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いまさら
2025-03-31 14:59:52
37991文字
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永い一瞬
世界観の独自解釈・多大な捏造
星の神が星の世界を作ってファさんが星の民になるまでのファーベリ(と言い張る)
ベリアルの髪が長い
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終章、あるいは序章
「遅い」
目が覚めた瞬間にそう言われたので、オレはそれが自分の名前だと思い込んだ。
「おそい」
確認のつもりで復唱すると、青い瞳の男は眉間に皺を寄せて舌打ちをした。
「お前の創造主のルシファーだ。自分の名前を言ってみろ」
「はい。私の名はおそい」
「待て。いつからそんな名前になった?」
「さっきそう呼ばれたので」
ルシファーと名乗った男は、今度は大きなため息をついてこちらを睨んだ。なんだか忙しそうな人だ、と愉快に思う。
「お前の名はベリアルだ。役割は理解しているな?」
「なんだ、じゃあ遅いっていうのは何が遅かったの? あ、ゴメン。動作確認の途中だった。えーと、役割は狡知、だっけ」
「お前の起動時間が遅れていると言ったんだ。不具合があるわけじゃないだろう」
「時間通りだと思ったんだが。キミがせっかちなんじゃない?」
こういうわけで、ファーさんのオレへの第一印象は最悪だったかもしれない。
ベリアル。それがオレの名前だ。オレはこれがずっと欲しかったような気がする。名前だけではなく、この体も役割も居場所も何もかも。ずっと探していたものにようやく巡り合えたような喜びで満たされている。
ファーさん、と彼の名を呼ぶときにも良い気分になる。訳もなく名前を呼ぶと嫌な顔をされるので、用がないときにその名を口にしたくなったら胸の内で呼びかけるようにしている。
ファーさんはファーさんで、オレを結構いいように使う。ベリアル、と名前を呼べば思い通りになるとでも思ってるのかもしれない。でも実際、オレは彼に名前を呼ばれるとなんでも叶えてしまいたい気持ちになるのだ。
その日もそれで安請け合いしてしまった。ベリアル、倉庫の整理をしておけ。はい、ルシファー所長。その呼び方をやめろ。分かったよ、ファーさん。
それで、倉庫の整理をしていたわけだ。正直面倒な仕事だと思ったがこれが意外と面白かった。なんせファーさんが残している資料だ。どれを読んでも面白い。整理そっちのけで論文やらただのメモ書きやら、とにかく文字さえあれば何でも読み漁った。
その中に大きくて分厚い冊子があって、何かの図面かと思って開いてみて驚いた。大きなそれは恐らくスケッチブックだ。チョークか木炭かでのスケッチが多いが、中には色のついているページがある。これは、ファーさんの趣味だろうか。それとも研究のアイデア? まあ研究が趣味で人生で、みたいなところあるけど。パラパラとめくって見ていくが、多分どれもかなり上手い。
そんな冊子がいくつかあって目を通している最中、オレはあるページで手を止めた。
そこに描かれているのはオレだった。設計図にしてはラフで、妙に親しみのある絵だった。日付を見るとかなり昔のものだ。具体的には、オレが生まれる数年前。
え、オレってどこかにモデルがいるのか? でも、あのファーさんが何かを模倣するとは思えない。
「ねえ、ファーさん。あの倉庫にあったオレの絵って、オレ?」
「はあ?」
ファーさんは見られて困るものはオレの手が届くような場所に置いていないだろう、多分。ということで本人に直接聞くことにした。とはいえ、確かに今のは聞き方が悪かった。説明し直すと、ファーさんは事も無げに頷いた。
「ああ、あれか。あれはお前だ」
「だが、オレが生まれるより前の日付だった」
「俺がお前を作るのに何年かけたか聞くか?」
それから、ファーさんの昔話が始まった。オレとルシフェルの構想はオレたちが作られるずっと前からあったらしいが、なかなか製作の機運に恵まれなかったらしい。開発費を調達するために別の開発をして、それで手一杯の時期がこの天才科学者にもあったのだとか。
構想だけが具体的になっていく中で描いたのがあれらのスケッチだという。
「特にお前は
……
よく夢に出てきた。はやくオレを作れと急かされたこともある」
「ええ、図々しい」
「全くだ」
あの絵にそんな経緯があったのか。当然ながらオレはファーさんの夢に出た記憶などない。今でもオレの夢を見たりするのだろうか。
「懐かしいな。はやく作れと言うので作ったら、今度は起動時間に遅れたやつがいた。信じられるか? ベリアル」
「ひどい天司がいたものだね」
「ところで、倉庫の整理は終わってるのか?」
「ああ、えーっと、持ち場に戻るよ」
ファーさんがどういう思いでオレをつくったのかは未だによく分からない。この先、オレはきっと長い時間を生きることになる。その事実に苦しむ未来もないとは言えないだろう。ただ、今は明日も彼に名前を呼ばれることを祈りながら過ごせたらいい。
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