いまだ
本拠点には他の星の子の気配がない。
不自然に思える程の静寂の中で、地面に投影キューブが落ちた音が響き渡る。
「
……お、終わったぜ」
「
……うん」
キューブの記憶映像を見終えた残り火の子らは、恐怖のあまり、揃って腰を抜かしていた。
キューブが再び起動し、浮遊する。
「今度はなんだよ?」
「文字だ。ネネムの手記に書かれてるのと同じやつ。えーっと
……」
ガーベラは、投影された白金色のメッセージを読み上げる。
「『彼らは待っている。王の帰還
―新たな神の到来を』」
アレフの後継、ネモフィラは息を呑む。
「『アタシがアタシで無くなる前に助けて。それが無理なら、彼らの手の届かぬ遠くへ逃げて』、か」
己と親友と、見ず知らずの星の子たちが、現在進行形で大精霊たちの策謀に巻き込まれている。
立ち向かう相手と、この異常事態の深刻さを理解したガーベラは、天を仰がずにいられなかった。
「ネモ、私は今すぐ、キミを守りながら逃げ回るべきなのかもしれない。けど星の子として、このままイジーを、大精霊様たちを放っておく事はできない
……」
「当ったり前だろうが!!!」
ネモフィラの一喝に、ガーベラは面食らう。
「オレは逃げ出さねえぞ。正直に言えば心底怖いし、お前と一緒じゃなきゃ心が折れそうだ。でもな」
恐怖と、それを上回る怒りで肩を震わせながら、ネモフィラは続ける。
「こんな状況を放ったらかして良いわけがねえ。アレフに直接問い質せる機会がありゃ良いけどよ
……余計絶望しちまうに決まってるだろ!」
ネモフィラが流す光の涙を見て、ガーベラは、“独りぼっちのあの子”の姿を思い描く。
原罪での死の後に訪れる虚無の暗黒の只中で、独り膝を抱えているあの様を。
“あの子”と直接話ができた事は一度も無いが、深い悔恨と悲哀を湛え、心の底では優しい抱擁を待ち望んでいるかの子が、アレフ=レーシュの一部であるなら。
「そうだね
……ネモの言う通りだよ」
ああ、『深淵覗き』らしくなく、弱気になり過ぎたな。
心の中でそう自嘲しながら、ガーベラは親友の肩に手を置く。
「“あの子”を更に悲しませるわけにはいかない。今はなるべく、いつも通りに振る舞おう。遺構に文書に『王の記憶』に闇の破片、とにかく色んな手掛かりを集めて、イジーの居場所を、大精霊様たちの真意を突き止めるんだ!」
「おう、やってやろうぜ!」
ガーベラとネモフィラは、拳を突き合わせた。
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