地続きである隣の森へ入ったゲゲ郎は尋常ではない速さで地面を駆けて居た。立ち並ぶ木々を避け、地を蹴り、気配の中心へと向かっていた。
速く、もっと速く、と心の内では急いていた。水木が居なくなれば鬼太郎が悲しむ。そして自身もこれ以上大切な存在を失いたくはなかった。唯一無二の人間の相棒であり友であり家族である。失えば自分がどうなるかなど解らなかった。
地面に敷かれた落ち葉を踏み締め、下駄の歯の跡を残して行く。森の中心までやって来てゲゲ郎は速度を落として立ち止まった。
「誰だ」
目の前に聳え立つ岩に付いた札を外していた男はゲゲ郎の気配に気が付いて振り返ると睨み付けた。ゲゲ郎も男を見据える。
男は水木の身体を使った妖怪だった。走って逃げてそのままの寝巻きの浴衣は肌蹴て帯で辛うじて纏っているだけだった。履物を履かずに行ったものだから足は擦り傷が出来ている。ゲゲ郎は胸の内に
蟠る不愉快に眉を顰め目を細めた。
妖怪の後ろの岩には幾つもの札が貼られてあり、妖怪の周りの地面には既に数枚の札が散らばっている。ゲゲ郎を見ていた妖怪はハッとした顔をした。
「お前、さっきの目玉の妖怪か?」
「如何にも。さぁ、我が友を返してもらうぞ」
「ふんっ誰が返すか!この身体は我の物だ!」
臨戦態勢に入った妖怪は掌を上向きにして前へ伸ばすとゆらりと手招くように下から上へと手を動かす。そうすれば地面から幾つもの落ち葉や枯れ枝が浮き上がり妖怪を囲った。そして草木の鋭い方をゲゲ郎へ向けて素早く飛ばした。
ゲゲ郎は直ぐ様その場から飛び退きそれを避ける。そして髪の毛を伸ばし妖怪を捕まえようとしたが妖怪もまたそれを避けて捕まらぬよう走り出し、また草木を向けてくる。
普通の人間とは思えない動きをする水木の身体は妖怪の影響を受けているのだと理解する。いくら幽霊族の血を浴び無事だったとはいえ水木はただの人間なのだ。このままでは身体が壊れてしまう可能性がある。
「その者は貴様の物ではない!水木!目を覚ますのじゃ!!」
攻防を続けながら身体が水木故に下手な事が出来ないゲゲ郎は水木に訴えかける事にした。未だあの幸せな夢を見ているであろう相棒が目を覚ませば戦況は一変する。きっと彼ならこの状況を許す筈が無い。
「無駄無駄!この人間が目を覚ます訳がない。此奴が見る夢は此奴が望む世界だ」
「惑わされるな水木!お主がいくら望もうともそれはまやかしでしかない!お主の生きる未来は
現実じゃ!!」
余裕振った顔で妖怪はニヤリと笑って見せる。そんな言葉など聞く耳を持たないとゲゲ郎は水木に呼び掛け続けた。その時───。
「なっ
……!?」
ピタッと走り回っていた妖怪の足が止まった。その隙を見計らってゲゲ郎は髪を水木の身体へ巻き付け拘束した。
「この!離せ!!」
「うるせぇなァ」
「ッ!?」
暴れる妖怪の身体がまたピタッと止まる。
発していた口が、声音が、顔付きが、変わる。
確かに妖怪が話して居た時と同じ人物だと言うのに明確に違う人物が喋ったのが解った。自身の意思とは関係なく動く口に妖怪はまさかと思った。
「よくもまぁ好き勝手しやがって。調子に乗ってんじゃねぇぞ」
「水木
……!」
先程目が覚めた時とは違い本物の水木だと解り思わずぱぁっと嬉しそうな顔をするゲゲ郎に水木は苦笑いを浮かべた。
「迷惑かけて悪いな、目玉」
「何を言う!儂こそもっと早く、あの日に対処して居ればお主をこんな目に遭わせる事もなかった!」
「
……今はたらればは無しだ」
