時だった。
「あれ?あそこにいるのって鍾離じゃないか?お〜い!鍾離〜!」
パイモンの大きな声で手を振る先には旅館の従業員と話す鍾離がいた。鍾離はパイモンの声に気づくと、従業員との話を切り上げてこちらに歩み寄ってきた。
「旅人とパイモンか、久しぶりだな」
「おう!鍾離も久しぶりだな!」
「久しぶり、鍾離先生」
旅人たちに軽く挨拶を済ませた鍾離は空いていた椅子に座ると近くにいた従業員に茶を注文し、届いた茶を優雅に一口呑む。
「公子殿もいるということは二人で手合わせでもしたのか?」
「してないし、しないよ。これから冒険者協会の依頼で宝盗団倒しに行くんだけどタルタリヤはそれに着いてきただけ」
「ここ一週間、何も無くて身体が鈍りそうだったからね!せいぜい骨のある連中であってくれるといいんだけど」
そう言ってタルタリヤがまたエビとポテトの包揚げを一つ食べる中、鍾離は口元に手をやり少し何かを考えると三人へと改めて目を向けた。
「俺も同行していいだろうか」
「いいの?」
「あぁ。特に用事もないからな」
「良かったな旅人!鍾離がいれば百人力だぞ!」
「そうだね」
「ちょっとちょっと、相棒におチビちゃん?俺の時とリアクション違くない?」
鍾離の提案に喜ぶパイモンと空にタルタリヤは苦言を呈したが二人はそんな事お構い無しにまた料理に手をつけ始めた時、鍾離が少し口角を上げて言う。
「あと、久々に恋人と会えてもう少し共にいたいと思ったから
…
だな」
「ぶふっ!?」
「うわ!?何してるんだよお前!」
鍾離の爆弾発言にタルタリヤは飲んでいた水を思い切り噴き出した。
実は鍾離とタルタリヤは付き合っている。元岩神とファデュイ執行官という関係であるが、二人はちゃんと真摯にお互いを想いあっており、空とパイモンは二人から話があってその事は知っていた。
「ちょっ、先生いきなり何言ってんの!」
「ふむ
……
俺は自分の気持ちを素直に言っただけだか、公子殿は嫌だっただろうか」
「そ、そんな
……
ことはないさ
……
俺だって
……
」
「二人とも俺たちがいるの分かってるよね?」
勝手に二人だけの世界に入りそうになっていた鍾離とタルタリヤに空がじとっとした目で指摘した。
タルタリヤは紅い顔で鍾離を睨んだが、涼しい顔で茶を飲む鍾離に呆れて残りの料理に箸を伸ばした。
「
…………
」
腹拵えの食事が進む中、鍾離はタルタリヤの方を見ながら少し険しい表情でぬるくなってしまった茶を飲んでいた。その視線の先には空やパイモンと楽しく談笑するタルタリヤの服の袖から四芒星の黒い印がチラリと見えていた。
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