悠久なる想いは甘く微笑む

MHRウ教×ハ♀。夫婦/相思相愛。
2025年のバレンタインネタ。

仕事を終えて軽やかに帰路につくウを迎える、甘い香り。



「ただいまニャー!」
「ワウ!アウー!」

豪快に、すぱん、と玄関引戸が横に滑り開き、その音にウツシと娘の二人は大きく体を縦に跳ねさせ、反射的に身を離す。

反射的に玄関の方に顔を向け、真っ先に娘が林檎よりも赤く熟れた顔で、大仰おおぎょうな笑顔を作った。

「お、おか、おかえりなさーい! ウツシさん、もう帰って来てるよ!」
「や、やあ! さっき帰ったばかりだよぉ! ただいま! あっ、ちょっと違うか! みんなおかえりー! 」

玄関から続々とやって来るオトモたちにぎこちなく手を振った夫婦は、顔が赤く熟れたまま、やはりぎこちなく調理台に並び立った。

調理台の前で娘が「よ、よーし!あと少し頑張って作るぞー!」と両手て金属ボウルを抱え、ウツシが調理台の上にある食器類が並んだ棚の前で、何を掴むでもなく不自然に両手を泳がせながら「た、足りないものは無いかい!? 愛弟子ぃ!」と大袈裟に声を上げ始める。

ぞろぞろと土間に入り、玄関引戸を静かに閉めたウツシと娘のオトモアイルーとガルクたちは、二人の周りに移動しながら二人を見上げる。

アイルーもガルクも、不思議そうに見開いたどんぐりまなこをぱち、と大きくまばたかせた後、一斉に小首を傾げた。
率先して二人を見上げながら疑問を言語化したのは、ウツシのオトモアイルーのデンコウ。

「二人とも? なぁーんか、変ニャ? 大丈夫ニャア? 顔、ちょびっと赤くないかニャ?」
「だ、大丈夫! だよっ! ねえ、愛弟子っ!?」
「は、は、はい! 大丈夫ですともっ!」

音程がばらばらの頓狂声とんきょうごえを上げながら、明らかに耳まで赤いウツシが娘を見やり「ねっ!?」と念を押すように微笑む。

夫に応えるように、彼女は「はいっ!」と大きく何度も、何処ぞの首振り人形のようにこくこくと頷いた。

金属ボウルを両手で抱えたままの娘は、デンコウたちオトモアイルーとガルクたちの方に改めて向き直りながら「それより!」と場の空気を転換する。

オトモたちが身を案じてくれている様子なのは、ウツシも娘もとても、骨身に染みるほどとてもありがたいのだが、これ以上質問で深入りされても、愛し合う夫婦の甘い時間のことに関して説明できる気などしなかった。

「み、みんなは、お買い物できたの!? 欲しいものはちゃんと買えたっ!?」

まだ微かに上擦うわずった声で紡がれた娘の問いに、オトモたちはアイルーガルク問わずそれぞれ顔を見合わせ、にぃっ、と大きく口角を上げると「ばっちりニャ!」と声を揃えた。
続くようにオトモガルクたちが「ワウ!」と一鳴ひとなきして応答する。

一体何を買ったのかと、金属ボウルを抱えたままの娘と、手持ち無沙汰のウツシが顔を見合わせる。
お互いの顔がまだまだ赤く沸騰したままなことが何となく可笑おかしくて、二人の心はじん わりとたちまち温まった。

すぐに、ふるりと髭を揺らしながら、ウツシのオトモアイルー、デンコウがオトモガルクのライゴウの元へ駆け寄って行く。
娘のオトモアイルーも、娘のオトモガルクの方に向かいながら「にゃふふ」と楽しそうに笑った。

ライゴウと娘のオトモガルクの背中には、先ほどウツシが帰宅した時に彼が抱えて来た紙袋よりは、やや小ぶりな白い紙袋が乗っている。
だが、人にとっては小ぶりなものでもオトモたちにとってはなかなか大きなもの。

ウツシのオトモアイルーと娘のオトモアイルーは白い紙袋を抱えて二人の前に歩み寄り、オトモガルクがその隣に続いた。

@acadine