ゆるりと首を振って制止すればゲゲ郎は口を噤むしかなかった。水木は一度目を閉じると深く息を吐き、瞼を上げゲゲ郎を真っ直ぐ見据えた。
「いいか、手加減はするな。俺の中に居るコイツをなんとかしてくれ。ずっと五月蝿いんだ」
「其奴を追い出すには一度お主を連れ帰らねば」
「駄目だ。まだ頭がぐらぐらする。すぐにでもなんとかしねぇと次があるか解らねぇ」
「しかし!」
「目玉の」
海の色がゲゲ郎を映して捕らえる。ゲゲ郎はその目から視線を外す事が出来なかった。
水木はその目で訴えた。抗議するという事は今ここで出来る事があると証明していたからだ。ゲゲ郎は嘘や隠し事は出来ない。水木は既に覚悟を決めていた。
「
……手荒な事は出来ぬ」
「良いからやれ。お前を傷付けるくらいなら死んだ方がマシだ」
「滅多な事を言うでない!!」
「だったら、頼むよ」
眉尻を下げて柔らかく微笑む水木にゲゲ郎の喉がきゅっと締まった。泣きそうだった。大切な友を、相棒を、自ら傷付けねばならないなどなんの拷問だと思った。
今、そんな事をしなくても帰って手順を踏めば引き剥がす事は出来る。確かにまた夢に囚われ意識を失うかもしれない。それでもこうやって捕まえた今ならもう逃がす事も戦う事もせずに済むのだ。
「心配せずとももう捕らえたのだから儂を傷付ける事は出来ぬよ。だからそんな事を言うでない」
「
……ごめんな。そんな顔させたい訳じゃないんだ。でも、俺はあの世界に居たくない。あの世界は幸せ過ぎる」
「!!」
辛そうに笑う水木にゲゲ郎は目を見開いた。幸せ過ぎる事を苦に思うなど普通はない。
あの夢は水木が望む世界、理想郷だ。哭倉村での記憶を思い出せない水木にとって岩子が居てゲゲ郎の身体が戻り鬼太郎が家族の元ですくすく育つ事が深層にある願いだった。確かに願っていた。けれどそこに自分が居る事は想定していなかった。
「幸せで死んでしまいそうなんだ。目を覚ました今なら解る。次寝ちまったら俺はどうなるか解らねぇ」
「水木
……」
「今が幸せじゃない訳ではないんだ。今だって幸せなんだ。だからこそ俺にはこれ以上抱えきれない」
だからやってくれ、そう水木は告げる。なんて男だとゲゲ郎は思った。水木は恐れているのだ。その幸せを享受し溺れる事を。
しかし、内に根付く妖怪に対してそれは有効で意識のある今の状態であれば追い出す事も容易だった。
水木の苦しみを長引かせるくらいなら水木が望む方法で対処すべきだろうかとゲゲ郎は自身の気持ちと水木の気持ちを天秤に掛けて水木の気持ちを尊重する事にした。
「
……儂の体内電気で追い出す事は出来るが痛いぞ」
「構わん。俺は兵隊上がりだから痛みの方が強いんだ。埋め合わせはする」
「承知」
水木の肩に手を置き、自身の胸に手を添え電気を貯めて行く。
水木の頭の中にはやめろやめろと声が響くが水木はうるせぇ!と一喝する。そして改めてゲゲ郎を見た。
夢の中と寸分違わない男の姿。この男が本当に目玉なのかと一瞬疑ったが自身を見た時の表情に何故だかそうだと確信した。どうしてその姿なのかを訊きたいが今はそれを訊いている場合ではない事は解っている。更に言えば目玉になる前の姿は包帯塗れの大男しか知らない筈なのにその姿がとてもしっくり来て胸の中がざわめいて何も言えなかった。
その姿を見ることを待ち焦がれていたような、何かが思い出せそうな
……。ズキリと頭に痛みが走って集中が切れた。
「水木?」
心配げにゲゲ郎が水木の顔を覗き込む。水木はふるふると首を横に振り大丈夫だと言った。
「では行くぞ」
「ああ」
