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はりぼて自家発電所
2025-06-12 23:43:12
39412文字
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カイオエ長編
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カイオエルートに戻さなきゃ!
クロエとカイオエの大学生パロディ
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6
epilogue
悪意から覚めて
「おはよう、オーエン」
目が覚めた瞬間、眩しさに目を細めた。太陽のような笑顔が目の前にある。まだ夢を見ているらしいと二度寝を決め込むと、おいおい、と呆れたような声が鼓膜を震わせた。温度の高い手のひらが、乱暴に頬と頭を撫でてくる。
「んん
……
なに
……
誰
……
」
「昨日のこと、覚えてないか? 酒を飲んだから?」
「飲んでない
……
」
「飲んでたよ」
きのう
……
昨日?
何があったのか、すぐに思い出せなかった。
数週間前。初めてチョコレートを口にした時から、どこか夢のような心地で過ごしていた。夢だと気づいてからは、感情が濁流のように流れて行った。どこからが夢で、どこまでが現実なのか、上手く境界線が引けない。
今は、カインの匂いがする場所で、雑に髪を梳かれている。なんだかスッキリしないのは、昨日風呂に入っていないからだ。思い出したら、シャワーが浴びたくなってきた。
ぱちり。
オーエンはそこで覚醒した。
そこは見知らぬ部屋だった。夢から醒めてもまだいるカインが、もう一度おはよう、と言って、頬にキスをした。
「は?」
「えっ、あ。ごめん、もしかして、忘れてる? 俺達昨日、付き合うことになった
……
んだよな?」
唇が触れた頬を押さえながら、オーエンは頭の中で曖昧な記憶を引っ掻き回した。どれが夢? どれが現実? 分からなくて、不安になる。
「
…………
」
「夢みたいで怖いって言ってたもんな。大丈夫だ、ちゃんとここにいる。なんどでも、伝えてやるよ。好きだよ」
「誰それ」
夢みたいで怖い? そんなこと自分が言うはずが無いと思った。だけど、たしかに夢の中で、何度もカインはここにいると言った。そう言って、力いっぱい抱きしめて、落ち着かせてくれた。それは、あたたかくて、居心地が良くて。
「
……
す、き?」
そんなはずが無い。そんなことあっていいはずが無い。だって、自分と関わった人間は、必ず死ぬ。
血の気が失せてきた。呼吸も上手くできないでいると、カインが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「オーエン、大丈夫だ。こっちを見ろ」
顔を包まれて、光を集めたような意思のある瞳と、無理やり目を合わされる。
「今まで死んでいった奴は、自業自得なだけだ。俺は大丈夫。壊れたりしない。あんたを置いていったりしない」
なんで知ってるんだ。話した気がする。言うべきじゃなかった。だって、カインならそう言うに決まってるから。
「嘘」
「嘘じゃない。現に、俺は不幸なんかじゃない。見ればわかるだろ?」
「
……
そんなの
……
」
「俺はオーエンが好きなんだよ。好きでおまえの傍にいる。自分で選んだ。今までの奴らとは違う」
都合のいい夢に、吐き気がした。
居心地が悪い。気持ちが悪い。
ここから離れないと。
「
……
僕は、きらい、おまえなんか、きらい。だいきらい」
無理やり言葉を吐き出して、カインの体を突っぱねる。力が入らなくて、びくともしない。
「うん、知ってる」
カインはオーエンの手の上に自分の手を重ねた。
「知ってるよ。おまえの嘘も、分かってる」
「なにそれ
……
」
力が抜けてきて、カインの胸に頭をぶつけると、引き寄せるように、頭を撫でられた。その感触は、悪くなかった。
★
カインとオーエンが連れ添って登校してきて、クロエは笑顔を広げた。
昨日の晩にカインから色々報告を受けて、ちょっぴり寂しくなっていたけれど、オーエンの顔を見たらどうでも良くなった。照れたような、気まずいような、迷子のような、複雑な表情。まるで、絵画のようだ。ずっと見ていられる。
「なに。じろじろ見てきたりなんかして
……
」
「あっ、ごめん! オーエンって、綺麗な人だなあって思って」
「なにそれ
……
」
途方に暮れたような態度に、クロエは優しい気持ちになる。幸せになって欲しい。
だって、大切な友達だから。
★
困ったな、とカインは思った。
最近、クロエの付き合いが悪い。
「なに、あいつ」
オーエンは少し不機嫌そうだ。
だけど、カインには理由がなんとなく予想できる。たぶん、カインとオーエンが付き合い始めたばかりだから、気を遣っているのだ。
「つまんないの」
オーエンはクロエのことがちゃんと好きだ。だから先日は嫉妬を膨らませてしまった。恋愛感情なのか友情なのか、本人に区別がついていないからタチが悪い。カインと付き合うというのも、どういうことか分かっていないところがある。けれど、それは仕方の無いことだった。
オーエンには、愛された経験がない。
悲しいことに、それは事実だ。
そして、たぶんクロエも似たような感じなのだ。クロエが居なかったら、未だにオーエンと向き合えていなかった。
クロエが居てくれた方がいい。
けど、クロエがオーエンに少しでも想いを寄せているなら、それは酷いことのような気がする。
「また誘うって言ったくせに」
ぽつり、とオーエンが愚痴を漏らした。
そんな二人に、クロエも大切な人を紹介する準備は出来ていた。
悪夢から救ってくれた、素敵な音楽家のことを。
「ねえ、二人とも。俺の話を聞いてくれる?」
クロエの誘いを拒否する選択肢はなど、あるはずもない。
終
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