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月光の下に降る雨
ホグバック過去話。※原作軸で墓荒らしするまでの経緯。重くて暗い
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ザァザァと止まない雨音を区切るように、土が掘り返される音が響いている。
埋葬されて日が経っていない上にこの雨足。土は柔らかく、ホグバックは無心になってシンドリーの墓を掘り起こしていた。肉体労働は慣れていないにしても、心臓がやけに高鳴っている。身体を一心に突き動かす衝動が、生きている実感となって自然に彼の息を弾ませた。
棺の全体像が見え、泥が纏わりつく蓋を何とかして開けた。棺の中のシンドリーは、真っ白な顔をして手を組み目を閉じていた。彼女の華のような香りは消え、薬品の匂いがする。懐かしいような思い出したくない匂い。
一瞬、ホグバックは彼女へと伸ばした手を止める。しかし考える余地を振り払うように、眠るシンドリーを抱き抱えた。硬くなった身体を手のひら越しに感じると、ホグバックの胸がまた軋み出す。肌の冷たさを感じる取る前に、己の熱くなった体温の方へ意識を向けた。
――
ここまで来たのは何の為か。美しい彼女を復活させる。それが出来る世界と力を教えてもらったのだ。
足に力を入れて、ホグバックは立ち上がる。
するとその時、彼の足元でガサリと何かが揺れ動いた。墓場の傍へ捨てられていたチラシが、雨風でその一面をくしゃくしゃにしている。シンドリーを讃えるチラシだった。
"皆の女神、ビクトリア・シンドリー"
チラシの写真には鮮やかに笑うシンドリーが居た。完璧で、活き活きとした笑顔。ホグバックは思い切り足でそれを踏みつけた。
「俺の」
「俺のシンドリーだ」
腕の中の身体を抱き締める力が強くなる。ホグバックの口角が歪にヒクリと上がった。何故上がったのか、そもそも笑みの形を作ろうとしたのか、当の本人すら分からなかった。ぎこちないそれは、瞬く間に下がって震え出す。ホグバックの頬に、雨とは違う水が流れ出した。幾筋も、幾筋も。
それはシンドリーが死んでから初めて、ホグバックが泣いた瞬間だった。
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