バリバリと音を立ててゲゲ郎から水木へと電気が流される。人間に対してこのような事をした事がないゲゲ郎はかなり加減をしていた。水木を殺さぬよう内に隠れる妖怪を狙う。
「ぐっぁ、がぁあ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」
「水木!!」
水木が痛みに叫ぶ。その声は水木のものと妖怪のものが混ざっているように聞こえた。
思わず肩から手を離そうとしてガッと水木がゲゲ郎の手首を掴んでそれを阻んだ。ギリッと水木が奥歯を噛み締め痛みに耐える姿を見てゲゲ郎は意を決した。
「ぐあっ!!」
バリッと一際強く電気を流せば水木の身体から何かが飛び出す。それを見て電流を止めれば水木はふっと気を失いゲゲ郎は拘束していた髪を離して倒れる身体を支えた。
「畜生!畜生!」
うごうごと形を保てないのか黒い塊が恨み辛みを込めて悪態を吐く。ゲゲ郎は水木を姫抱きにするとその塊へと近付いた。ビクッと塊が跳ね、目は見当たらないがゲゲ郎を見上げる仕草をした。
「これで終いじゃ」
「ゃ、やめ
……」
見下しながらグシャリと下駄でそれを踏み潰し最大出力で電気を流せばそれは塵となって消えた。更に振り返り札の貼ってあった岩を蹴り壊し出て来た残骸も木っ端微塵にした。
どうやら抜け出していた方からダメージが行っていたらしい。弱っていたそれはいとも簡単に葬り去る事が出来た。水木を救えた事により半ば怒りに任せてゲゲ郎は妖怪を倒し、気配が完全に消えたのを確認して一息付くとその場に尻もちを付いた。
「全くぅ〜〜〜馬鹿者!」
腕の中で気絶する水木の顔を見てやっと出た文句を吐く。それでも生きている事に安堵して顔が歪み、思わず水木を抱き締めた。
「儂がどれだけ肝を冷やしたと思うとるんじゃ!目が覚めたら覚えておれよ!」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。泣き虫のゲゲ郎は只管に水木の体温と鼓動を感じ、失わずに済んだ事を心から喜んだ。
気が付けば日は傾き初めていた。この身体もいつまで持つか解らない。ゲゲ郎は涙を拭うと今一度水木の顔を見て立ち上がり、祠へ寄って挨拶をすると家路を辿った。祠からの返事は無かった。
◇◇◇
「旦那!兄さん!」
家へ帰るとねずみ少年と鬼太郎を抱いた砂かけ婆が出迎えた。ねずみ少年はあの後そのまま砂かけ婆の所へ行き、事情を話して家へと戻って来ていたのだ。
そして、ねずみ少年から話は聞いていたが半信半疑だった砂かけ婆は帰って来たゲゲ郎の姿を見て俄に信じられない様子で見上げた。
「お主、本当に身体が
……」
「今だけじゃ。それより早く水木を診ておくれ。妖怪を追い出す為に手荒い事をした」
「ああ、すぐにでも」
家へと上がり水木が抜け出した布団へと再び寝かせれば砂かけ婆はねずみ少年に鬼太郎を任せて水木の状態を診る。外傷や鬱血はなく、身体の中を診る為に手を翳し目を閉じた。
一分程経っただろうか、砂かけ婆が目を開けてゲゲ郎へと顔を向けた。
「少し内蔵が傷付いておるな」
「なっ
……だ、大丈夫なのか!?」
「これくらいなら半月もあれば完治するじゃろう。薬草を調合して出して置くから水木殿に飲んで貰うと良い」
砂かけ婆の言葉に前のめりになったゲゲ郎だったがそう言われてホッとすると居住まいを正し頭を下げた。
「感謝する、砂かけ」
「何、お主との仲じゃ。水木殿は恐らくまだ起きぬだろう。今の内に息子を抱いてやれ」
「
……嗚呼、そうじゃな」
