【#深淵覗きの断章】夕闇の裁きと宵闇の策謀

アレフ=レーシュ編、第2作。
闇の破片の影響により、ガーベラとネモフィラの中では鮮明な『王の記憶』が蘇りつつあった。
そして、謎の星の子『イジー』の投影キューブを得た事で、二人の残り火は大精霊たちの陰謀を知る事に……

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※戦闘・流血描写を含みます。

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#sky創作 #sky二次創作

 その日の夜の本拠点ホームは珍しく、暗黒竜のケープを纏った『深淵覗きガーベラ』を除いて、星の子はひとりもいなかった。
 今夜も『白イタチ』の姿で過ごそうか、それとも久し振りに『リトル』で過ごそうかと、着替えの祠で服装コーディネートを決めかねていたところ。
「おーいガーベラ、調査から戻ったぜ。ちと奇妙な事があったから報告させてくれ」
 そう言って、大マンタのケープを纏った『蒼翼のネモフィラ』が妙な品物を携えて駆け寄ってきた。

 それは、年季ものの投影プロジェクションキューブと、汎共通文字で綴られた書き置きであった。
『ペンネムとネネムの友イジーより、深淵覗きガーベラへ』



 ネモフィラの説明によると、移動商店兼情報屋として名高い『陽炎のイルヴァ』を訪ねたところ、これらを渡されたのだという。イルヴァ曰く「店を開ける前に品物を確認していたら紛れ込んでいた」のだそうだ。
「イジーって星の子がお前に宛てて、って事らしいけどよ……お前、そんなヤツと面識ねえよな?」
「一切ないね。というか、あの『ネネムの師匠』の『再失踪』も初耳だよ。詳しく聞かせておくれ」

 旧き星の子『闇の花のネネム』は、蝕む闇の研究に全てを注ぎ込んだ。そして、『蝕む闇を自在に群生させ、手足の一部のように操ったり、闇の生物と意思疎通ができる』、『敵対した星の子に蝕む闇を生やす』等々、不気味で不確かな数多の噂を残して失踪した。
 その師匠であるというペンネムも、長らく『失踪者』として扱われ、ガーベラより後に生まれた子どもたちには、名前も普段の姿の情報も知られていなかった。しかし。

「雨林の花見祭りの頃、急に再び姿を表して、あちこちで調べ物をしてたそうだぜ。で、イルヴァの店には音楽堂がオープンした頃に現れた。その暫く後、闇の噴出が起き始めた頃にまた失踪しちまったらしい」
「ふむ。イジーについての情報は?」
「イルヴァも全然知らねえ子らしい。まあ、書き置きの内容を文字通り受け取るなら、ペンネムたちの関係者って事だろうが……

「(そんな子がどうして、私に宛てて投影キューブを託したのだろう?)」
 そう思いながら、白イタチのガーベラが投影キューブに触れた瞬間。
 かの子は、あの巨大な影を。
 八芒星の仮面を被った黒き巨人を幻視した。

「っ?!」
「今の……ヤツの姿、オレにも見えたぜ。イルヴァから渡された時は見えなかったけどよ」
ため息をつくネモフィラも、ガーベラも、その巨人の正体を知っている。

 空の王国の統治者にして、その滅びに関わる者。
 星の子の使命の根源、或いは星の子の原型であるかもしれず、『残り火』の大元とされる『王子或いは王』アレフ=レーシュ。

 その一部であるアレフの影は、強い願望を抱く『残り火』を夢に引き摺り込み、祝福の如き呪いや、呪いの如き祝福を与えるという。
 ネモフィラは、残留思念への呼びかけや他者の意識との接続ができる異能“交信”を。
 ガーベラは、イタチと外つ国伝承の『人狼』を混ぜたような白い巨獣に変身する“獣の力”を授かった。

 ガーベラは“獣の力”の影響により、新たな王になり得る可能性所謂『王位』から逸脱する事を運命づけられている。闇の噴出により、鮮明な『王の記憶』が少しずつ蘇ってはいるものの、その影響は最小限に留まっていた。
 一方、『アレフの後継』を自覚するネモフィラの心身には、王の記憶の断片が馴染みつつある。本人は口に出さなくとも、聡いガーベラは、かの子が自我の均衡を普段通りに保とうと努めている事を理解している。

「イジーも、もしかしたらペンネムとネネムも『残り火』なんじゃねえか? キューブの中身も碌でもねえ予感しかしねえぞ……ちくしょう、頭痛くなってきた」
 そんなネモフィラの予想は、この後見事に的中した。