シフォン
2025-06-14 23:14:10
3326文字
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辰砂の魔

2025秦兄弟誕生日小説。微ホラー。
捏造多めです。


……えええっ!? 兄さん、何して、なんでっ…………!?」

あまりの衝撃に言葉を失う。
何が起きたのか全然理解できない。
開いた口が塞がらず腰を抜かす僕に、兄さんは手に残った破片を振り払いながらこう言った。
 
……さっきからお前の様子がおかしいと思っていたんだ。
 お前は自分のことを『私』とは言わないからな。
 一か八かで割ってみたが、予想通りだったな。
 崇秀、お前、この水晶玉を“見た”んだろ?
 まったく、だからこの部屋に入るなと言ったのに……

ああ疲れたと言わんばかりに溜め息をつく兄。
何がなんだか分からないが、兄さんは全部分かっていた。

…………どういうこと?」

「あれは他人を意のままに操る力があるらしい。
 まだあの亡霊どもが宿りでもしていたんだろう。
 いい加減目を覚ませ、崇秀。
 第一、水銀なんか飲んだところで中毒で死ぬだけだぞ。
 不老不死なんて、なれる訳がない。そうだろ?」

……そうだよね、なれる訳ないよね、バカじゃないの。
 飲んだところで長生きからは遠ざかるだけなのに。
 ところでさ、……なんで知ってたの?」

「何回かこの部屋に入ったことがあるからだ。
 俺たちに悪影響がないか調べるためにな」

「ずるいよ兄さん、僕には散々入るなって言ったのに!
 それだったら僕も連れて行けばよかったじゃないか!」

「一緒に入って何かあったらどうするんだ!?
 俺たち以外誰もここを知らないんだぞ!
 ……助からないまま二人で心中したいのなら話は別だがな」

「──────────ッ!」

冷酷な声音に息が詰まる。
兄さんは僕を危険から遠ざけるために、ありとあらゆる状況を想定して動いていたのだ。

もしこれを、本当に飲んでしまっていたら?
手を伸ばしかけたことを強く後悔する。
朱い毒の魔力は、現代人である僕すらも魅了するらしい。

「行くぞ、崇秀」

もうこの部屋に入ってはいけない。
…………見なかったことにしよう、知らなかったことにしよう。
急いで道具を片付けて、兄さんと僕は部屋を立ち去った。