水木を一瞥して部屋の隅で様子を見ていたねずみ少年の腕に抱かれた息子へと顔を向ける。喃語を発しながらこちらへと手を差し出しているのをねずみ少年が腕から抜け出さないようにしていた。今なら念願叶って我が子を抱ける。
ゆっくりと立ち上がりよたよたと鬼太郎の元へと歩いて行く。この手に我が子を抱ける、そう思うと少しだけ緊張して足が思うように動かなかった。
「鬼太郎」
「ぁ、うー」
ねずみ少年の前へ来て膝を付く。恐る恐る手を差し出しねずみ少年から鬼太郎を受け取ろうとした、その時────
…
「おわっ!?」
ピカッとゲゲ郎の身体が光り輝きねずみ少年は鬼太郎を引き寄せる。輝く身体が縮小しそして光りが収まるとゲゲ郎の身体は目玉おやじの姿に戻っていた。縮小された身体は空中から畳へとぽてんっと落下し愕然とする。
「じ、時間切れ
……」
「あちゃー
……」
もう少しで我が子が抱けた筈なのにゲゲ郎は一歩及ばず抱く事が出来なかった。なんとも言えない複雑な表情になるねずみ少年と砂かけ婆。愕然としていた目玉おやじは蹲った。
「何故じゃ!もうあと一分でもあったら抱けていたのに!!」
「ざ、残念だったな、旦那
……」
「ほ、ほれ、先は長いしの。もしかしたらまた機会が巡って来るかもしれん。気を落とすでない」
「うー」
流石の鬼太郎も何かを察知したのか三人で目玉おやじを慰めた。二人の前だったので泣く事はしなかったが本当は泣きたいくらいだった。散々泣いた後だった事もあって涙を堪える事が出来たのは不幸中の幸いというものだったかもしれない。
心をなんとか落ち着けた後に目玉おやじは鬼太郎に頬擦りして癒されていた。
◇◇◇
「ん
……あれ
……」
「水木!目が覚めたか!」
夜も更けた頃、水木は目を覚ました。ねずみ少年は夕飯を食べると去り、砂かけ婆も鬼太郎を連れてゲゲゲの森へと帰って行った。赤子が居ては水木もゆっくり休めないだろうと言う事でもう暫く預かってくれる事になったのだ。
目玉おやじはずっと水木の傍を離れなかった。いつ起きても良いように傍で見守り瞼が動いた瞬間、水木へと駆け寄った。
ぼんやりとした様子の水木はうろうろと視線を彷徨わせて傍に居た目玉おやじに視線を合わせた。寝起き特有の掠れた声でめだま
…?と問いかける。目玉おやじは何度も頷いた。
「嗚呼、嗚呼、そうじゃ。水木、よう頑張ったのぅ」
嬉し涙がぽろぽろと溢れる。時間が経ったからなのか水木の前だからなのか目玉おやじはまた泣いた。そんな目玉おやじにふっと呆れたように水木は笑う。
「なに、泣いてんだ、泣き虫め」
もぞもぞと動いて身体を横向きにする。対面して目玉一つの妖怪に指を差し出し溢れる涙を一筋掬った。目玉おやじはそんな水木を恨めしそうに見据える。
「阿呆、お主のせいじゃ
……」
「
……悪い、変なのくっ付けて帰って来たのは覚えてるんだがその後の事はあんま覚えてなくて。なんとなく迷惑掛けたのは解るんだが
……何があったんだ?」
その言葉にまた愕然とした。覚えておらぬのか?と訊くとああと返事が返って来て目玉おやじは落胆した。ならばあの姿も覚えて居ないという事だ。
正直、あの姿を見たなら思い出すかと思っていた。あの状況で思い出したかどうかなんて訊ける筈もなかったが、しかし水木は己を目玉としか呼ばなかった。夢の中でも『親父さん』と呼んでいて『ゲゲ郎』とは呼んではいなかった。それ程までに狂骨から受けたダメージは重いのか。それでも自身と妻の容姿を夢に反映出来ていたのだから完全に蓋がされている訳ではない。夢で見た殆どの事柄は願望から生まれたものでしかないがそれでも記憶が媒体になっているのは確かだった。だから目が覚めたら訊いてみようと思っていたのに覚えて居ないなんて酷い話だ。
