杷琶
2025-03-11 13:06:55
24017文字
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更新中 グラブル/グラ腐ルCP小説まとめ

ページごとにカプを分けてまとめています。BLも男女カプもごった煮にする予定なので、うっかり地雷カプのページを開かないようご注意ください。なんでも許せる人向け 


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ラガフィオ
追加日:2025/05/01

あと少し。あと5センチほど背が高ければ、この本が取れたはず。
 フィオリトはグランサイファーの廊下で、共用の本棚の前でつま先立ちしていた。目当ての本は上の方の棚にあって、棚自体には手が掛かるのだが、つまめるけれども、引き出せるほどには強く掴めない、地味な遠さだ。
「あの青い背のやつ?」後ろから聞き慣れたガラガラ声が聞こえた。ラガッツォだ。
「そうだけど」
「貸してみ」
 場所を交代し、ラガッツォが代わりに背伸びする。
 ギリギリ届かなかった。
 しばしの沈黙が流れ、ラガッツォはそそくさと踏み台を探しにに行った。
「んっふふ……あはは……ムリお腹痛い……あっはっはっは」
 フィオリトは一連の流れがツボに入ってしまった。だってあんまり格好悪くて、可愛いんだもの。
「そこまで笑うこたねェだろがよ……
 笑われている当人はどんどん不貞腐れているが、彼女の笑いは一向に止む気配がなかった。
「だってさ……ふふっ、ダッサ……
「うるせェ思ったより上にあったんだよ。はい終わり終わり」そう言いながら本を取って押し付けてくる。親切な男である。
「第一アンタ、アタシと大して背変わらないじゃん」
「いやお前の方が若干小せえだろ」
「え〜そんなことなくない?」
 フィオリトはやっと笑いが収まったので一呼吸して真っ直ぐ立ち直し、ラガッツォに向き直る。ほんのり頬が赤くなっているので恥ずかしかったらしい。
 大体目の高さが同じである。
「やっぱ同じくらいだって」
「いや俺の方がある」
「同じだってば、ほら鏡行くよ」
 渋るラガッツォを廊下の端の鏡の前まで強引に背を押して連れて行く。鏡から少し引いた位置に立たせ、横に並ぶ。
 なるほど。わからない。ほぼ同じだ。
 パッと見、フィオリトの方が目の高さや顎の位置が上にある気もしなくもない。しかし何せラガッツォの髪が逆立っているので、頭頂部の位置が不明瞭だ。
 ラガッツォも諦めたのか、おもむろに髪を抑えた。それでもいまいちわかりづらい。靴底の厚みもあるだろうし。数年前にフィオリトの方が背が高かった時期があったのだが、今は大差ない。
 肩幅結構違う。アタシの方が顔小さいや。そんな小さな発見をするたび、フィオリトの鼓動が早くなる。彼女はその理由を悟った上で意識しないようにした。あと相当近づいて立ってしまった。肩触れそう。
 二人無言で鏡を睨みながら数十秒が経過した。フィオリトは正直気まずくなってきた。もしかしなくても失礼な振る舞いだった。ラガッツォはヒューマン男性にしては小柄なので、気にしているなら申し訳ない。
幸か不幸か、誰も通りかからなかった。
 先に沈黙を破ったのはラガッツォだった。
「言った方が早くねェか」
「ごめんもういい」
 フィオリトは逃げることにした。
……は?」
「飽きた。これ読んでくる。じゃ」
 早口で言ってそそくさと退散する。ここで白黒つけて、もしラガッツォの方が背が低かったら、先程爆笑した手前、フォローしても行動が矛盾してしまう。
「おいこらテメェが始めたんだろうが」
「はっきりさせない方がいいこともあるっしょ」
「それじゃ俺が小さいみたいじゃねェか」背中に抗議の声が飛んでくる。ごめんね、今日の無礼は後日埋め合わせするから。そう反省しながら、廊下を小走りで走り去って、
 そうだ、まだ言っていなかった。
「本! 取ってくれて、ありがと」
 走りながら思い切り振り返って、力一杯伝える。
 およそ十年、つんけん接してきた相手なのだから、そう急には変われない。
 あと少し。少しだけ、優しくなれたら良いのに。