かずきち
2025-06-02 00:57:14
9474文字
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昼っぽいのまとめ



トクベツ

「恋いる?」

 上の階からおりてきた郁が一人で共有ルームの机に向かっている駆を見つけて声をかけると、彼は作業を止めて隣の空いたスペースをぽんぽん叩く。

「さっきまで一緒に居たんだけど、なんか新作スイーツが!とか叫んでコンビニに走って行ったよ」
「あー。その姿想像できるなあ」
「そんな感じで。今いないけどすぐ帰ってくるでしょ。待ってなよ」

 今度はここ座りなよ、という意図で再び恋の座っていたであろう場所を叩いて招いてくるのでそこで良いのだろうか、という疑問を持ちつつも郁は大人しくお邪魔させてもらう事にした。

「じゃあ、ちょっとだけ。お邪魔しまーす」
「はーい一名様ごあんなーい!」
「そのスタイルなんだ……

 椅子に腰掛けると先程まで駆が何か書き込んでいた用紙が目に入る。見たところ、恋の方に置きっぱなしにされている紙も同じ物のようだ。

「なに書いてるの?」

 少し覗き込むようにして問えば、その紙をぺろりとめくり見せてくれる。
「プロフィール!グラビの全員分集めて雑誌に載せてもらうんだって」
「へー。うちには来てなかったから、グラビだけのやつかな?」
「プロセラはまた別でやるらしいからそのうち来るんじゃない?」
「なるほど」
……そういえば、郁にいい話があるよ」
「え、ちょっとこわい切り出し方だな……なに?」

 闇取引でもしそうな雰囲気を出して内緒話をするように近付いて来た駆に怯えつつも、だが内容は気になるので神妙に聞き返す。すると彼はひと呼吸置いて、ふふふと更に怪しく笑みを浮かべた。

「このプロフィールのとこに、『好きな人のタイプは?』って欄があるんだけど。俺も恋も悩んじゃったからさ、一旦思考切り替えようと思って恋にもう郁みたいな人って書いちゃえば?って言ったんだよね」
「すごい切り替えさせ方だ」
「いーからいーから。そしたらね。恋がね、『えー!違う違う!郁じゃない!』って」
「う、うん……?」

 いまいち真意を掴めていなさそうな顔をしている郁に、もう少し残っている続きを話す。

「『郁は好きな人!』ってさ。郁みたいな人でも郁じゃないなら好きまでいかないと思うから多分タイプじゃない!という理屈らしいです。トクベツなんだって」

 その時のなんでもなさげに言う恋を思い出しながら郁を見上げて、その表情を見て駆は息を吐く。全くあの相方は。どうしてこういう話を本人にはできないのだろう。胃もたれしそうな言葉を聞きながらそれ本人に言えばいいのに、と心底思ったので二人が付き合う前のやりとりを懐かしみながら告げ口をしたのだが、きっと正解だったのだろう。

「ね。本人に言ってたら郁のこの顔も見られるのにね、恋ってば本当ザンネン」
「あ………ははは。ちゃんと言ってくれる時もあるんだけどなあ」

 熱くなってる自覚があるのかすっかり赤くなってしまった顔を手で覆いながら苦笑するとそうなんだ、と噛み締めるように呟いて口元を緩めていた。良いものが見れた気がする。

「ま、俺からの少し早めの誕生日プレゼントだと思ってよ。こっちもごちそーさま!って感じだけど」
「うぅ。最近涙も駆も、俺たちの話でからかうの楽しくなってるだろ」
「最近じゃなくて最初からじゃない?」
……そうだった」

 お互いに顔を見合わせて笑い合う。はじめの頃はどうなる事かとヒヤヒヤしたりもしていたが、こうして今も良い関係を築けているなら何よりだ。デバガメしがいのある二人に末永く爆発していてくださいと駆は願った。


「ただいま〜!あれ、郁だ」
「おかえりー。ちょっと用事があったんだって」
「ふーん?あ、郁も甘いもの食べてく?新作だよ!」
…………食べちゃおうかなぁ」
「??どうぞ?……で、いいやつ?」
「どうだろ」
「ちょっと、そういうのはこれ終わってからにしてよー」
「????」