目玉おやじは息を吐いて事のあらましを語った。妖怪に憑かれた水木が家を出て行った事、水木が関わった神に助けて貰った事、妖怪を追い出す為に傷付けた事、水木は驚いた様子で目を見開いて瞬きながらその話を聞いていた。
「大体お主と来たらすぐ犠牲になろうとする!もっと自分を大事にせい!そんなんだからその辺に居る妖怪に付け込まれるんじゃ!」
「す、すまん
……」
あらましが終わればお説教が始まってしまい流石の水木も萎縮して申し訳なさそうにしていた。話を聞く限り大層心配を掛けたようで目玉おやじの不満に火が点きあれやこれやと文句が出てくる。今までやんわりと優しく言われていた事を痛感して水木はただただお説教を聞きながら謝った。
「今回はなんとかなったがそう幸運が続く訳でもない。頼むから長生きしておくれ、水木」
「努力は、する
……」
お説教が終わり懇願する目玉おやじに少し困った顔をしながらも水木は頷いて見せた。
今の寿命なんて六十五年程で自分は既に折り返しに来ている。煙草だってやっているしそこまで生きられるかは解らない。長寿である幽霊族にしちゃあ短い期間なのではないかと思う。だから長く生きるという願いを聞き入れる事は出来なかった。
それでもこの男が悲しむ姿を見たくないと水木は思った。よく泣く男だが、その涙が全て嬉し涙であれば良いと、思う。
「本当かのぅ」
「なっ
……俺だって別に早死にしたい訳じゃない!」
今は鬼太郎の成長を心から見たいと思っているのだから出来るだけ長生きはしたいと思っている。それを阻んで来るのが悪質な妖怪なのだから困る。
疑いの目で見てくる目玉おやじに不服そうに視線を返した。
「妖怪避けみたいなのがあれば良いんだけどな
……」
「妖怪避け、か」
ふむ、と考える仕草をする目玉おやじは何か閃いたようで水木の顔を見た。
「水木よ、暫し留守にする。お主は仕事に行かず安静にししっかり療養するのじゃぞ。砂かけに貰った薬も忘れずに飲むのじゃ」
「何処に行くんだよ?」
「ちょいとな。何、心配は要らぬ。知り合いの所に行って来るだけじゃ。お主も静かな方がゆっくり休めよう」
そう言うや否やとてとてと背中を向けて走って行く目玉おやじに思わず引き止めるように手が上がったがハッとして水木はその手を下ろした。
「気を付けて行って来いよ!」
「ああ、行ってくる」
縁側まで出た目玉おやじは水木の声に振り返り手を振ると烏を呼んで乗って行ってしまった。
静かになった室内にどこか寂しく思いながらも身体の疲れは感じていて水木は深く息を吐くと再び目を閉じた。
その日の夢には竹林の奥にあったあの祠が出て来てそして穏やかな表情を浮かべた老人が水木へと微笑み掛けた。
『ありがとう、人の子よ。痛い目に遭わせて悪かったな。さようなら』
そう短く言葉を掛けると風と共にさらさらとその姿は消え去った。水木はその光景をただ見ている事しか出来ず目を覚ました時には黙祷した。その老人が目玉おやじが言っていた神様だったのだろうと気付いたからだ。
全ては泡沫となり、理想郷は無くなった。夢の内容さえも覚えていない水木は変わらず今日からまた日常を生きて行く。まずは療養から。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.