Tips:猫箱の中身
……へぇ、珍しい。ここに人が迷い込むなんて。
で、僕に何の用?
……もしかして、さっきのカケラが気になってきた? でも、山田利吉は幸せになって、綺麗なハッピーエンドってやつに落ち着いたじゃない。なら、それで満足できない?
……あぁ、やっぱりそこが気になっちゃうんだ。
そうだよ、君の懸念通り、山田利吉は室町の時代しか知らない。だから平滝夜叉丸が生きていると知っても、SFだとかパラレルワールドだとか、そういう可能性が浮かばない。平滝夜叉丸が生きてるんだから、あの世界は間違いなく夢だった。そう思ってしまう。
けれど、パラレルワールドという概念を知っていれば、或いはカケラというものを本当の意味で理解しているならば、当然思うよね?
――山田利吉が迷い込んだ世界は、本当はまだ続いてるんじゃないのか。
あの世界の平滝夜叉丸は、山田利吉が元いた世界とは別のパラレルワールドから来た別人なだけで、本当に存在するんじゃないかって。
――そうだよ? 君にはその可能性がわかる。
けれど、あの山田利吉にはそんな知識ないもの。だから君が気になっていることは、永遠にわからないまま。
シュレディンガーの猫と同じさ。箱の中身はわからない。猫が生きているのか、死んでいるのか、そもそも存在するのか。
けれど、箱の存在をそもそも知らなければそんな事気にするはずも無いよね。
……だから、あの話はこれでおしまい。文句なしのハッピーエンドってやつさ。
……え、これでもまだ納得できないの?
しょうがないなぁ、じゃあ箱選びゲームをしよう。
――僕が特別にあの物語のその後を選ばせてあげるよ。
ここに怪しげな三つの箱を置いてみよう。
見た目は全く同じ。違うのは色だけ。
赤い箱か、青い箱か、あるいは紫の箱か。
……その中の一つが、君にとってのあの世界の真相って事でどうかな?
――ええ? そんな事言われてもヒントは無しだよ。完全にノーヒント。色だけで選んでよ。
……さあ、どうだろうね? 赤は信号機や血の色だから怖〜い結末かもしれない。でも、青だって冷たい印象を与えるし、安全とは言えないよね。紫はどう? 安心できるように見えて、実はとんでもない罠が仕掛けられてるかもね?
ほらほら、君は迷ってきた。でも、山田利吉が悩んだように、どの箱でも優劣なんてないのかもしれないよ?
……そうだね、箱を開けないのもまたひとつの選択だ。さあ、どうする?
――おっと、言い忘れてたけど一つの箱を選んだその瞬間、他の箱は消えてしまう。だから君が最初に選んだ箱が、君の選んだあの物語の結末って事になる。
……さあ、どうする? どうせなら少しでも幸せな結末が欲しいよね? 或いは君の趣味によっては、不幸な結末の方が嬉しいかもしれないけど。
君が思うように、少しでも好みの結末を選びたいって思うのは当然さ。
――でもダメ。ヒントは無し。山田利吉は未来が見えない中答えがわからない中で苦しみながら真剣に選んだのに、君だけ未来を見てたら不公平じゃないか。君は何の苦しみも背負わないで済むんだから、せめてこのくらいのハンデは、ね?
……さあどうする? 踵を返して選ばないことにする? それとも箱の一つを選んでみる?
……ま、僕はどっちでもいいんだけどね。
【青い箱を選ぶ】
【赤い箱を選ぶ】
【紫の箱を選ぶ】
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